2020年 弥生賞ディープインパクト記念

今年より弥生賞を改め、“弥生賞ディープインパクト記念”と長ったらしいレース名称となったこのレース。しかし、小頭数なのは変わらずで、今年も昨年同様、朝日杯フーチュリティSの覇者サオリスとホープフルSの覇者コントレイルの2歳G1馬対決は、皐月賞まで持ち越されました。

もっともこれまで行われた現3歳世代の重賞で、一番指数が高かったのは、コントレイルが5馬身ぶっちぎった東京スポーツ杯2歳S。今年は目下2連勝のサトノフラグこそ出走しているものの、ホープフルSの敗者復活戦のようなレースだけに、とてもここから主役が現れるとは…。近年の大手牧場の使い分けにより、本当にこのレースは皐月賞の前哨戦としての権威を失いました。

また、昨日の重賞傾向でチューリップ賞はスローペースになりやすいことをお伝えしましたが、弥生賞も似たような傾向。中山芝2000m自体は、最初の1コーナーまでの距離は405mと長いため、テンの遅い馬でも行く気になれば逃げられるし、複数の逃げ馬が競り合えばハイペースにもなります。

しかし、前哨戦の場合、無理をさせたくない、折り合いに専念したい意識が働くため、基本的にペースが上がらないのが全体の傾向。実際にこのレースの過去10年でハイペースになったのは、マカヒキが差し切り勝ちを決めた2016年のみで(この年は逃げ馬が2頭出走)、それ以外は平均~スローペースです。

さて、今年はどうなるか? 不良馬場の未勝利戦で強烈な圧勝劇を見せたスタミナ豊富なパンサラッサの逃げが濃厚。いや、超高速馬場のエリカ賞で基礎スピード不足が証明されたパンサラッサは、行くことでしか道が開けないので、強気の逃げを打つでしょう。良馬場ならば近2走のように平均ペースよりもややハイペースを刻む可能性が高いと見ています。

同型のウインカーネリアンは、パンサラッサに競りかけたら死んでしまうことは百も承知なので、折り合って2番手。場合によっては離れた2番手でレースを運ぶ可能性が高いと見ています。おそらく縦長馬群になるので、能力どおりに決まる可能性が高いと見ています。ただ、今回は1番人気のサトノフラッグの実力が決して抜けた存在ではないので、それなりの配当妙味がありそうです。

2020年 オーシャンS・チューリップ賞

●オーシャンステークス

オーシャンSが行われる中山芝1200mは、外回りの坂の頂上付近からスタートして、約4.5mもの坂を下って行くコース。スタートしてから約275mで最初の3コーナーを向かえますが、「どこがコーナー?」というくらいコーナーが緩いために、そこでスピードが減速することなく、ペースが上がりやすいのが特徴。

実際にこのレースの過去10年を振り返っても、全てが超~ややハイペース。平均~スローペースになったことは一度もありません。昨年のモズスーパーフレア(1着)や2015年~2016年のハクサンムーン(2着)などが逃げてこのレースで連対していますが、それらは後のG1でも通用したように、G1級の実力馬ばかり。展開上、有利なのは中団~差し馬です。

しかし、追い込み馬は、下り坂で加速したまま4コーナーをカーブすることになるので、2016年に1番人気に支持されたアルビアーノが5着に敗れたように、特に外枠の追い込みは不利でしょう。

今年はカッパツハッチやレジーナフォルテ、クールティアラといった芝1000mの逃げ馬が多数出走。その上、テンが速いナックビーナスやエンゲルヘンも出走しているだけに、ハイペースは免れないでしょう。超ハイペースになる可能性もあると見ています。

そうなると展開上は中団~差しが有利ですが、包まれないようにある程度、積極的に出して行く必要性のある1枠の昨年のスプリンターズSの上位2頭、タワーオブロンドン、ダノンスマッシュは割引が必要でしょう。


●チューリップ賞

3年前にG2に格上げされたチューリップ賞。しかし、それにより桜花賞最大の前哨戦という感が薄らいできました。3年前のアーモンドアイや昨年のグランアレグリアのような桜花賞馬のように、トライアルを使わずに本番に直行する有力馬が多くなった一方、賞金が高くなったことで、ここを目標とする馬が多くなったからです。

