2020年 フィリーズレビュー・金鯱賞

●フィリーズレビュー

フィリーズレビューが行われる阪神芝1400mは、先々週の「阪急杯の傾向」でもお伝えしたように、差し、追い込み馬が有利なコース。スタートしてすぐ最初の3コーナーを向かえる阪神芝1200mよりも最初の直線が1F長く、約443mもあるため、逃げ、先行馬が多く出走しているほど、ポジション争いが激化し、ペースが上がりやすくなります。

実際にこのレースの過去10年、全て平均ペース以上で決着しており、ハイペースが3度、超絶ハイペースが5度も出現。昨年は前走のさざんか賞を逃げて圧勝し、メンバー中NO.1のPP指数をマークしていた指数上の主役イベリスでさえも、このレースでは先行して4着に敗れています。(次走のアーリントンCで巻き返しV)

もっともイベリスが敗れた背景には、同馬は前走の芝1200mで結果を出したこともあり、距離延長を懸念して、逃げなかったのもあるでしょう。実際に前走で芝1200mを使っていた馬というのは、過去10年で29頭出走し、3着以内だった馬はゼロという成績。

これは前走芝1200m組はそのスピードに任せて前に行くか、距離延長を懸念して脚をタメるかというように、立ち回りに制約がついてしまうのが一番の理由でしょう。もちろん、展開にマッチすれば馬券圏内に突入しても不思議ありませんが、レース運びに制約がつくという意味では不利です。

逆に先行策から押し切って優勝した馬は、2012年のアイムユアーズ、2014年のベルカント、2016年のソルベイグなど後々の重賞、特にスプリント戦で活躍した馬ばかり。また、どの馬も前走で距離1400m以上のレースに出走しており、迷いのない位置取りができたことも勝因でしょう。

さて、今回は、逃げることで素質が開眼した最内枠のカリオストロがハナを主張する可能性が高いと見ていますが、外からさざんか賞を逃げ切り勝ちしたヴァラークラウンが競りかけていく公算大。フェアレストアやケープゴッドなどの先行馬も出走しているだけに、やはりハイペースが濃厚でしょう。カリオストロやケープゴッドが強いのは重々承知の上で、やっぱり前走で芝14100m以上を使割れている差し馬を中心視したいです。

●金鯱賞

金鯱賞は2017年から大阪杯へのトライアルレースとして生まれ変わり、今年より中京開幕週から2週繰り下げて行われるようになりました。2017年以降、ステファノス、ヤマカツエース、スワーヴリチャード、アルアインがここをステップにして大阪杯で3着以内に好走しているだけに、要注目でしょう。

さて、このレースの傾向はというと、中京芝2000mは前半でゴール前の直線の坂を上って、後半で坂を下るコースのため、前半スローの上がり勝負が発生しやすいコース。しかし、古馬一線級が集うこのレースは、大半の馬が3コーナーの下り坂で勢いに乗せて動くため、単調な前残りになることは稀。

前に行く馬も3コーナーからもうひと脚使えなければ厳しいものがあり、結局のところ、ある程度持久力も問われていることになります。つまり、前に行ったことにこしたことはなく、差しでも十分届きますが、3~4コーナーで差し馬の外から動かなければならない追い込み馬は苦戦するでしょう。

実際にこのレースが芝2000mで行われるようになった過去8年を見ても、追い込み馬の3着以内は一度もありません。この傾向は2週繰り下がって馬場が悪化したとしても、大きくは変わらないはず。しかも、今回で逃げるのは、まず、ダイワキャグニーですから、なおさらスローペースが濃厚でしょう。つまり、サートゥルナーリアは出遅れ癖いのある馬で、出遅れた場合が怖いのですが…楽に先行なら有力でしょう。

2020年 ファルコンS・中山牝馬S

●ファルコンステークス

中京競馬場が新装オープンし、ファルコンSが芝1400mで行われるようになって今年で8年目。過去8年の逃げ馬の着順はというと、2012年のエクセルシオール・17着、2013年のカシノランナウェイ・14着、2014年のネロ・8着、2015年のセカンドテーブル・9着、2016年のミスキララ・13着、2017年のレジーナフォルテ・15着、2018年モズスーパーフレア・5着、2019年スタークォーツ・9着とことごとく馬群に沈んでいます。(全て15~18頭立て)

