2020年 京都牝馬S・ダイヤモンドS

●京都牝馬ステークス

1回京都開催最終週の芝1600mから、2回京都開催最終週の芝1400m戦に生まれ変わって今年で4年目。エリザベス女王杯や秋華賞組は1月の愛知杯へ、高松宮記念やヴィクトリアマイルを目指す、スプリント~マイル路線馬は京都牝馬Sへという形で定着しました。

このレースが行われる京都外回りの芝1400mの舞台は、スタートしてから約200m地点で京都コース最大の名所、小高い丘を登り、後半が下り坂になるため、前半ペースがそこまで上がらないのがポイント。京都芝1200mほどではないにせよ、高速馬場であればスローペースが発生しやすいです。

しかし、京都牝馬Sは連速京都開催の最終週ということや、雨に祟られることも多く、案外と差しが決まっています。牝馬は瞬発力を生かす競馬で下級条件を勝ち上がってきた馬が多く、上級条件ほど持久力のある逃げ、先行馬の比率が少なというのもあるでしょう

今回も何が何でも逃げたい馬が不在。ビーチサンバは中距離の逃げ馬なので、芝1400mのここでは、逃げられないでしょう。無理に出して行く必要性もないので、同馬は出たなりで、テンの速いメイショウショウブが逃げる形が濃厚。ディアンドルやアマルフィコーストなども先行するものの、逃げたくはないタイプだけに、メイショウショウブが平均~ややスローペースで逃げる可能性が高いと見ています。

しかし、前記した前に行く馬たちは、強くもないし、タフな馬場の京都を考えると、前から押し切るのは難しいと見ています。今年もやっぱり差し競馬になるのではないでしょうか。その前提で予想を組み立てたいです。

●ダイヤモンドステークス

長距離の重賞路線は、ステイヤーズS→(万葉S)→ダイヤモンドS→阪神大賞典→天皇賞(春)という流れ。しかし、昨年の天皇賞(春)や阪神大賞典の出走馬は、リッジマンのみ。一昨年のステイヤーズSの覇者ではありますが、その後が不振。同馬は一昨年のステイヤーズSのパフォーマンスで走れれば、ここも上位争いに加われますが、実質、新興勢力同士の戦いとなりました。

このことが今年のこのレースを難しくさせていますが、基本的に距離が長くなるほど、フロックが利かないのも事実。長距離の場合、一速から二速、二速から三速と徐々にギアをあげていく必要があり、一速から急に五速、六速まであげるような馬は、通用しないからです。前半で低速で走り過ぎると、3コーナーでは絶望的な位置になります。

一昨年にトップハンデ58.5kgのフェイムゲームが優勝したように、過去のこのレースでトップハンデ馬が活躍しているのも、歴代の優勝馬が名だたるステイヤーばかりなのも、そのせいでしょう。今回が軽ハンデだったとしても、ギアチェンジが求められないレースである以上、そこまで大きな優位性がないのです。(斤量はスピードのアップダウンに影響する)

つまり、ダイヤモンドSは、実力どおりに決着することが多いということ。昨年の優勝馬ユーキャンスマイルには菊花賞で3着の実績があったように、当然、芝3000m以上でのグレード実績、実績、もしくはそれに準ずる指数があれば通用します。

しかし、このレースで穴を開けているのは、2012年の優勝馬ケイアイドウソジン(12番人気)のように、「芝3000以上が未経験だっただけで、実はステイヤーだった」という馬ばかりです。このような隠れステイヤーがいるかいないかを吟味するのが、このレースの醍醐味、重要ポイントでもあるでしょう。それらを踏まえて、予想を組み立てたいです。

2020年 共同通信杯・京都記念

●共同通信杯

クイーンCの傾向で、クイーンCは桜花賞への前哨戦の意味合いも持つレースであることをお伝えしました。共同通信杯も同じで、弥生賞やスプリングSと肩を並べる皐月賞の前哨戦の意味合いを持ちます。弥生賞やスプリングSと異なるのは、皐月賞への優先出走権があるかないかです。