また、チューリップ賞の全体的な傾向としては、3歳牝馬の重賞らしく、無理をさせないように、また折り合いを学ばせる目的もあり、仕掛けをワンテンポ遅らせる傾向。つまり、スローペースになりやすいということ。このため逃げ馬が穴を開けるケースが目立ち、過去10年の逃げ馬の成績は、1着1回、3着2回と悪くありません。

しかし、決め手ある重賞ウイナーやこの先の重賞ウイナーのほうが圧倒的に活躍しているのも事実です。特に最有力は阪神ジュベナイルFの上位馬が有力で、過去3年とも同レースの優勝馬がこのレースも連対しています。(過去10年で阪神ジュベナイルFの優勝馬で4着以下に敗れたのは、2013年のローブティサージュだけ)

阪神ジュベナイルFを逃げて圧勝したレシステンシアは、本番を見据えて折り合うことを意識してくるはずなので、今回で逃げるのはスマイルカナが濃厚。今回も平均~スローペースで流れて、上がりの競馬となる可能性が高いでしょう。その想定で予想を組み立てたいです。

2020年 エンプレス杯の予想

今年で66回目を迎えるエンプレス杯は、数ある牝馬限定ダートグレードの中でも、もっとも歴史があるレース。かつては砂の女王決定戦の位置付けで、地方競馬のグレード制導入元年(1995年)には、ホクトベガが歴史的大差勝ちを収めたこともありました。しかし、2011年のJBCレディスクラシックの創設や牝馬限定のダートグレードの充実により、ここ数年はレベルが低下。TCK女王盃などのG3と横並びのようなレースとなっています。

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2020年 中山記念・阪急杯

●中山記念

中山記念は、4年前年からG1に格付けされた大阪杯への前哨戦ですが、ドバイ国際競走やQエリザベス2世Cの前哨戦としても大切な役割を果たします。中山記念がこの時期に行われていなければ、ジャスタウェイ、リアルスティール、ヴィブロスのドバイでの快挙、ネオリアリズムの香港での快挙がなかった…と言っても過言ではありません。

なぜなら、このレースの舞台の中山芝1800mは、タフなコースだからです。中山芝1800mは最初の1コーナーまでの距離が約205mと短く、スタートしてすぐに急坂を上がって行くコース。このため前半ペース事態は上がらずにスローペース。しかし、上級条件となると中緩みしないのがポイント。

ましてこれまでのG1馬やこの先のG1馬が集う中山記念となると、向こう上面の下り坂でスピードに乗せて、動いて行くことがほとんど。高速馬場ならば、坂を下った辺りの5F目から1F11秒台の脚が問われることも少なくありません。つまり、5F目から1F11秒台の脚を使っても最後までバテない持久力がなければ、勝ち負けに持ち込めないということ。

競走馬の前哨戦は、「心肺機能を鍛えて、疲れを残さない」ことがポイントなので、中山記念は実にその条件を満たしていると言えます。休養によって失われたスタミナを、このレースで先行することで補うことが出来るのです。逆に言うと、もともとスタミナがあるタイプでなければ、休養明けで勝ち負けするには、厳しいものがあるでしょう。

実際に過去10年でこのレースを休養明け(中10週以上)で連対しているのは、2011年のキャプテントゥーレ(2着)、2014年ジャスタウェイ(1着)、2015年のヌーヴォレコルト(1着)、2016年ドゥラメンテ(1着)、2017年ネオリアリズム(1着)、2018年のアエロリット(2着)、2019年のラッキーライラック(2着)とG1勝ちの実績がある馬と、その後のG1優勝馬ばかりです。

また、スタミナが問われるレースだけに、このレースは過去10年中9頭が前走で芝2000m以上の距離を使われていた馬。唯一、前走でマイル戦に出走していたのはネオリアリズムですが、同馬は力の要る馬場の札幌記念を逃げ切るような持久力型の馬でした。今年も前走芝2000m以上組で、芝2000m適性が高い馬を中心視したいです。