過去8年の前半3F-後半3Fのレースラップは、2012年は34秒8-36秒8、2013年は34秒9-35秒5、2014年は33秒0秒-36秒3、2015年は34秒4-36秒9、2016年は33秒3-39秒7(極悪馬場)、2017年は34秒0-35秒3、2018年は34秒9-35秒5、2019年は34秒2-35秒0。中京はビックアーサーが優勝した2016年の高松宮記念当日以前は、かなり時計の掛かる馬場状態でしたが、それ以降も雨の影響を受けていることも多く、ハイペースの傾向。

つまり、ファルコンSは全体的な傾向として、逃げ、先行型が苦戦の傾向のレース。その一番の理由は、中京芝1400mという舞台が、スタートして約120mほど坂を上って、そこから4コーナー過ぎまで、一気に坂を下って行くコースだからでしょう。

また、この時期は3歳馬がレース経験を重ねたことで体力もついてくる時期。この先、スプリント路線に行くのか、マイル路線に行くのかも視野に入れて、逃げ、先行馬が行けるだけ、行かせるようなレースをさせるのも、このレースでハイペースが発生しやすい理由でしょう。

今回は先行馬が集った中で、ビアンフェ、デンタルバルーンの逃げ馬2頭が出走。おそらく二の脚が速く、前走ジャニアリーSで折り合いを欠きながら、5F57秒7で通過したデンタルバルーンが逃げ、朝日杯フューチュリティSを5F通57秒2のオーバーペースにしたビアンフェが競って行く形。当然、ハイペースが濃厚でしょう。

ビアンフェもデンタルバルーン底力がありますが、「道悪のハイペースで前から押し切れるか?」と聞かれたら、何とも言えない面があります。やはり中心にすべきは、差し馬でしょう


●中山牝馬ステークス

今開催は中山芝1800mで、中山記念、中山牝馬S、フラワーS、スプリングSと連続で重賞が行われます。前記4レースを総合的にペースが上がりやすい順にあげると、中山記念、中山牝馬S、スプリングS、フラワーCとなります。

古馬トップクラスが集う中山記念は、ほとんどの馬が2コーナーの急坂の下り(3.5~4F目)で減速させないため(序盤が極端なスローペースだと、この地点で勢いに乗せる場合もある)、道悪にでもならない限り、向こう上面で大きくペースが緩むことはほどんどありません。それゆえに最初の1コーナーまでの距離が約205mと短く、前半で急坂を上るコースながら、前が潰れることもしばしばあります。

しかし、まだ体力のない3歳牝馬同士の戦いとなるフラワーCは、騎手が2コーナーの急坂をゆっくり下ることを意識するので、向こう上面でペースが上がらず、しばしば前残りが発生します。これについては、来週のフラワーC時にお伝えしますが、その中間的なペースになるのが中山牝馬SとスプリングSです。

実際に中山牝馬Sの過去10年を見ても、逃げ馬不在で逃げ馬ではない馬が逃げた2013年、2016年、そして逃げ馬が貧弱だった2017年こそスロー~超スローペース。しかし、逃げ馬が出走し、逃げ馬がそれなりに強ければ(PP指数の赤い数字をマークしている馬)が出走していた場合には、全て平均~超ハイペースで決着しています。

今回は雨の影響で道悪が予想されますが、ここは差し、追い込み馬が揃っており、先行馬が手薄。逃げ馬もモルフェオルフェとコントラチェックの2頭です。それもモルフェオルフェの「逃げ宣言」に対して、コントラチェックは「2番手でもいい」と陣営がコメントしているだけに、道悪を加味しても平均ペースくらいで収まるのではないでしょうか。

2歳時のサフラン賞で逃げてコントラチェックを降したことがあるレッドアネモスが逃げたら、またひと味違うレースになりそうですが、津村騎手ですから、陣営から指示が出ていないと逃げないでしょう。前からの押し切りも視野に入れつつ、能力重視で予想を組み立てたいです。