実際に過去10年の優勝馬、ゴールドシップ(2012年)、イスラボニータ(2014年)、リアルスティール(2015年)、ディーマジェスティ(2016年)、スワーヴリチャード(2017年)、ダノンキングリー(2019年)があとの皐月賞やダービーで連対しています。また、このレースの2着馬ディープブリランテ(2012年)は、その後ダービー馬となり、ドゥラメンテ(2015年)は、皐月賞、ダービーを制して2冠馬となりました。

近年は弥生賞やスプリングSを使わずに、皐月賞へ直行する馬も多くなっているだけに、弥生賞やスプリングS以上にクラシックに繋がるレースと言っても良いかもしれません。つまり、レベルが高く、前走G1以外で3着以下に敗れたような馬ではまず、通用しません。そうなると本来は前走で新馬戦や未勝利戦を使われていた馬は通用しないはすですが、このレースに限っては前走新馬組でも通用しているのがポイント。

なぜかと言うと、大手牧場のノーザンFは、このレースに期待馬を出走させてくる傾向があり、前記したリアルスティールのように、新馬戦をやたらと高い指数で制した馬や素質馬を出走してくる場合もあるからです。ただし、ノーザンF以外の前走新馬戦出走馬は通用していないし、前走未勝利組も通用していないのでご注意を!!

また、展開の傾向としても、このレースは前週のきさらぎ賞やエルフィンS、前日のクイーンCとの勢力分散の影響もあり、例年、小頭数になることや、前哨戦らしく出走馬に無理をさせない傾向があるので、スローペースの傾向。それも昨年のように4F通過49秒5などという「ど」のつくスローペースになることもけっこうあります。逆にハイペースになったことは過去10年でゼロです。

今年は雨の影響で稍重~重が想定されますが、何が何でもの逃げ馬不在でシコウがハナを主張するかというメンバー構成だけに、昨日よりも馬場が悪化したとしてもスローペースが濃厚。過去10年で一番ペースが速くなったのは、稍重で行われた2015年ですが、その時のような逃げ馬(リスペクトアース)がいないので、追い込み一辺倒では、厳しいと見ています。その前提で予想を組み立てたいです。

●京都記念

京都記念は、3年前よりG1に昇格した大阪杯の前哨戦であり、ドバイワールドCの前哨戦でもあります。また、昨秋のG1で上位争いをした一線級の馬たちにとっては、休養明けの始動戦になります。前走でジャパンCや有馬記念、日経新春杯、AJCC、年によってはエリザベス女王杯や菊花賞組など、距離2200m以上を使われている馬が多く出走してくるのがこのレースのポイント。

前走で今回距離と同じか、長距離を使われている馬が多く参戦することや、例年のように少頭数で行われることもあり、芝2200m戦としては各馬の仕掛けどころが遅くなることがほとんど。休養明け初戦から無理をさせたくないという思惑もあるでしょう。

実際に過去10年でまあまあ速い流れとなったのは、雨の影響で時計が掛かる中、ヤマカツライデンが大逃げを打った2017年のみ。(勝ち馬:サトノクライン) とてもスローペースが発生しやすく、先行馬が残りやすいのがこのレースの特徴です。

レース全体の傾向としては、逃げ、先行馬が圧倒的に有利であり、2016年に1番人気に支持されたレーヴミストラルが1番人気で2桁着順に敗れたように、追い込み馬は受難。また、2015年に断然の1番人気に支持された追い込み馬のハープスターのように、スローペースを意識して、普段よりも早めに仕掛けて最後失速と、人気を裏切るケースも少なくありません。

つまり、追い込みタイプは狙い下げる必要があるということ。過去10年でこのレースを差して勝ったのも、次走の天皇賞(春)でも2着と好走した抜群の末脚を持つ2013年のトーセンラーのみです。ただし、今年は大雨の影響で重~不良馬場が濃厚とのこと。今の京都芝コースはただでさえ例年よりも馬場が悪いのに、大雨が降ったらズブズブの馬場になるのではないでしょうか。今年に関しては脚質云々よりも、道悪適性の高さを重視して予想を組み立てたいです。

