■長らく逃げ切りが決まっていないレース
天皇賞(秋)では1987年のニッポーテイオー以来、逃げ切りが決まっていない。記録上では1991年にプレクラスニーが「逃げて勝利」となっているが、これは1位入線したメジロマックイーンの降着によるものだった。
これはAコースからBコースに替わるなかですでに内が悪化していることも多く、外差しが決まりやすいという点が大きい。また、2000mの距離ながらコーナーは3回で直線が長いため、ペースが緩みなく流れやすいことも理由のひとつだ。
過去10年では先行馬が5勝しているが、その5頭はいずれもそれまでにGⅠ勝ちの実績があった。末脚型が圧倒的に有利な舞台だけに、今回も末脚型を中心視したい。このラインより上のエリアが無料で表示されます。
東京11R 天皇賞(秋) 芝2000m
◎ (7)ドウデュース
○ (12)リバティアイランド
▲ (9)ホウオウビスケッツ
△ (3)ステラヴェローチェ
△ (8)キングズパレス
△ (11)ジャスティンパレス
結論 馬連7-12,9,3,8,11 (20:18:4:4:4) 複勝7 (50)
■有力馬と評価ポイント
◎ (7)ドウデュース
2年前、高速馬場の日本ダービーではあのイクイノックスを倒した馬。同年秋のフランス遠征では、2戦ともかなりタフな馬場となって結果を出せなかったが、帰国初戦の京都記念では3馬身半差で圧勝した。
昨年の天皇賞(秋)は出遅れて後方から進めた(11)ジャスティンパレスとプログノーシスが2着、3着に台頭する展開のなか、好スタートを決めて掛かりながらも積極的に3番手のイクイノックスを追いかけた。結果的に失速して7着に終わったが、東京芝2000mで1分55秒2という決着タイムからも分かるように、ペースが緩まない流れだった。それも長期休養明けで、太目残りでは敗戦も仕方ない。
それでも、武豊騎手が鞍上に戻った有馬記念では、日本ダービーや京都記念時のように後方からレースを進め、3角外から進出して一気に2列目まで押し上げる形。そこから中目に切れ込み、スターズオンアースに並びかけて2列目の外で直線へ。ラスト1Fでは前2頭を差し切り、半馬身差で勝利した。この年の有馬記念は年末の中山芝としては時計が出ており、本馬は高速馬場で末脚を生かしてこそ、ということを改めて感じさせる内容だった。
前々走のドバイターフは出遅れを中団まで挽回し、3~4角で窮屈になってブレーキを掛けながら進出。ラスト1Fまでは進路がなく、脚を余す形で敗れている。
前走の宝塚記念はタフな馬場。4番枠からまずまずのスタートを切り、そこからコントロールして位置を下げにかかったが、外から被せられて下げ切れずに後方列の中目を追走することとなった。3角までに位置を下げ切れず、3~4角では馬場の悪化した内を狙うしかない形に。4角では4列目まで上がったが、最後の直線でも馬場の悪化した内を通って6着敗退。ここでも本来の能力を出し切れなかった。
今回の天皇賞(秋)は当日も晴れの予報で、超高速馬場で行われる予想。近2走で能力を出し切っていないので、エネルギーは溜まっているだろう。1週前はCWで目一杯、直前はポリトラックという友道康夫厩舎の勝負調教をこなすことができた。距離適性も実績もあるので本命候補としたい。
○ (12)リバティアイランド
昨年の三冠牝馬で、ジャパンCでも2着と好走した馬。ジャパンCでは1番枠からまずまずのスタートを切り、好位の内から中目に誘導しながら進めていく形に。道中は逃げ馬からかなり離れた3番手を取ったイクイノックスの後ろを取り、やや掛かり気味に追走した。