2020年 名古屋大賞典の予想

名古屋大賞典の前後にJRAではハンデ戦のマーチSが行われますが、実績馬はハンデを背負わされることを嫌って、ここへ出走してくることが多いのが特徴。前年のG1通算5勝のエスポワールシチーも、2011年度はここから始動して、再びG1戦線に挑みました。

よって、主な対戦図式は、休養明けの実績馬vs佐賀記念の上位馬となります。佐賀記念の上位馬の成績も悪くないですが、相手がG1通用級の馬ならば、さすがに別格。2017年の川崎記念の優勝馬オールブラッシュこそ、このレースで人気を背負って馬群に沈みましたが、その年はドバイワールドカップを目指す馬が多く、川崎記念のレベルがあまりに低かった年。また、川崎記念は直後にG1・フェブラリーSが控えていることもあって、他のG1と比べるとレベルが低くなる傾向があります。

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2020年 ダイオライト記念の予想

ダートグレードでは名古屋グランプリに次ぐ、長距離2400mで行われるダイオライト記念。主に川崎記念の上位馬やフェブラリーSでは、距離不足の実績馬が集います。また、地方で行われるダートグレードは、1番人気が上位争いして、本命サイドで決着することがほとんど。ダイオライト記念は過去10年で1番人気の3着以内が6回と、けっこう人気に応えられていません。

それではこれまでにどのような馬が1番人気、それも単勝オッズ1.0倍台の断然の1番人気に支持され、人気を裏切ってきたのでしょうか? 傾向はいたってワンパターン。

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2020年 黒船賞の予想

黒船賞は、高知競馬で唯一のダートグレード競走。2008年には経営逼迫で休止したこともありましたが、そこから見事に盛り返し、今では盛大に開催されています。また、別定戦のダートグレードは、前年のJBCスプリント以来ということもあり、案外と前年のJBCスプリントの上位馬やフェブラリーS出走の実績馬が出走してくることも少なくありません。

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2020年 弥生賞ディープインパクト記念

今年より弥生賞を改め、“弥生賞ディープインパクト記念”と長ったらしいレース名称となったこのレース。しかし、小頭数なのは変わらずで、今年も昨年同様、朝日杯フーチュリティSの覇者サオリスとホープフルSの覇者コントレイルの2歳G1馬対決は、皐月賞まで持ち越されました。

もっともこれまで行われた現3歳世代の重賞で、一番指数が高かったのは、コントレイルが5馬身ぶっちぎった東京スポーツ杯2歳S。今年は目下2連勝のサトノフラグこそ出走しているものの、ホープフルSの敗者復活戦のようなレースだけに、とてもここから主役が現れるとは…。近年の大手牧場の使い分けにより、本当にこのレースは皐月賞の前哨戦としての権威を失いました。

また、昨日の重賞傾向でチューリップ賞はスローペースになりやすいことをお伝えしましたが、弥生賞も似たような傾向。中山芝2000m自体は、最初の1コーナーまでの距離は405mと長いため、テンの遅い馬でも行く気になれば逃げられるし、複数の逃げ馬が競り合えばハイペースにもなります。

しかし、前哨戦の場合、無理をさせたくない、折り合いに専念したい意識が働くため、基本的にペースが上がらないのが全体の傾向。実際にこのレースの過去10年でハイペースになったのは、マカヒキが差し切り勝ちを決めた2016年のみで(この年は逃げ馬が2頭出走)、それ以外は平均~スローペースです。

さて、今年はどうなるか? 不良馬場の未勝利戦で強烈な圧勝劇を見せたスタミナ豊富なパンサラッサの逃げが濃厚。いや、超高速馬場のエリカ賞で基礎スピード不足が証明されたパンサラッサは、行くことでしか道が開けないので、強気の逃げを打つでしょう。良馬場ならば近2走のように平均ペースよりもややハイペースを刻む可能性が高いと見ています。

同型のウインカーネリアンは、パンサラッサに競りかけたら死んでしまうことは百も承知なので、折り合って2番手。場合によっては離れた2番手でレースを運ぶ可能性が高いと見ています。おそらく縦長馬群になるので、能力どおりに決まる可能性が高いと見ています。ただ、今回は1番人気のサトノフラッグの実力が決して抜けた存在ではないので、それなりの配当妙味がありそうです。