2020年 クイーンカップ

桜花賞の前哨戦のグレードレースは、みなさんもご存知のように、一昨年からG2に昇格したチューリップ賞とフィリーズレビュー。しかし、フィリーズデビューは距離が芝1400mと短く、短距離指向が強いレースとなるため、クイーンCはチューリップ賞に次ぐ、第二の桜花賞の前哨戦、もしくはNHKマイルCの前哨戦としての意味合いを持ちます。つまり、3歳牝馬の強豪が集うことが多いということ。

実際に昨年のこのレースを優勝したクロノジェネシスは、桜花賞3着、オークス3着を得て、秋華賞馬となりました。さらに4着馬のカレンブーケドールもオークス2着、秋華賞で2着と好走しています。それ以前にも2016年の優勝馬や2017年の2着馬アエロリットが同年のNHKマイルCを制し、2015年の2着馬ミッキークイーンもオークスと秋華賞を優勝。襲来の活躍馬を多数輩出しているだけに、今後も見逃せないレースでしょう。

このように終わってみればハイレベル決着となることが多いために、前走で新馬、未勝利組の成績【0・2・3・34】とほどんど通用していません。2頭の2着馬は、2015年のミッキークインと2018年のフィフニティで、この年はともにレベルの低い年でした。また、ともに差す形での2着で、勝ちに行かずに楽をさせたのが良かったのでしょう。

勝ちに行くレース(先行策)をした馬は、昨年の3番人気馬ミリオンドリームズのように、見事なほど馬群み沈んでおり、このことからもその時点で実力の足りない馬が先行することがいかにリスクかがおわかり頂けるでしょう。先週のきさらぎ賞で危険な人気馬に取り上げたアルジャンナは、勝ちに行かなかったから負けたのではなく、勝ちに行かなかったから3着だった…川田騎手は下手打ったのではなく、上手く乗ったと考えるのが競馬の本質だと思っています。

また、短距離路線のトップクラスはフィリーズデビューを目指すことが多いため、前走で距離1400m以下に出走していた馬はほとんど通用していません。前走で1400m以下に出走していた馬の成績は過去10年で【0・1・0・22】で、唯一の2着馬は2010年のプリンセスメモリーですが、この馬も距離延長を意識して脚をタメう形、追い込む形で浮上しています。

まとめると、本命馬には昨年のクロノジェネシスのように、前走阪神ジュベナイルFの上位馬か(今年は不在)、フェアリーSの上位馬、距離1600m以上のオープン特別か、1勝クラス(500万下)を勝ち上がってきた馬が理想的だということ。

また、過去10年の勝ち馬10頭中、6頭が先行馬だったのもポイントでしょう。ただ、昨年のように前半4F48秒8の極端なスローペースになった場合には、上がり3Fタイムが速い馬がワン、ツーを決める可能性が高まるのも確か。今年は逃げ馬のインザムービーの陣営が「タメを利かせたい」とコメントしており、シャンドフルールの単騎逃げの可能性が高まりました。ジョディ―が単騎で逃げた昨年と類似するペースになるかもしれません。

佐賀記念の予想

佐賀記念は、夏のサマーチャンピオンと並ぶ佐賀二大レースのひとつ。中距離路線のG2・G3は、11月のみやこS、浦和記念以来となるために、強豪が集う年がほとんど。2009年にはスマートファルコンが、2013年にホッコータルマエが出走し、圧勝したこともありました。

主なメンバーは、ホッコータルマエのように、東海SでフェブラリーS出走権を逃した東海S(旧、平安S)の上位馬や東海Sで通用しなかった馬、前年のJRAオープン上位の上がり馬です。さらに川崎記念の上位馬が出走してくることもあります。

このように中央勢が手強いために、地方馬が他のG3よりも苦戦しています。地方馬のこのレース3着以内は、2008年のチャンストウライ(1着)まで遡らなければありません。チャンストウライのように、前年の帝王賞で4着、名古屋グランプリで3着など、よほどの実績馬ではない限り、今後も地方馬の苦戦の傾向は続くでしょう。