今年も近2年同様にマルターズアポジーの逃げが濃厚のメンバー構成。同馬はこのレースが引退レースとなるわけですが、それでも中距離なら緩みないペースでレースメイクするスピードはあります。昨日の中山は雨の影響があったにせよ、標準よりも時計を要していたのでなおさらハイペース方向に持ち込みやすいでしょう。逃げ馬がしっかりレースメイクすると、フロックが利きづらいだけに、スタミナのある実力馬を中心視したいです。

●阪急杯

阪急杯は、本番・高松宮記念に繋がることが多いレース。2013年のロードカナロアや2014年のコパノリチャードなどがこのレースを勝って、高松宮記念も優勝しています。また、2013年にこのレースを逃げ切り勝ちしたミッキーアイルも、次走の高松記念では2着と好走しています。

しかし、本番に繋がっているのは、このレースをハイペースで逃げ、先行して上位争いをした馬がほとんど。昨年のミスターメロディはこのレースを先バテ7着から、本番・高松宮記念で巻き返しVでした。一方、このレース差し、追い込みで勝った2013年のダイワマッジョーレや2017年のトーキングドラム、昨年のスマートオーディンは、高松宮記念では見事にドボンしています。

このメカニズムは至って簡単! 阪急杯が行われる阪神芝1400mは、2コーナー奥からのスタートで最初の3コーナーまでの距離が約443mもあるために、逃げ、先行馬が多く出走しているほど、顕著にペースが上がりやすいからです。

つまり、阪急杯は、差し馬有利の流れになりやすいということ。過去10年を振り返っても、10年とも前傾ラップ。もっともペースに緩みが生じた一昨年でも前半3F34秒2-後半3F34秒6(1分20秒1)で決着しています。ゆえにこのレースを不利な逃げ、先行策で上位争いした馬たちは高松宮記念へと繋がり、有利な差し追い込みで上位争いした馬たちは、相手強化の高松宮記念では通用しないことが多いのです。

ただし、今年はちょっと様相が違います。昨年暮れの阪神Cや1月のシルクロードSなどが、ことごとくタフな馬場の消耗戦となり、逃げ、先行馬がここへ進む過程で脱落したために、このレースとしては異様なほど差し、追い込み馬が集いました。ここまで差し、追い込み馬が集うと、逃げ、先行馬が楽なレースになるでしょう。

また、このレースは過去10年の連対馬20頭中、前走重賞以外のレースから連対した馬は、展開に恵まれた2017年のトーキングドラムのみでしたが、今年に関しては、前走非重賞組でも通用しそうです。差し、追い込み有利の展開に恵まれて結果を出した重賞上位馬は、前記したようにあまりに脆いからです。

2020年 京都牝馬S・ダイヤモンドS

●京都牝馬ステークス

1回京都開催最終週の芝1600mから、2回京都開催最終週の芝1400m戦に生まれ変わって今年で4年目。エリザベス女王杯や秋華賞組は1月の愛知杯へ、高松宮記念やヴィクトリアマイルを目指す、スプリント~マイル路線馬は京都牝馬Sへという形で定着しました。

このレースが行われる京都外回りの芝1400mの舞台は、スタートしてから約200m地点で京都コース最大の名所、小高い丘を登り、後半が下り坂になるため、前半ペースがそこまで上がらないのがポイント。京都芝1200mほどではないにせよ、高速馬場であればスローペースが発生しやすいです。

しかし、京都牝馬Sは連速京都開催の最終週ということや、雨に祟られることも多く、案外と差しが決まっています。牝馬は瞬発力を生かす競馬で下級条件を勝ち上がってきた馬が多く、上級条件ほど持久力のある逃げ、先行馬の比率が少なというのもあるでしょう

今回も何が何でも逃げたい馬が不在。ビーチサンバは中距離の逃げ馬なので、芝1400mのここでは、逃げられないでしょう。無理に出して行く必要性もないので、同馬は出たなりで、テンの速いメイショウショウブが逃げる形が濃厚。ディアンドルやアマルフィコーストなども先行するものの、逃げたくはないタイプだけに、メイショウショウブが平均~ややスローペースで逃げる可能性が高いと見ています。

