■前哨戦がことごとく波乱で混戦ムードへ
4月に行われた川崎記念は極端に内有利の馬場で、最内を通った(2)ライトウォーリア、(1)クランブリッジがワン、ツーを決めた。またこのレースでは現時点で2番人気に支持されている(7)セラフィックコールも好位の最内を通っていたが、4着に敗れている。
続く5月のかしわ記念も圧倒的に前、そして内も有利な馬場で、ダ1400mのような流れ。シャマルの逃げ切りが逃げ切り、中団から最短距離を立ち回ったタガノビューティーが2着に善戦。2番手外のペプチドナイルが3着、その外3番手の(12)キングズソードが4着という決着だった。
また名古屋GPもレコード決着だったように馬場が極端に軽く、逃げ馬6勝、2着3回、3着3回と、1~12Rまでの全てのレースで逃げ馬が馬券に絡む逃げ馬天国の日だった。つまり、(5)ノットゥルノは展開に恵まれて勝利したことになるのだが、それを考慮しても8馬身の着差は大きい。
大井11R 帝王賞 芝2000m
◎ (7)セラフィックコール
○ (12)キングズソード
▲ (3)ディクテオン
△ (1)グランブリッジ
△ (5)ノットゥルノ
△ (8)ウィルソンテソーロ
△ (11)メイショウハリオ
結論 馬複7-12,3,1,5,8,11 (16:10:6:6:6:6) 複勝7 (50)
■有力馬と評価コメント
◎ (7)セラフィックコール
前々走のダイオライト記念を圧勝した馬。前々走は1番枠から五分のスタートを切り、促して好位の最内を確保。テリオスベルがスタンド前で捲って先頭に立ち、そこから隊列が縦長になっていく展開。セラフィックコールは2周目の向上面で単独4番手に上がり、かなり押して前との差を詰める。3~4角では3~4角の最内から追い上げ、4角では2番手のハギノハイグレイドに半馬身。直線半ばでハギノハイグレイドをかわして2番手に上がると、ラスト1Fでテリオスベルをしっかり捉えて、4馬身差で完勝した。
セラフィックコールはスタートも二の脚も速くないので、ダ1800mだと序盤で置かれて追走に苦労する面があるが、前々走はダ2400mと距離を延ばしたことで、楽に好位を確保。またエンジンが点火してからかなりしぶといので、長距離がベスト。
前走の川崎記念(ダ2100m)は2番枠からやや出遅れたが、二の脚の速さで挽回して4列目の最内を追走。2周目の向正面から動いて3列目に上がって3角へ。3~4角で前との差が詰まらず、直線でも外から(1)グランブリッジと(3)ディクテオンに差されて5着となった。
前走時は前記したように極端に内が有利な馬場状態。1着の(2)ライトウォーリア、(1)クランブリッジともに最短距離を通した馬である。セラフィックコールも最内を上手く最内を通していたが、5着に敗れたのは休養明けのダイオライト記念で激走した影響が大きい。ダイオライト記念時にかなり体を絞っていたにもかかわらず、前走時はさらに9Kg減と、かなりお疲れの状態だった。
また1周目の3~4角で内で包まれて砂を被り、4角からスタンド前に入ってすぐのところまでクビを外に向けるほど嫌がる素振りを見せてもいた。
今回はそこから立て直されての一戦。セラフィックコールはデビューから5戦5勝でみやこSを優勝するなど、スピード出世した素質馬。ノーザンFのエース、レーン騎手を起用してくるからには仕上がりに不安もないのだろう。今回は前走時よりも前に行きたい馬が集い、ペースが上がりそうなのも好ましく、本命馬とした。
○ (12)キングズソード
昨秋のJBCクラシックで初重賞制覇を達成した馬。同レースでは9番枠から五分のスタートだったが、楽な手応えで先行策。道中は3列目の外を追走し、3~4角のペースダウンで外から押し上げ、4角で仕掛けながら3番手で直線へ。そこからしぶとく脚を伸ばして残り300m標地点で先頭に立つと、後続にどんどん差を広げて4馬身差で完勝した。