3~4角でもイクイノックスをひたすらマークしながら最短距離を通り、3列目の4番手で直線へ。ラスト2Fでは一気に突き放されて3番手となったが、そこからもしぶとく伸び続けて2着に浮上した。イクイノックスには4馬身も離されたが、これは相手が怪物だっただけ。並みのGⅠならば勝ち負けできる指数を記録している。
本馬は東京芝2400mのオークスで自己最高指数を記録、前記のジャパンCで2番目の指数を記録しているように、芝2400mがベストの馬だ。前走のドバイシーマクラシック(芝2410m)でも、中団外からしぶとく伸びて接戦の3着に善戦している。
前走は3~4角で動いた2番手レベルスロマンスと3番手シャフリヤールがワンツーを決めたように、スローペースの直線勝負となった。前2頭を差せないことはともかく、ラスト1Fでジャスティンパレスにクビ差まで迫られたあたりにやや物足りなさも感じたが、スタミナが不足しがちな休養明けで日本のような高速馬場ではなかったことが影響していると見ている。
今回は前走で芝2410m戦を後方から運んだ後の一戦となるので、高速馬場の東京芝2000mでレースの流れに乗れるかがカギとなるが、ゴチャつかない外目の枠に入れたのは好材料と言える。ここではトップクラスの末脚の持ち主で、上位争いに加わる可能性が高い。対抗評価だ。
▲ (9)ホウオウビスケッツ
今夏の巴賞と函館記念を連勝した上がり馬。前々走の函館記念では12番枠から五分のスタートだったが、二の脚が速く楽に逃げ馬アウスヴァールの外2番手へ取り付いた。
1~2角では手綱を抑えてコントロールし、道中はアウスヴァールから2馬身半ほど離れた2番手を追走していく。3角では同馬と3馬身差だったが、3~4角では徐々に差を詰めながら外に誘導、4角で一気に先頭に並びかける。直線序盤で抜け出すと、ラスト1Fで突き抜けて3馬身半差で圧勝した。
逃げて勝利した巴賞から1Fの距離延長。前半のペースも速くなったが、ここでは逃げずに離れた2番手に控えたことも功を奏し、自己最高の指数を記録した。
また、4馬身1/4差の3着アウスヴァールと4着サヴォーナが後にオールカマーで2着、4着と善戦したようにこの函館記念はハイレベルで、ホウオウビスケッツはリバティアイランドのジャパンC2着時と同等の指数を記録している。
休養明けで高速馬場のなか行われた前走の毎日王冠は逃げ宣言をしていた(13)シルトホルンが控える形となったため、結果的に本馬がハナへ。かなりのスローペースで逃げて2着と無理をさせていないので、今回は前進が見込める。
今回も逃げの手に出るのか、父の岩田康誠騎手が手綱を取る(5)ノースブリッジが逃げるのかは流れによって変わりそうだが、両騎手ともハイペースを好まない騎手の上に折り合いもつくので、ハイペースにはならない可能性が高いと見ている。
天皇賞(秋)の過去10年で先行押し切りは全てGⅠ勝ちの実績がある馬。本馬にはその実績がないが、函館記念ではレベル次第でGⅠでも勝ち負けできる指数を記録している。先行策なら怖い一頭だ。
△ (3)ステラヴェローチェ
3歳時の2021年は皐月賞3着、日本ダービー3着、神戸新聞杯1着など世代トップ級の能力を示してきた馬。菊花賞は休養明けかつ不良馬場の神戸新聞杯で自己最高指数を記録した反動もあり、勝ち馬タイトルホルダーから5馬身以上離された4着に敗れた。
次走の有馬記念は9番枠から出遅れたが、そこから促して中団やや後方まで挽回。道中はエフフォーリアを徹底的にマークしながら中団の外で進め、3~4角の外から動いた同馬を追いかけて進出した。直線序盤は4列目付近の外。そこからじわじわ伸びて4番手に上がり、最後はクロノジェネシスとの叩き合いに。半馬身ほど敗れたが、4着に健闘した。