しかし、前記した前に行く馬たちは、強くもないし、タフな馬場の京都を考えると、前から押し切るのは難しいと見ています。今年もやっぱり差し競馬になるのではないでしょうか。その前提で予想を組み立てたいです。

●ダイヤモンドステークス

長距離の重賞路線は、ステイヤーズS→(万葉S)→ダイヤモンドS→阪神大賞典→天皇賞(春)という流れ。しかし、昨年の天皇賞(春)や阪神大賞典の出走馬は、リッジマンのみ。一昨年のステイヤーズSの覇者ではありますが、その後が不振。同馬は一昨年のステイヤーズSのパフォーマンスで走れれば、ここも上位争いに加われますが、実質、新興勢力同士の戦いとなりました。

このことが今年のこのレースを難しくさせていますが、基本的に距離が長くなるほど、フロックが利かないのも事実。長距離の場合、一速から二速、二速から三速と徐々にギアをあげていく必要があり、一速から急に五速、六速まであげるような馬は、通用しないからです。前半で低速で走り過ぎると、3コーナーでは絶望的な位置になります。

一昨年にトップハンデ58.5kgのフェイムゲームが優勝したように、過去のこのレースでトップハンデ馬が活躍しているのも、歴代の優勝馬が名だたるステイヤーばかりなのも、そのせいでしょう。今回が軽ハンデだったとしても、ギアチェンジが求められないレースである以上、そこまで大きな優位性がないのです。(斤量はスピードのアップダウンに影響する)

つまり、ダイヤモンドSは、実力どおりに決着することが多いということ。昨年の優勝馬ユーキャンスマイルには菊花賞で3着の実績があったように、当然、芝3000m以上でのグレード実績、実績、もしくはそれに準ずる指数があれば通用します。

しかし、このレースで穴を開けているのは、2012年の優勝馬ケイアイドウソジン(12番人気)のように、「芝3000以上が未経験だっただけで、実はステイヤーだった」という馬ばかりです。このような隠れステイヤーがいるかいないかを吟味するのが、このレースの醍醐味、重要ポイントでもあるでしょう。それらを踏まえて、予想を組み立てたいです。

2020年 共同通信杯・京都記念

●共同通信杯

クイーンCの傾向で、クイーンCは桜花賞への前哨戦の意味合いも持つレースであることをお伝えしました。共同通信杯も同じで、弥生賞やスプリングSと肩を並べる皐月賞の前哨戦の意味合いを持ちます。弥生賞やスプリングSと異なるのは、皐月賞への優先出走権があるかないかです。

実際に過去10年の優勝馬、ゴールドシップ(2012年)、イスラボニータ(2014年)、リアルスティール(2015年)、ディーマジェスティ(2016年)、スワーヴリチャード(2017年)、ダノンキングリー(2019年)があとの皐月賞やダービーで連対しています。また、このレースの2着馬ディープブリランテ(2012年)は、その後ダービー馬となり、ドゥラメンテ(2015年)は、皐月賞、ダービーを制して2冠馬となりました。

近年は弥生賞やスプリングSを使わずに、皐月賞へ直行する馬も多くなっているだけに、弥生賞やスプリングS以上にクラシックに繋がるレースと言っても良いかもしれません。つまり、レベルが高く、前走G1以外で3着以下に敗れたような馬ではまず、通用しません。そうなると本来は前走で新馬戦や未勝利戦を使われていた馬は通用しないはすですが、このレースに限っては前走新馬組でも通用しているのがポイント。

なぜかと言うと、大手牧場のノーザンFは、このレースに期待馬を出走させてくる傾向があり、前記したリアルスティールのように、新馬戦をやたらと高い指数で制した馬や素質馬を出走してくる場合もあるからです。ただし、ノーザンF以外の前走新馬戦出走馬は通用していないし、前走未勝利組も通用していないのでご注意を!!