昨秋のJBCクラシックは、タフな馬場で前半5F61秒5-後半5F63秒6のかなりのハイペース。それでありながら外枠から楽にポジションを取って、末脚も他馬に対して削がれなかったことは大きな収穫。後半型の馬が先行すると崩れるのが常だが、崩れるどころか自己最高指数を記録したあたりに成長力と大井ダ2000m適性の高さを見出すことができた、
3走前の東京大賞典は5着敗退。これは休養明けのJBCクラシックで激走した疲れによるものが大きい。また前後半5F63秒8-63秒5のスローペースを1番枠から積極的に出しては行かずに、慎重に進めたことで、馬群の内で包まれ、4角まで仕掛けられなかったことも敗因のひとつである。
前々走のフェブラリーSでは3~4角で外を回り、直線序盤で前の馬が下がって仕掛けが遅れるロスも影響して5着敗退。前走のかしわ記念は前と内が有利のダ1400mのような流れの外3番手を追走し、4着に敗退。近2走もしっかり敗因があっての敗退だけに、昨秋のJBCクラシックと同舞台に変わるここは期待したい。
▲ (3)ディクテオン
昨年の浦和記念と名古屋GPを連勝した馬。4走前の浦和記念は10番枠から出遅れて、最後方からの追走。2周目の2角からじわっと動いて向上面に入ると外から一気に位置を上げ、3角では好位の外。4角で先頭列に並びかけ、直線序盤でミトノオーを捉えると、そこからどんどん差を広げて、2馬身半差で完勝した。
4走前はミトノオーのマイペースの逃げが決まる可能性が高いと見て、後方からの追走になるディクテオンは評価を下げた。しかし、ラスト5F付近から動いて、最後までしぶとかったことに驚かされた。
3走前の名古屋GPは3走前ほど鮮やかな捲りではなかったが、大外12番枠から出遅れて後方から進めて、2角からじわっと進出して2馬身差で完勝。中央のダ2100m戦では前崩れの展開にならないと勝てなかったが、時計が掛かって、捲れる地方の馬場は合うようだ。
休養明けの前々走、ダイオライト記念では、スタミナが不足しがちな休養明けで距離延長で4着に敗れたが、前走の川崎記念は4着。前走は内と前が有利な展開だったが、出遅れて後方から、外々を回る競馬で上位3頭とは1馬身くらいの差だから悪い内容ではない。
また、前走の名古屋GPは(5)ノットゥルノが逃げで、2番手にキリンジ、やや離れて3番手にヒロイックテイルという隊列。スタンド前でノットゥルノが後続に差を広げていったが、この日は名古屋としてはダートが軽く逃げ馬天国。スタンド前から位置を上げていかなければ物理的に不可能だったが、3角の時点で絶望的な位置だった。勝った(5)ノットゥルノは強かったが、まともな決着だったとは思えず、展開にも恵まれそうなここで変わり身を期待してみたい。
△ (1)グランブリッジ
ダートグレードで4勝、2着7回の実績馬。またこれまで3着以下に崩れたのは距離1600m以下の新馬戦、昨年のスパーキングレディーCと2番枠で終始砂厚の深い内を先行した3走前の佐賀記念のみ。中距離戦では立ち回りが広く、しぶとく食らいついて行くタイプなので大崩れしないのが魅力だ。
前々走の川崎記念でも2着。前走は8番枠から好スタートを切ったが、下げて◎(7)セラフィックコールの後ろの最内6番手を追走。2周目の向正面で押し上げていくセラフィックコールを追い駆けて進出。4角で遅れだしたセラフィックコール、その外のノットゥルノの外に誘導して直線へ。そこから前の2頭の追い比べにじわじわ迫り、最後に失速しかかったアイコンテーラーをハナ差かわして2着と健闘した、
前走のエンプレス杯はその疲れもあって、指数をややダウンさせたが、それでも崩れないのがグランブリッジの長所である。今回も崩れないとは見ているが、これまでよりも相手が強く、本馬以上に狙いたい馬がいるので評価を下げた。
△ (5)ノットゥルノ
前走の名古屋GPを大楽勝した馬。前走は10番枠からまずまずのスタートを切り、そこからしっかり出して、内の(12)ヒロイックテイルに被せて主導権を握った。そこからマイペースで徐々に後続を引き離して、スタンド前では2番手のキリンジに4馬身半ほど差を作る。向上面でも強気に動いてキリンジに6馬身ほど差を作って直線へ。序盤でさらにリードを広げ、ラストは流しての8馬身差の圧勝だった。