2020年 オーシャンS・チューリップ賞

●オーシャンステークス

オーシャンSが行われる中山芝1200mは、外回りの坂の頂上付近からスタートして、約4.5mもの坂を下って行くコース。スタートしてから約275mで最初の3コーナーを向かえますが、「どこがコーナー?」というくらいコーナーが緩いために、そこでスピードが減速することなく、ペースが上がりやすいのが特徴。

実際にこのレースの過去10年を振り返っても、全てが超~ややハイペース。平均~スローペースになったことは一度もありません。昨年のモズスーパーフレア(1着)や2015年~2016年のハクサンムーン(2着)などが逃げてこのレースで連対していますが、それらは後のG1でも通用したように、G1級の実力馬ばかり。展開上、有利なのは中団~差し馬です。

しかし、追い込み馬は、下り坂で加速したまま4コーナーをカーブすることになるので、2016年に1番人気に支持されたアルビアーノが5着に敗れたように、特に外枠の追い込みは不利でしょう。

今年はカッパツハッチやレジーナフォルテ、クールティアラといった芝1000mの逃げ馬が多数出走。その上、テンが速いナックビーナスやエンゲルヘンも出走しているだけに、ハイペースは免れないでしょう。超ハイペースになる可能性もあると見ています。

そうなると展開上は中団~差しが有利ですが、包まれないようにある程度、積極的に出して行く必要性のある1枠の昨年のスプリンターズSの上位2頭、タワーオブロンドン、ダノンスマッシュは割引が必要でしょう。


●チューリップ賞

3年前にG2に格上げされたチューリップ賞。しかし、それにより桜花賞最大の前哨戦という感が薄らいできました。3年前のアーモンドアイや昨年のグランアレグリアのような桜花賞馬のように、トライアルを使わずに本番に直行する有力馬が多くなった一方、賞金が高くなったことで、ここを目標とする馬が多くなったからです。

また、チューリップ賞の全体的な傾向としては、3歳牝馬の重賞らしく、無理をさせないように、また折り合いを学ばせる目的もあり、仕掛けをワンテンポ遅らせる傾向。つまり、スローペースになりやすいということ。このため逃げ馬が穴を開けるケースが目立ち、過去10年の逃げ馬の成績は、1着1回、3着2回と悪くありません。

しかし、決め手ある重賞ウイナーやこの先の重賞ウイナーのほうが圧倒的に活躍しているのも事実です。特に最有力は阪神ジュベナイルFの上位馬が有力で、過去3年とも同レースの優勝馬がこのレースも連対しています。(過去10年で阪神ジュベナイルFの優勝馬で4着以下に敗れたのは、2013年のローブティサージュだけ)

阪神ジュベナイルFを逃げて圧勝したレシステンシアは、本番を見据えて折り合うことを意識してくるはずなので、今回で逃げるのはスマイルカナが濃厚。今回も平均~スローペースで流れて、上がりの競馬となる可能性が高いでしょう。その想定で予想を組み立てたいです。

2020年 エンプレス杯の予想

今年で66回目を迎えるエンプレス杯は、数ある牝馬限定ダートグレードの中でも、もっとも歴史があるレース。かつては砂の女王決定戦の位置付けで、地方競馬のグレード制導入元年(1995年)には、ホクトベガが歴史的大差勝ちを収めたこともありました。しかし、2011年のJBCレディスクラシックの創設や牝馬限定のダートグレードの充実により、ここ数年はレベルが低下。TCK女王盃などのG3と横並びのようなレースとなっています。

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2020年 中山記念・阪急杯

●中山記念

中山記念は、4年前年からG1に格付けされた大阪杯への前哨戦ですが、ドバイ国際競走やQエリザベス2世Cの前哨戦としても大切な役割を果たします。中山記念がこの時期に行われていなければ、ジャスタウェイ、リアルスティール、ヴィブロスのドバイでの快挙、ネオリアリズムの香港での快挙がなかった…と言っても過言ではありません。