また、展開の傾向としても、このレースは前週のきさらぎ賞やエルフィンS、前日のクイーンCとの勢力分散の影響もあり、例年、小頭数になることや、前哨戦らしく出走馬に無理をさせない傾向があるので、スローペースの傾向。それも昨年のように4F通過49秒5などという「ど」のつくスローペースになることもけっこうあります。逆にハイペースになったことは過去10年でゼロです。

今年は雨の影響で稍重~重が想定されますが、何が何でもの逃げ馬不在でシコウがハナを主張するかというメンバー構成だけに、昨日よりも馬場が悪化したとしてもスローペースが濃厚。過去10年で一番ペースが速くなったのは、稍重で行われた2015年ですが、その時のような逃げ馬(リスペクトアース)がいないので、追い込み一辺倒では、厳しいと見ています。その前提で予想を組み立てたいです。

●京都記念

京都記念は、3年前よりG1に昇格した大阪杯の前哨戦であり、ドバイワールドCの前哨戦でもあります。また、昨秋のG1で上位争いをした一線級の馬たちにとっては、休養明けの始動戦になります。前走でジャパンCや有馬記念、日経新春杯、AJCC、年によってはエリザベス女王杯や菊花賞組など、距離2200m以上を使われている馬が多く出走してくるのがこのレースのポイント。

前走で今回距離と同じか、長距離を使われている馬が多く参戦することや、例年のように少頭数で行われることもあり、芝2200m戦としては各馬の仕掛けどころが遅くなることがほとんど。休養明け初戦から無理をさせたくないという思惑もあるでしょう。

実際に過去10年でまあまあ速い流れとなったのは、雨の影響で時計が掛かる中、ヤマカツライデンが大逃げを打った2017年のみ。(勝ち馬:サトノクライン) とてもスローペースが発生しやすく、先行馬が残りやすいのがこのレースの特徴です。

レース全体の傾向としては、逃げ、先行馬が圧倒的に有利であり、2016年に1番人気に支持されたレーヴミストラルが1番人気で2桁着順に敗れたように、追い込み馬は受難。また、2015年に断然の1番人気に支持された追い込み馬のハープスターのように、スローペースを意識して、普段よりも早めに仕掛けて最後失速と、人気を裏切るケースも少なくありません。

つまり、追い込みタイプは狙い下げる必要があるということ。過去10年でこのレースを差して勝ったのも、次走の天皇賞(春)でも2着と好走した抜群の末脚を持つ2013年のトーセンラーのみです。ただし、今年は大雨の影響で重~不良馬場が濃厚とのこと。今の京都芝コースはただでさえ例年よりも馬場が悪いのに、大雨が降ったらズブズブの馬場になるのではないでしょうか。今年に関しては脚質云々よりも、道悪適性の高さを重視して予想を組み立てたいです。

2020年 クイーンカップ

桜花賞の前哨戦のグレードレースは、みなさんもご存知のように、一昨年からG2に昇格したチューリップ賞とフィリーズレビュー。しかし、フィリーズデビューは距離が芝1400mと短く、短距離指向が強いレースとなるため、クイーンCはチューリップ賞に次ぐ、第二の桜花賞の前哨戦、もしくはNHKマイルCの前哨戦としての意味合いを持ちます。つまり、3歳牝馬の強豪が集うことが多いということ。

実際に昨年のこのレースを優勝したクロノジェネシスは、桜花賞3着、オークス3着を得て、秋華賞馬となりました。さらに4着馬のカレンブーケドールもオークス2着、秋華賞で2着と好走しています。それ以前にも2016年の優勝馬や2017年の2着馬アエロリットが同年のNHKマイルCを制し、2015年の2着馬ミッキークイーンもオークスと秋華賞を優勝。襲来の活躍馬を多数輩出しているだけに、今後も見逃せないレースでしょう。

このように終わってみればハイレベル決着となることが多いために、前走で新馬、未勝利組の成績【0・2・3・34】とほどんど通用していません。2頭の2着馬は、2015年のミッキークインと2018年のフィフニティで、この年はともにレベルの低い年でした。また、ともに差す形での2着で、勝ちに行かずに楽をさせたのが良かったのでしょう。