このレースは2分10秒9だったが、直前のAクラスでも好タイムが出ており、競馬場移動後の過去2回よりも好タイムが見込める状況だった。結果的に1~3番手でレースを進めていた馬が上位を独占したように、馬場と展開に恵まれた面が大きいが、それでも8馬身も着差を付けたのは、地力強化と逃げがベストの馬だからだろう。
ノットルノは森泰斗騎手に乗り替わった昨年のJBCクラシックで逃げて2着に粘り、逃げてこそを証明していたが、主戦の武豊騎手は意地になり過ぎていたように思う。しかし、逃げ馬は2連続好走は難しいもの。今回は内枠に同型馬の(2)ライトウォーリアが出走しているので逃げられない可能性が高く、仮に逃げたとしても前走ほど楽には逃げられないはず。よって、評価を下げた。
△ (8)ウィルソンテソーロ
地方交流重賞で地道に力をつけ、昨秋のチャンピオンズCで2着と好走した馬。同レースでは7番枠からアオって出遅れ、後方内目からの追走。道中でじわっと内目から進出して3角へ。3角で内目を通して4角で後方馬群の中目を通して出口で外に誘導。直線序盤で軽く追われてさらに外へ。ラスト1F手前で外に出し切るとグングン伸びて逃げ粘るレモンポップに1馬身1/4差まで迫った。
前記のチャンピオンズCはやや流れが速く、内が有利な馬場状態。後方の内目を上手く立ち回り、4角出口で上手く外に誘導したことが好走要因だ。直線序盤で反応が甘く、外に出すのがやや遅れたところはあったが、完璧に近いレースぶりだった。
前走の東京大賞典でも2着。9番枠からまずまずのスタートだったが、じわっとハナを主張して奇襲の逃げ。ラスト1Fで甘くなったところをウシュバテソーロに交わされての2着だったが、逃げて結果を出したのは意外だった。しかし、このレースは前後半5F63秒8-63秒5の遅い流れ。幅広いレースに対応できると感心したが、展開に恵まれたのも確か。
前々走のフェブラリーSはまさか、ドンフランキーに競り掛けていく常軌を逸する競馬で8着大敗。前後半4F45秒6-50秒1の激流になったが、そこまで離されない8着に踏み止まったのは実力だろう。川田騎手が鞍上ということもあり、過剰人気ではあるが押さえておきたい。
△ (11)メイショウハリオ
一昨年と昨年の帝王賞を連覇した馬。昨年の帝王賞は大外9番枠からやや出遅れたが、ペースがかなり遅かったこともあり、わりと楽に好位の外を確保。テーオーケインズをマークしながらの追走になった。しかし、向正面でスワーヴアラミスが外から捲って一気にペースアップ。これに抵抗して速度を上げたテーオーケインズ、クリンチャー、オーヴェルニュは最後の直線で余力がなく、苦しくなり潰れた。
一方、メイショウハリオは捲られてもワンテンポ待ち、脚をタメることを選択したことで、最後の直線で余力を残せた面が大きい。一昨年の帝王賞は本馬が強かったというより、前記した馬たちが自滅したことが大きかったレース。よって、指数はそこまで高いものにはならなかった。
昨年の帝王賞では4番枠から五分のスタートを切って、中団の外を追走。3~4角で中団外から仕掛けながら位置を押し上げ、3列目で直線へ。序盤でじわじわ2列目まで上がり、ラスト1Fでしぶとく伸びて内の(1)クラウンプライドを捉え切ってハナ差で勝利した。
昨年の帝王賞は前半5F60秒4-後半4F61秒5とややハイペースではあったが、そこまで差しが有利な決着だったわけではない。ただし、2着テーオーケインズのピークが過ぎており、メンバーに恵まれたところがあり、記録した指数も昨年の帝王賞と同等だった。
今年の帝王賞のメンバーは過去2年よりも手強い。その上でトモを痛めてサウジCを回避し、中間の追い切りを見ても状態が上がってきていないようだ。陣営も「もともと使いつつというタイプだけに、物足りないところはあったが、このひと追いで良くなってくれれば」とコメントしている。おそらくこの先が目標になるだろうが、過去2年の実績を考慮し、押さえておくことにした。