■後方からでは届きにくいレース
過去10年で勝ち馬は逃げ~中団までで8勝。差しは2勝しているが、追い込み馬の3着以内はゼロ。2着は逃げ~中団までが6回。3着は逃げ~中団までが9回。差し馬の2勝は2016年のストレイトガール(18頭立ての3角11番手)と2017年のアドマイヤリード(17頭立ての3角12番手)で、2017年は雨の影響で外差し有利の馬場だった。基本的に高速馬場で行われることが多いこのレースでは、後方からでは届きにくく、ある程度は前目にいないと厳しいレースとなっている。
本日2番 東京11R ヴィクトリアマイル 芝1600m
◎ (6)マスクトディーヴァ
○ (13)モリアーナ
▲ (3)スタニングローズ
△ (1)ライラック
△ (2)フィアスプライド
△ (7)ハーパー
△ (4)コンクシェル
△ (14)フィールシンパシー
結論 馬連6-13,3,1,2,7,4,14 (10:10:10:10:4:3:3) 複勝6 (50)
■有力馬と評価ポイント
◎ (6)マスクトディーヴァ
前哨戦である阪神牝馬Sの覇者。阪神牝馬Sでは1番枠からまずまずのスタートを切り、コントロールして2列目の最内を追走。道中は先頭列のゴールドエクリプスの後ろで進め、3角では3列目の最内。3~4角で最短距離を通り、直線序盤で外に誘導。やや窮屈な馬の間を捌いたところで、鞍上が手綱を落とすアクシデントがあり、そこで外へ外へと行ったが、上手く内に切り返し、ラスト1Fで外から迫る(5)ウンブライルを振り切って半馬身差で勝利した。
マスクトディーヴァは昨秋のローズS、秋華賞ともに最後の直線で中団列から一気に伸びて1着、2着と好走したように末脚抜群。秋華賞では向上面で中団馬群の中目で動けずにやや位置が下がり、4角でもかなり遅れて外に誘導と、仕掛けにロスがありながらも、リバティアイランドに優る上がり3Fタイムを記録している。
このように、これまでは出遅れや前半で良い位置が取れず、瞬発力頼みのレースしかできなかったのが、前走では出遅れず、スムーズに先行して結果も出した。ここへ来て一段階上の力をつけた感がある。前走は前々走の東京新聞杯で大出遅れした後の一戦かつ最内枠だったこともあり、積極的に出してレースの流れに乗せることにこだわって乗られていたが、今回も好位の直後くらいで進めて末脚を引き出す形なら、勝ち負けになる可能性が高い。
○ (13)モリアーナ
昨年の紫苑S覇者。同レースでは2番枠からまずまずのスタートだったが、二の脚ひと息で最後方まで下げた。逃げ馬がペースを引き上げたことで隊列が縦長となり、道中では後方2列目付近。3角では前にいた馬たちが苦しくなって下がってきて、3~4角内目から4角で中目を縫うように上がったが、直線序盤でもまだ中団列。ラスト1Fでも先頭と6馬身あったが、そこから一気に詰め切って半馬身差で完勝した。このラスト1Fの伸びは非凡で、かなりインパクトがあった。
昨年のNHKマイルC以来のマイル戦となった前走阪神牝馬Sでは3着。6番枠から出遅れ、押して行ったが最後方に下がってしまった。道中で後方内目のスペースを拾って後方2列目まで押し上げ、3~4角では中目を通したが、4角で前が壁に。直線序盤で外に誘導し、進路を確保して追われると、そこからしぶとく伸びて3列目付近まで上がった。ラスト1Fで2着(5)ウンブライルとの差は詰め切れなかったが、シングザットソングとの3着争いはハナ差で制した。
前走は前々走で芝2200m戦を後方からレースをした後の一戦で、かなりテンに置かれ、4角では進路もなく、やや仕掛けが遅れてしまった。それでも末脚は確かで最速タイの上がり3Fタイムで3着に善戦している。今回は前走でマイル戦を使ったことで、マイルの流れに慣れ、前走ほど置かれないと見ている。それでも13番枠となると、◎(6)マスクトディーヴァよりも後ろの後方からの追走になるだろう。前走時よりも軽い芝の芝1600m戦となると勝ち切るのは難しそうだが、2、3着なら十分ありそうだ。