勝ちに行くレース(先行策)をした馬は、昨年の3番人気馬ミリオンドリームズのように、見事なほど馬群み沈んでおり、このことからもその時点で実力の足りない馬が先行することがいかにリスクかがおわかり頂けるでしょう。先週のきさらぎ賞で危険な人気馬に取り上げたアルジャンナは、勝ちに行かなかったから負けたのではなく、勝ちに行かなかったから3着だった…川田騎手は下手打ったのではなく、上手く乗ったと考えるのが競馬の本質だと思っています。

また、短距離路線のトップクラスはフィリーズデビューを目指すことが多いため、前走で距離1400m以下に出走していた馬はほとんど通用していません。前走で1400m以下に出走していた馬の成績は過去10年で【0・1・0・22】で、唯一の2着馬は2010年のプリンセスメモリーですが、この馬も距離延長を意識して脚をタメう形、追い込む形で浮上しています。

まとめると、本命馬には昨年のクロノジェネシスのように、前走阪神ジュベナイルFの上位馬か(今年は不在)、フェアリーSの上位馬、距離1600m以上のオープン特別か、1勝クラス(500万下)を勝ち上がってきた馬が理想的だということ。

また、過去10年の勝ち馬10頭中、6頭が先行馬だったのもポイントでしょう。ただ、昨年のように前半4F48秒8の極端なスローペースになった場合には、上がり3Fタイムが速い馬がワン、ツーを決める可能性が高まるのも確か。今年は逃げ馬のインザムービーの陣営が「タメを利かせたい」とコメントしており、シャンドフルールの単騎逃げの可能性が高まりました。ジョディ―が単騎で逃げた昨年と類似するペースになるかもしれません。

佐賀記念の予想

佐賀記念は、夏のサマーチャンピオンと並ぶ佐賀二大レースのひとつ。中距離路線のG2・G3は、11月のみやこS、浦和記念以来となるために、強豪が集う年がほとんど。2009年にはスマートファルコンが、2013年にホッコータルマエが出走し、圧勝したこともありました。

主なメンバーは、ホッコータルマエのように、東海SでフェブラリーS出走権を逃した東海S(旧、平安S)の上位馬や東海Sで通用しなかった馬、前年のJRAオープン上位の上がり馬です。さらに川崎記念の上位馬が出走してくることもあります。

このように中央勢が手強いために、地方馬が他のG3よりも苦戦しています。地方馬のこのレース3着以内は、2008年のチャンストウライ(1着)まで遡らなければありません。チャンストウライのように、前年の帝王賞で4着、名古屋グランプリで3着など、よほどの実績馬ではない限り、今後も地方馬の苦戦の傾向は続くでしょう。

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2020年 きさらぎ賞・東京新聞杯

●きさらぎ賞

きさらぎ賞は、前日にはエルフィンS、翌週にはクイーンCや共同通信杯とこの2週に3歳のオープン、重賞が集中していることもあり、毎年のように少頭数で行われます。このため道悪にでもならない限り、平均~スローペースが通常化しており、過去10年で逃げ馬の1着1回、2着3回、3着1回という素晴らしい成績を収めています。

今年も小頭数8頭立て。逃げ馬はコルテジア、ギベルティの2頭で、両馬ともにスローペースの逃げで結果を出してきた馬です。今回は内枠でこの距離(芝1800m)に自信のあるはコルテジアが逃げる可能性が高いと見ていますが、どちらが逃げるにせよ、無理のないレースメイクで、スローペースよりの流れになると見るのが順当でしょう。京都芝コースは先週と比べると、高速化しているだけになおさらです。

また、このレースのポイントは1番人気馬がよくコケて、案外と荒れているということ。実際に過去10年の1番人気馬の成績は、【3・3・0・4】で、一昨年のダノンマジェスティ(9着)や昨年のヴァンギャルド(4着)が代表されるように、それまで後半型(末脚型)の競馬で結果を出してきた馬が、スローペースを意識して先行し、ドボンするパターンが目立ちます。

今回で断然の1番人気のアルジャンナは、ゲートも二の脚の遅い後半型の馬。前を意識して動けば、最後失速の可能性はあるでしょう。ここでも東京スポーツ杯2歳Sのように、追い込みに徹することができるかがポイントですが、その場合は、同タイプの2010年のレーヴドリアンのように前を捕らえきれずに善戦止まりで終わる可能性もあります。つまり、アルジャンナを過信するのは危険ということ。その前提で予想を組み立てたいです。