なぜなら、このレースの舞台の中山芝1800mは、タフなコースだからです。中山芝1800mは最初の1コーナーまでの距離が約205mと短く、スタートしてすぐに急坂を上がって行くコース。このため前半ペース事態は上がらずにスローペース。しかし、上級条件となると中緩みしないのがポイント。

ましてこれまでのG1馬やこの先のG1馬が集う中山記念となると、向こう上面の下り坂でスピードに乗せて、動いて行くことがほとんど。高速馬場ならば、坂を下った辺りの5F目から1F11秒台の脚が問われることも少なくありません。つまり、5F目から1F11秒台の脚を使っても最後までバテない持久力がなければ、勝ち負けに持ち込めないということ。

競走馬の前哨戦は、「心肺機能を鍛えて、疲れを残さない」ことがポイントなので、中山記念は実にその条件を満たしていると言えます。休養によって失われたスタミナを、このレースで先行することで補うことが出来るのです。逆に言うと、もともとスタミナがあるタイプでなければ、休養明けで勝ち負けするには、厳しいものがあるでしょう。

実際に過去10年でこのレースを休養明け(中10週以上)で連対しているのは、2011年のキャプテントゥーレ(2着)、2014年ジャスタウェイ(1着)、2015年のヌーヴォレコルト(1着)、2016年ドゥラメンテ(1着)、2017年ネオリアリズム(1着)、2018年のアエロリット(2着)、2019年のラッキーライラック(2着)とG1勝ちの実績がある馬と、その後のG1優勝馬ばかりです。

また、スタミナが問われるレースだけに、このレースは過去10年中9頭が前走で芝2000m以上の距離を使われていた馬。唯一、前走でマイル戦に出走していたのはネオリアリズムですが、同馬は力の要る馬場の札幌記念を逃げ切るような持久力型の馬でした。今年も前走芝2000m以上組で、芝2000m適性が高い馬を中心視したいです。

今年も近2年同様にマルターズアポジーの逃げが濃厚のメンバー構成。同馬はこのレースが引退レースとなるわけですが、それでも中距離なら緩みないペースでレースメイクするスピードはあります。昨日の中山は雨の影響があったにせよ、標準よりも時計を要していたのでなおさらハイペース方向に持ち込みやすいでしょう。逃げ馬がしっかりレースメイクすると、フロックが利きづらいだけに、スタミナのある実力馬を中心視したいです。

●阪急杯

阪急杯は、本番・高松宮記念に繋がることが多いレース。2013年のロードカナロアや2014年のコパノリチャードなどがこのレースを勝って、高松宮記念も優勝しています。また、2013年にこのレースを逃げ切り勝ちしたミッキーアイルも、次走の高松記念では2着と好走しています。

しかし、本番に繋がっているのは、このレースをハイペースで逃げ、先行して上位争いをした馬がほとんど。昨年のミスターメロディはこのレースを先バテ7着から、本番・高松宮記念で巻き返しVでした。一方、このレース差し、追い込みで勝った2013年のダイワマッジョーレや2017年のトーキングドラム、昨年のスマートオーディンは、高松宮記念では見事にドボンしています。

このメカニズムは至って簡単! 阪急杯が行われる阪神芝1400mは、2コーナー奥からのスタートで最初の3コーナーまでの距離が約443mもあるために、逃げ、先行馬が多く出走しているほど、顕著にペースが上がりやすいからです。

つまり、阪急杯は、差し馬有利の流れになりやすいということ。過去10年を振り返っても、10年とも前傾ラップ。もっともペースに緩みが生じた一昨年でも前半3F34秒2-後半3F34秒6(1分20秒1)で決着しています。ゆえにこのレースを不利な逃げ、先行策で上位争いした馬たちは高松宮記念へと繋がり、有利な差し追い込みで上位争いした馬たちは、相手強化の高松宮記念では通用しないことが多いのです。

ただし、今年はちょっと様相が違います。昨年暮れの阪神Cや1月のシルクロードSなどが、ことごとくタフな馬場の消耗戦となり、逃げ、先行馬がここへ進む過程で脱落したために、このレースとしては異様なほど差し、追い込み馬が集いました。ここまで差し、追い込み馬が集うと、逃げ、先行馬が楽なレースになるでしょう。

