2020年 オーシャンS・チューリップ賞

●オーシャンステークス

オーシャンSが行われる中山芝1200mは、外回りの坂の頂上付近からスタートして、約4.5mもの坂を下って行くコース。スタートしてから約275mで最初の3コーナーを向かえますが、「どこがコーナー?」というくらいコーナーが緩いために、そこでスピードが減速することなく、ペースが上がりやすいのが特徴。

実際にこのレースの過去10年を振り返っても、全てが超~ややハイペース。平均~スローペースになったことは一度もありません。昨年のモズスーパーフレア(1着)や2015年~2016年のハクサンムーン(2着)などが逃げてこのレースで連対していますが、それらは後のG1でも通用したように、G1級の実力馬ばかり。展開上、有利なのは中団~差し馬です。

しかし、追い込み馬は、下り坂で加速したまま4コーナーをカーブすることになるので、2016年に1番人気に支持されたアルビアーノが5着に敗れたように、特に外枠の追い込みは不利でしょう。

今年はカッパツハッチやレジーナフォルテ、クールティアラといった芝1000mの逃げ馬が多数出走。その上、テンが速いナックビーナスやエンゲルヘンも出走しているだけに、ハイペースは免れないでしょう。超ハイペースになる可能性もあると見ています。

そうなると展開上は中団~差しが有利ですが、包まれないようにある程度、積極的に出して行く必要性のある1枠の昨年のスプリンターズSの上位2頭、タワーオブロンドン、ダノンスマッシュは割引が必要でしょう。


●チューリップ賞

3年前にG2に格上げされたチューリップ賞。しかし、それにより桜花賞最大の前哨戦という感が薄らいできました。3年前のアーモンドアイや昨年のグランアレグリアのような桜花賞馬のように、トライアルを使わずに本番に直行する有力馬が多くなった一方、賞金が高くなったことで、ここを目標とする馬が多くなったからです。

また、チューリップ賞の全体的な傾向としては、3歳牝馬の重賞らしく、無理をさせないように、また折り合いを学ばせる目的もあり、仕掛けをワンテンポ遅らせる傾向。つまり、スローペースになりやすいということ。このため逃げ馬が穴を開けるケースが目立ち、過去10年の逃げ馬の成績は、1着1回、3着2回と悪くありません。

しかし、決め手ある重賞ウイナーやこの先の重賞ウイナーのほうが圧倒的に活躍しているのも事実です。特に最有力は阪神ジュベナイルFの上位馬が有力で、過去3年とも同レースの優勝馬がこのレースも連対しています。(過去10年で阪神ジュベナイルFの優勝馬で4着以下に敗れたのは、2013年のローブティサージュだけ)

阪神ジュベナイルFを逃げて圧勝したレシステンシアは、本番を見据えて折り合うことを意識してくるはずなので、今回で逃げるのはスマイルカナが濃厚。今回も平均~スローペースで流れて、上がりの競馬となる可能性が高いでしょう。その想定で予想を組み立てたいです。

2020年 エンプレス杯の予想

今年で66回目を迎えるエンプレス杯は、数ある牝馬限定ダートグレードの中でも、もっとも歴史があるレース。かつては砂の女王決定戦の位置付けで、地方競馬のグレード制導入元年(1995年)には、ホクトベガが歴史的大差勝ちを収めたこともありました。しかし、2011年のJBCレディスクラシックの創設や牝馬限定のダートグレードの充実により、ここ数年はレベルが低下。TCK女王盃などのG3と横並びのようなレースとなっています。

★続きはこちら!
https://umanity.jp/racedata/columndet_view.php?cid=12192

★予想はこちら!
https://nar.umanity.jp/coliseum/coliseum_view.php?user_id=3100000007&race_id=2020030521140411

2020年 中山記念・阪急杯

●中山記念

中山記念は、4年前年からG1に格付けされた大阪杯への前哨戦ですが、ドバイ国際競走やQエリザベス2世Cの前哨戦としても大切な役割を果たします。中山記念がこの時期に行われていなければ、ジャスタウェイ、リアルスティール、ヴィブロスのドバイでの快挙、ネオリアリズムの香港での快挙がなかった…と言っても過言ではありません。

なぜなら、このレースの舞台の中山芝1800mは、タフなコースだからです。中山芝1800mは最初の1コーナーまでの距離が約205mと短く、スタートしてすぐに急坂を上がって行くコース。このため前半ペース事態は上がらずにスローペース。しかし、上級条件となると中緩みしないのがポイント。