●東京新聞杯

東京新聞杯は、近年の強い逃げ馬の不在の影響もあって、スローペースの傾向が強いレースです。2016年、2017年は、それまで逃げたことがなかったスマートレイアーやブラックスピネルが逃げて、押し切れるほど遅いペース。良馬場ながら前半4F48~49秒台と、「東京マイルは淀みなく流れる」という定説を覆すほど、超絶スローペースでした。

しかし、東京マイルは最初の3コーナーまでの距離が約550mもあり、緩やかに坂を下って行くUターンコースのため、外枠の逃げ馬でも行く気になればハナを主張することが可能。逃げ馬の出方ひとつでハイペースにもなります。

実際に逃げ馬が揃っていた昨年は、外のショウナンアンセムと内のロジクライが競り合って、前半4F45秒7-後半4F46秒2(決着タイム:1分31秒9)という緩みないペースで流れて、前が崩れました。

さて、今年はどうかというと、前に行ってこそのモルフェオルフェの逃げが濃厚のメンバー構成。ただし、キャンベルジュニアや、ヴァンドギャルド、クリノガウディー(同馬は、陣営が「ここも脚をタメす競馬で」とコメント)など、先行勢が手強いとなると、ある程度、ペースを引き上げて行くでしょう。

昨年のように逃げ馬が揃っているわけではないので、緩みない流れになる可能性は低いにせよ、ある程度、ペースが上がる、平均ペースで流れる可能性が高いと見て、予想を組み立てたいです。今年の東京は例年のような超高速馬場ではないので、前半4F46秒台半ばの1分32秒台の決着だと、差し馬のほうが優勢と見ていますが、先行馬も残れないことはないと見ています。

また、このレースのポイントは前走のマイルCS出走馬が不振だということ。そもそも前走でG1を目標にした馬というのは、マイルCSに限らずに危険行為で先週の白富士S(オープン)でも、前走のジャパンCで6着のダイワキャグニ―が1番人気でぶっ飛びました。

前走でマイルCS出走馬のこのレースでの成績も過去10年で【1・0・0・13】と不振。唯一の優勝馬は、2010年のスマイルジャックですが、同馬は前年の安田記念の3着馬。前年の秋がやや不振でマイルCSでも6着でしたが、ここで復活したタイプです。つまり、そもそも強く、マイルCSで案外な負け方をしている馬ではないと、狙いづらいということです。

2020年 根岸S・シルクロードS

●根岸ステークス

ダ1400mのグレードレースは、地方競馬を含めて年間8レースあります。中央のダ1400mのオープン特別も、直近ではギャラクシーS、すばるSなど数多く行われています。しかし、中央で行われるダ1400mのグレードレースは、今回の根岸Sと夏のプロキオンSのみ。また、中央のダ1400m戦は、東京、京都、阪神、中京の4場で行われますが、スタート地点がダートなのは、東京コースのみ。さらにスプリントのダートグレードは、1~2月に行われるのはこのレースのみということもあり、根岸Sは地方馬や地方交流戦組の参戦が目立ちます。

本来、ダートスタートコースよりも、芝スタートコースのほうがダッシュがつくため、前半ペースが上がりやすい傾向があります。しかし、東京ダ1400mは、芝スタートコースながら、前半ペースが上がりやすいのが特徴。これは最初の3コーナーまでの距離が約442mと阪神ダ1400mに次いで長い上に、前半で坂を下って、後半で坂を上るコースだからです。まして地方経由馬は揉まれ弱い馬が多く、できれば前半からリードを奪いたい馬が多いので、なおさらその傾向に拍車が掛かるのでしょう。

実際に根岸Sの過去10年を見ても、逃げ馬の3着以内はゼロ。2008年にはタイセイアトムが逃げて2着に粘っていますが、この年は降雪により、月曜日に代替開催。不良馬場の上に、2列目を追走していたトウショウギアが故障して、有力馬がことごとく後退する不利がありました。一方、追い込み馬は1着4回、2着1回、3着4回という強烈な成績。この活躍ぶりは、重賞屈指どころか、ぶっちぎりのNO.1でしょう。ただし、本来、最初のストレートが長いコースというのは、隊列形成がスムーズならば、そこまでペースが上がらないことも忘れずにいたほうがいいでしょう。