前記の有馬記念はパンサラッサがかなりのハイペースで逃げたことで、中団やや後方でレースを進めた本馬は展開に恵まれた面はあった。しかし、○(13)リバティアイランド以外に目立った活躍がない現4歳馬が主力となる今回のメンバーなら、当時の能力を発揮できればここでも通用する。
屈腱炎で1年7カ月の長期休養を余儀なくされたが、今年は大阪杯や札幌記念で中団からレースを進めて小差の4着、3着と善戦している。休養明け好走後の前走オールカマーでは、かなり掛かりながら好位馬群の外目を回るロスがありながら、最後の直線ではそれなりに伸びてきており、見せ場は作った。できればペースが上がって欲しいところではあるが、一発あっても不思議ない。
△ (8)キングズパレス
3走前の新潟大賞典で2着。3走前は13番枠から五分のスタートを切ったが、二の脚が遅く、下がって後方からの追走。道中はペースが上がらず、ゆったりとした流れ。そこで中団の外まで進出、3~4角で外から押し上げていった。直線序盤では追われても伸びが地味だったが、ラスト2Fで徐々に伸び始めて2列目に、ラスト1Fでは逃げ切りを図るヤマニンサルバムを強襲したが、ハナ差及ばなかった。
このレースは、次走で鳴尾記念を勝つヨーホーレイクが最内を立ち回って3着に敗れたように、外の方が伸びる馬場状態だった。よって、外々を回った3~4角のロスは致命的というわけでもなかった。しかし、道中で動いて勝ちに行ったことは好評価できる。
その後はサマー2000シリーズの七夕賞で2着、新潟記念で3着し、存在感をアピール。本馬はゲート、二の脚ともに安定しているが、先行できるほど速くない。末脚も安定しているが、高速馬場で一線級を相手にメンバー最速で上がってこれるほど速くもない。
武器がないので勝ち切れないのだが、弱点もやや右にモタれる多少ある程度で、目立った大きなものはない。総合力が高く、トップスピードが長く維持できる点は強み。ここも相手なりに走れそうなイメージがありながら11番人気と人気薄なので食指が動く。
△ (11)ジャスティンパレス
昨年の天皇賞(春)で悲願のGⅠ制覇を達成。このレースはタイトルホルダーが逃げて主導権を握り、前半~中盤が速かったが2周目の3角手前で同馬が故障して下がったことで13秒台前半と大きくペースが緩んだ。
本馬は1番枠から五分のスタートを切り、積極的に促していったが、ひとつ外のディープモンスターの方が速く、そこで控えて中団やや前目を追走。1~2角でディープボンドの後ろを選択し、そこから同馬をマーク。
3角手前で一気にペースダウンすると、そこでディープボンドを追い駆け、楽な手応えで進出。4角では同馬の外に誘導して2列目。直線序盤ですっと加速して先頭に立って1馬身。ラスト1Fでディープボンドとの差を広げて2馬身差で完勝した。
ここでは3角手前から上手く押し上げたことが功を奏しての優勝で、自己最高指数を記録した。その後は中距離路線に矛先を向け、宝塚記念3着、天皇賞(秋)は2着。
昨年の天皇賞(秋)は、◎(7)ドウデュ―スや(10)ダノンベルーガに先着しているが、出遅れて後方2番手からの追走となったことで展開に恵まれたもの。このレースはドウデュ―スのコメントでも触れたように、ジャックドールのオーバーペースで先行馬にはかなり厳しい展開だった。
前走の宝塚記念はスタミナが不足しがちな休養明けでタフな馬場。2番枠からまずまずのスタートを切ったが、挟まれかけて少し下がったが、そこから押されても進みが悪く、後方に下がってしまった。しかし、向上面で後方馬群の中目から好位中目まで押し上げたことで3~4角の一気のペースアップで苦しくなり、4角で馬場の良い外への誘導が難しく、直線は内のドウデュースのひとつ外の伸びないところを通って10着に敗れた。