また、このレースは過去10年の連対馬20頭中、前走重賞以外のレースから連対した馬は、展開に恵まれた2017年のトーキングドラムのみでしたが、今年に関しては、前走非重賞組でも通用しそうです。差し、追い込み有利の展開に恵まれて結果を出した重賞上位馬は、前記したようにあまりに脆いからです。

2020年 京都牝馬S・ダイヤモンドS

●京都牝馬ステークス

1回京都開催最終週の芝1600mから、2回京都開催最終週の芝1400m戦に生まれ変わって今年で4年目。エリザベス女王杯や秋華賞組は1月の愛知杯へ、高松宮記念やヴィクトリアマイルを目指す、スプリント~マイル路線馬は京都牝馬Sへという形で定着しました。

このレースが行われる京都外回りの芝1400mの舞台は、スタートしてから約200m地点で京都コース最大の名所、小高い丘を登り、後半が下り坂になるため、前半ペースがそこまで上がらないのがポイント。京都芝1200mほどではないにせよ、高速馬場であればスローペースが発生しやすいです。

しかし、京都牝馬Sは連速京都開催の最終週ということや、雨に祟られることも多く、案外と差しが決まっています。牝馬は瞬発力を生かす競馬で下級条件を勝ち上がってきた馬が多く、上級条件ほど持久力のある逃げ、先行馬の比率が少なというのもあるでしょう

今回も何が何でも逃げたい馬が不在。ビーチサンバは中距離の逃げ馬なので、芝1400mのここでは、逃げられないでしょう。無理に出して行く必要性もないので、同馬は出たなりで、テンの速いメイショウショウブが逃げる形が濃厚。ディアンドルやアマルフィコーストなども先行するものの、逃げたくはないタイプだけに、メイショウショウブが平均~ややスローペースで逃げる可能性が高いと見ています。

しかし、前記した前に行く馬たちは、強くもないし、タフな馬場の京都を考えると、前から押し切るのは難しいと見ています。今年もやっぱり差し競馬になるのではないでしょうか。その前提で予想を組み立てたいです。

●ダイヤモンドステークス

長距離の重賞路線は、ステイヤーズS→(万葉S)→ダイヤモンドS→阪神大賞典→天皇賞(春)という流れ。しかし、昨年の天皇賞(春)や阪神大賞典の出走馬は、リッジマンのみ。一昨年のステイヤーズSの覇者ではありますが、その後が不振。同馬は一昨年のステイヤーズSのパフォーマンスで走れれば、ここも上位争いに加われますが、実質、新興勢力同士の戦いとなりました。

このことが今年のこのレースを難しくさせていますが、基本的に距離が長くなるほど、フロックが利かないのも事実。長距離の場合、一速から二速、二速から三速と徐々にギアをあげていく必要があり、一速から急に五速、六速まであげるような馬は、通用しないからです。前半で低速で走り過ぎると、3コーナーでは絶望的な位置になります。

一昨年にトップハンデ58.5kgのフェイムゲームが優勝したように、過去のこのレースでトップハンデ馬が活躍しているのも、歴代の優勝馬が名だたるステイヤーばかりなのも、そのせいでしょう。今回が軽ハンデだったとしても、ギアチェンジが求められないレースである以上、そこまで大きな優位性がないのです。(斤量はスピードのアップダウンに影響する)

つまり、ダイヤモンドSは、実力どおりに決着することが多いということ。昨年の優勝馬ユーキャンスマイルには菊花賞で3着の実績があったように、当然、芝3000m以上でのグレード実績、実績、もしくはそれに準ずる指数があれば通用します。

しかし、このレースで穴を開けているのは、2012年の優勝馬ケイアイドウソジン(12番人気)のように、「芝3000以上が未経験だっただけで、実はステイヤーだった」という馬ばかりです。このような隠れステイヤーがいるかいないかを吟味するのが、このレースの醍醐味、重要ポイントでもあるでしょう。それらを踏まえて、予想を組み立てたいです。