しかし、そうは言っても特に近3年は、モンドクラッセ、サイタスリーレッド、マテラスカイなど、行くしかない逃げ馬がオーバーペースで逃げていることもあり、カフジテイクやノンコノユメノ追い込みが決まっています。昨年も追い込み馬のペースでしたが、コパノキッキングやユラノトが先行~中団から押し切れたのは、この2頭が強かったからです。(前記2頭は、次走のフェブラリーSでも5着、3着を善戦)

今回逃げる可能性が高いのは、逃げなければ持ち味が生きないドリームキラリが濃厚。ワイルドファラオは初ダートで逃げたユニコーンSはしぶとい内容でしたが、折り合う競馬もできるので逃げない可能性が高いでしょう。例年のこのレースと比べると断然、逃げ、先行馬が手薄な上に、案外と前が楽になる可能性もあります。

まして今年は、土曜日の銀蹄S(ダ1400m)で1分23秒5で決着しているように、例年よりも高速ダートです。土曜日が稍重で日曜日は馬場が回復することを視野に入れても、平均ペース前後で1分22秒台で決着するのではないでしょうか。結局のところ実績も自在性があるコパノキッキングがどこまでドリームキラリを可愛がるかでペースが決まる面はありますが、前からでも押し切れることを視野に入れて予想を組み立てたいです。

●シルクロードステークス

シルクロードSが行われる京都芝1200mは、スタートしてから内回りの3コーナーの坂を上がって行くコース。最初の3コーナーまでの距離が約320mと短い上に、前半で急坂を上るコースのため、京都が超高速馬場で、いかなる快速馬が逃げたとしても、前半3F32秒台に突入することはありません。

前半3F32秒2(小倉1200mの北九州記念)を記録したことがある超快速馬のエイシンダックマンでも、このコースだと馬なりで前半3F33秒5(淀短距離S)でしか行けなかったほど。つまり、エーシンダックマンがこのコースを得意としていたように、前半ペースが上がりづらいため、逃げ、先行馬がやたらと活躍します。過去10年で逃げ馬の2着が5度もあるのだから、異常に逃げ馬が活躍するレースと言えます。

※同距離コースのG3・京阪杯でも過去10年で、逃げ馬が3勝、2着1回。

しかし、昨年のこのレースは、逃げ馬や逃げたい馬が揃っていた上に、大外枠からセイウンコウセイが押して押して内の逃げ馬のハナを叩いて、玉砕覚悟の逃げ。けっして高速馬場でもないのに、1998年のキョウエイマーチ(前半3F33秒1)に次ぐ、シルクロードS史上2番目の前半3F33秒3で逃げて、久々に前がしっかりと崩れました。

同馬は直近のレースが不振で、斤量58kgを背負っていたこともあり、叩き台に徹してきた感が見え見えでした。あれを見てしまうと、ここも楽にハナへ行けるであろうモズスーパーフレアに過度な期待をしてしまうのは危険ですが、ラブカンプーもかつてほど前に行けなくなっており、今年は昨年ほど逃げ馬が揃っていません。

確かに例年のこの時期の京都芝コースよりも1秒前後時計を要しており、その上今週よりAコース→Bコースを使用。土曜日の段階では外のほうが伸びていました。そこを考えるとモズスーパーフレアが力任せに行き切ると危険な状況ではありますが、騎手も土曜日を踏まえて乗ってくるでしょう。

ただし、モズスーパーフレアが逃げるとするならば、同馬を見ながらレースを運べる2列目、できれば外でしょう。その位置を取れる(好きな位置を取れる)こと自体が強さですが、強い馬の直後は進路取りに苦労しないし、ましてそれが実績のある逃げ馬だとハイペースなら控えて、スローペースならそのままついて行けば良いのですから楽です。それを踏まえて予想を組み立てたいです。