今回はそこから立て直されての一戦。超高速馬場の芝2000mでは後方からの追走になるだけに、勝ち負けは難しいかもしれないが、大勢が決まったところを突っ込んで3着、印上位馬に何かしらの破綻が起きて2着という決着はわりと現実的なもの。警戒しておきたい。
推定3番人気 (14)レーベンスティール
エプソムCとオールカマーを連勝してここに臨む馬。前々走のエプソムCでは6番枠からまずまずのスタートを切り、じわっと仕掛けて好位中目を追走。向正面ではコントロールしながら位置を下げ、好位馬群の後方外に取り付く。
3~4角でも好位の外からラケマーダの後ろを通り、4列目で直線へ。ラスト2Fですっと抜け出すと一気に先頭列まで上がり、ラスト1Fでしぶとく抜け出して2馬身差で完勝した。
エプソムC当日は馬場の内側がやや荒れ、外差し有利の馬場だったが、向正面で位置を下げて上手く外に誘導したことで噛み合った面がある。また、本馬は折り合い面に課題があるが、平均ペースで流れて前に壁を作れたことで折り合いもスムーズだった。
前走のオールカマーは4番枠からまずまずのスタートを切り、序盤は2列目の中目。外からリカンカブールが2番手に上がり、道中は3列目の中目でかなり掛かったが我慢させて追走した。
3角で前にスペースを作り、4角でそのスペースを詰めていくも、そこで進路がない状態に。直線序盤で外への誘導が難しく、内に切れ込んでラスト1Fでは3列目。ラスト1Fでアウスヴァールの後ろから何とか馬群を捌き切ると、半馬身差で勝利した。
前走は最後の直線で詰まって仕掛けが遅れたが、結果的にここへ余力を残すことができた。ただし、今回は相手強化で外枠。8番枠は過去20年で52頭が出走して連対ゼロという枠だが、フルゲートではないのでそこまで悪い枠ではないだろう。
ただ前に壁を作りたいタイプで、壁が作れずに折り合いを欠いた時は不安なのと、一線級が相手となると、条件が整わないとまだ能力的に通用しないレベルと見ており、ここは消すことにした。
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京都11R カペラS 芝1800m
◎ (16)トランキリテ
○ (1)セオ
▲ (6)エスコーラ
△ (2)トゥデイイズザデイ
△ (4)ロングラン
△ (5)コレペティトール
△ (8)アルジーヌ
△ (10)ニホンピロキーフ
△ (11)ハーランズハーツ
△ (12)ショウナンマグマ
結論 馬連16-1,6,2,4,5,8,10,11,12 (9:6;5:5:5:5:5
■有力馬と評価ポイント
◎ (16)トランキリテ
3走前のOP・洛陽Sの2着馬。3走前は大外18番からやや出遅れ、進みも悪く、最後方からの追走。道中は前2頭が飛ばして隊列が縦長になっていく展開を、最後方列の外で脚を温存。3~4角でじわっと前との差を詰めながらもまた最後方列だったが、直線序盤で大外に誘導しながら追われるとじわじわ伸び始める。ラスト1Fで先に抜け出したドゥアイズとの差を詰めて半馬身差に迫った。
3走前は前後半3F45秒5-47秒1のかなりのハイペース。しかし、ラスト2Fで11秒6-11秒5と加速する流れを、ラスト1Fでしっかりと差を詰めている。つまり、勝ち馬のドゥアイズもそうだが、マイルは追走に忙しいということ。このレースぶりから距離を延ばしたほうがいいと見ていたが、今回は初めて1800m戦に出走してきた。
今回はリステッドでも手強い相手だが、昨日のスワンSで外差し勢が上位を独占したように、外差し有利の馬場状態。キレる脚が使えるタイプではないので、ある程度、レースの上がりが掛かっている点も好ましい。ここは一発を期待したい。