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2020年 きさらぎ賞・東京新聞杯

●きさらぎ賞

きさらぎ賞は、前日にはエルフィンS、翌週にはクイーンCや共同通信杯とこの2週に3歳のオープン、重賞が集中していることもあり、毎年のように少頭数で行われます。このため道悪にでもならない限り、平均~スローペースが通常化しており、過去10年で逃げ馬の1着1回、2着3回、3着1回という素晴らしい成績を収めています。

今年も小頭数8頭立て。逃げ馬はコルテジア、ギベルティの2頭で、両馬ともにスローペースの逃げで結果を出してきた馬です。今回は内枠でこの距離(芝1800m)に自信のあるはコルテジアが逃げる可能性が高いと見ていますが、どちらが逃げるにせよ、無理のないレースメイクで、スローペースよりの流れになると見るのが順当でしょう。京都芝コースは先週と比べると、高速化しているだけになおさらです。

また、このレースのポイントは1番人気馬がよくコケて、案外と荒れているということ。実際に過去10年の1番人気馬の成績は、【3・3・0・4】で、一昨年のダノンマジェスティ(9着)や昨年のヴァンギャルド(4着)が代表されるように、それまで後半型(末脚型)の競馬で結果を出してきた馬が、スローペースを意識して先行し、ドボンするパターンが目立ちます。

今回で断然の1番人気のアルジャンナは、ゲートも二の脚の遅い後半型の馬。前を意識して動けば、最後失速の可能性はあるでしょう。ここでも東京スポーツ杯2歳Sのように、追い込みに徹することができるかがポイントですが、その場合は、同タイプの2010年のレーヴドリアンのように前を捕らえきれずに善戦止まりで終わる可能性もあります。つまり、アルジャンナを過信するのは危険ということ。その前提で予想を組み立てたいです。

●東京新聞杯

東京新聞杯は、近年の強い逃げ馬の不在の影響もあって、スローペースの傾向が強いレースです。2016年、2017年は、それまで逃げたことがなかったスマートレイアーやブラックスピネルが逃げて、押し切れるほど遅いペース。良馬場ながら前半4F48~49秒台と、「東京マイルは淀みなく流れる」という定説を覆すほど、超絶スローペースでした。

しかし、東京マイルは最初の3コーナーまでの距離が約550mもあり、緩やかに坂を下って行くUターンコースのため、外枠の逃げ馬でも行く気になればハナを主張することが可能。逃げ馬の出方ひとつでハイペースにもなります。

実際に逃げ馬が揃っていた昨年は、外のショウナンアンセムと内のロジクライが競り合って、前半4F45秒7-後半4F46秒2(決着タイム:1分31秒9)という緩みないペースで流れて、前が崩れました。

さて、今年はどうかというと、前に行ってこそのモルフェオルフェの逃げが濃厚のメンバー構成。ただし、キャンベルジュニアや、ヴァンドギャルド、クリノガウディー(同馬は、陣営が「ここも脚をタメす競馬で」とコメント)など、先行勢が手強いとなると、ある程度、ペースを引き上げて行くでしょう。

昨年のように逃げ馬が揃っているわけではないので、緩みない流れになる可能性は低いにせよ、ある程度、ペースが上がる、平均ペースで流れる可能性が高いと見て、予想を組み立てたいです。今年の東京は例年のような超高速馬場ではないので、前半4F46秒台半ばの1分32秒台の決着だと、差し馬のほうが優勢と見ていますが、先行馬も残れないことはないと見ています。

また、このレースのポイントは前走のマイルCS出走馬が不振だということ。そもそも前走でG1を目標にした馬というのは、マイルCSに限らずに危険行為で先週の白富士S(オープン)でも、前走のジャパンCで6着のダイワキャグニ―が1番人気でぶっ飛びました。

前走でマイルCS出走馬のこのレースでの成績も過去10年で【1・0・0・13】と不振。唯一の優勝馬は、2010年のスマイルジャックですが、同馬は前年の安田記念の3着馬。前年の秋がやや不振でマイルCSでも6着でしたが、ここで復活したタイプです。つまり、そもそも強く、マイルCSで案外な負け方をしている馬ではないと、狙いづらいということです。