ましてこれまでのG1馬やこの先のG1馬が集う中山記念となると、向こう上面の下り坂でスピードに乗せて、動いて行くことがほとんど。高速馬場ならば、坂を下った辺りの5F目から1F11秒台の脚が問われることも少なくありません。つまり、5F目から1F11秒台の脚を使っても最後までバテない持久力がなければ、勝ち負けに持ち込めないということ。

競走馬の前哨戦は、「心肺機能を鍛えて、疲れを残さない」ことがポイントなので、中山記念は実にその条件を満たしていると言えます。休養によって失われたスタミナを、このレースで先行することで補うことが出来るのです。逆に言うと、もともとスタミナがあるタイプでなければ、休養明けで勝ち負けするには、厳しいものがあるでしょう。

実際に過去10年でこのレースを休養明け(中10週以上)で連対しているのは、2011年のキャプテントゥーレ(2着)、2014年ジャスタウェイ(1着)、2015年のヌーヴォレコルト(1着)、2016年ドゥラメンテ(1着)、2017年ネオリアリズム(1着)、2018年のアエロリット(2着)、2019年のラッキーライラック(2着)とG1勝ちの実績がある馬と、その後のG1優勝馬ばかりです。

また、スタミナが問われるレースだけに、このレースは過去10年中9頭が前走で芝2000m以上の距離を使われていた馬。唯一、前走でマイル戦に出走していたのはネオリアリズムですが、同馬は力の要る馬場の札幌記念を逃げ切るような持久力型の馬でした。今年も前走芝2000m以上組で、芝2000m適性が高い馬を中心視したいです。

今年も近2年同様にマルターズアポジーの逃げが濃厚のメンバー構成。同馬はこのレースが引退レースとなるわけですが、それでも中距離なら緩みないペースでレースメイクするスピードはあります。昨日の中山は雨の影響があったにせよ、標準よりも時計を要していたのでなおさらハイペース方向に持ち込みやすいでしょう。逃げ馬がしっかりレースメイクすると、フロックが利きづらいだけに、スタミナのある実力馬を中心視したいです。

●阪急杯

阪急杯は、本番・高松宮記念に繋がることが多いレース。2013年のロードカナロアや2014年のコパノリチャードなどがこのレースを勝って、高松宮記念も優勝しています。また、2013年にこのレースを逃げ切り勝ちしたミッキーアイルも、次走の高松記念では2着と好走しています。

しかし、本番に繋がっているのは、このレースをハイペースで逃げ、先行して上位争いをした馬がほとんど。昨年のミスターメロディはこのレースを先バテ7着から、本番・高松宮記念で巻き返しVでした。一方、このレース差し、追い込みで勝った2013年のダイワマッジョーレや2017年のトーキングドラム、昨年のスマートオーディンは、高松宮記念では見事にドボンしています。

このメカニズムは至って簡単! 阪急杯が行われる阪神芝1400mは、2コーナー奥からのスタートで最初の3コーナーまでの距離が約443mもあるために、逃げ、先行馬が多く出走しているほど、顕著にペースが上がりやすいからです。

つまり、阪急杯は、差し馬有利の流れになりやすいということ。過去10年を振り返っても、10年とも前傾ラップ。もっともペースに緩みが生じた一昨年でも前半3F34秒2-後半3F34秒6(1分20秒1)で決着しています。ゆえにこのレースを不利な逃げ、先行策で上位争いした馬たちは高松宮記念へと繋がり、有利な差し追い込みで上位争いした馬たちは、相手強化の高松宮記念では通用しないことが多いのです。

ただし、今年はちょっと様相が違います。昨年暮れの阪神Cや1月のシルクロードSなどが、ことごとくタフな馬場の消耗戦となり、逃げ、先行馬がここへ進む過程で脱落したために、このレースとしては異様なほど差し、追い込み馬が集いました。ここまで差し、追い込み馬が集うと、逃げ、先行馬が楽なレースになるでしょう。

また、このレースは過去10年の連対馬20頭中、前走重賞以外のレースから連対した馬は、展開に恵まれた2017年のトーキングドラムのみでしたが、今年に関しては、前走非重賞組でも通用しそうです。差し、追い込み有利の展開に恵まれて結果を出した重賞上位馬は、前記したようにあまりに脆いからです。