▲ (3)スタニングローズ
一昨年の秋華賞ではスターズオンアースの三冠を阻止して優勝した馬。同レースでは7番枠からまずまずのスタートを切って、そこからコントロールしながら好位直後の中目を追走。道中で前にスペースを作り、内と外を両睨みで進め、3~4角でそのスペースをじわっと詰めると4角では外を選択し直線へ。序盤で追い出されると先頭付近まで上がり、ラスト1Fで抜け出した。最後は内からスターズオンアース、外から(10)ナミュールに迫られたが振り切って半馬身差で勝利した。
スタニングローズは一昨年のオークス時に「マイルではキレ負けるので、距離延長◎」ということで、当時穴馬に推奨し、その期待に応えてくれた馬。もちろん、マイルでも前に行って後続の決め手を封じる作戦も可能だが、本馬は好スタートからハナに立ったデイリー杯2歳Sでも、道中で無理に抑えハナを譲ってキレ負けする、逃げない競馬をしていた。これは距離が延びる舞台で期待するしかないと当時は見ていた。
しかしそれが、長期休養明けの前走大阪杯ではまずまずのスタートながら、二の脚の速さでハナを主張して逃げる競馬ができた。結果的には、スタミナが不足しがちな長期休養明けでローシャムパークが捲ってくるタフな流れで息が持たなかったが、ひと叩きされたことで息持ちが違ってくるだろう。
今回のメンバーでマイル戦となるとさすがに逃げるまでは厳しいが、3番枠を生かして先行することは可能だ。実績馬の大半が末脚型という状況下で、前に行ってしぶとさを生かせば、一発が期待できる。
△ (1)ライラック
一昨年のエリザベス女王杯では2着同着だった馬。同レースでは15番枠から出遅れ、ある程度は促されたが、結局、後方を追走。道中も後方馬群の外目で進めて、3角では前のジェラルディーナを徹底マーク。4角で同馬が仕掛けると、それを追い駆けて中団外まで上がり、直線序盤でしぶとく伸びて2列目付近。最後までジェラルディーナとの差は詰められなかったが、ラスト1Fで先頭に立ったウインマリリンに並びかけての同着だった。
このエリザベス女王杯は外差し有利の馬場と展開に恵まれた2着だったが、展開の後押しがあればそれくらいは走れるということ。昨年のエリザベス女王杯でも前がやや有利な流れを中団馬群の中目を追走し、3~4角で包まれて仕掛けが遅れる不利がありながらも4着に善戦している。
このようにライラックは中長距離がベストだが、昨年の東京芝1800mの府中牝馬Sではディヴィーナが逃げ切るかなりのスローペースを、序盤は2列目の中目付近、2角で置かれて3列目に下がったが、積極的な恵奈で最後の直線でしぶとく伸び続けて3着に善戦している。また、前走の阪神牝馬Sでも大外11番枠で終始好位の外々を追走する形となり10着に敗れているが、好位は取れていた。今回は1番枠。枠の利を活かせば、ある程度、前の位置を取り、ロスのない立ち回りができる可能性もある。現時点で9~11人気と人気もないので一考したい。
△ (2)フィアスプライド
前々走のターコイズSで初重賞制覇を達成した馬。前々走は6番枠からやや出遅れたが、内枠だったこともあり、押して挽回し好位の内目を追走。道中では前のスペースを維持して3列目付近の内目で3角へ。4角で前のスペースを潰して出口で外に誘導すると、直線序盤ですっと伸びて2番手に上がり、先頭の(14)フィールシンパシーとは3/4差。ラスト1Fで踏ん張る同馬を捉えると、突き抜けて1馬身1/4差で勝利した。
フィアスプライドは3走前まで末脚を生かす競馬をしていたが、前々走は出遅れを楽に挽回しての先行策で勝利と、新たなる一面を見せた。ただし、前々走は前半3F35秒2と遅く、楽に先団へ取り付けた面がある。
前走の中山牝馬Sは13番枠からやや出遅れ、序盤は無理なく中団の外目を追走。向正面で徐々にペースが上がっていく展開の中、外から捲って先頭列に並びかけたが、3角で内の3頭に抵抗されて3頭分外を回ることになった。このため4角でやや手応えが怪しくなり、そのまま置かれて直線序盤では3列目。結果、9着に敗れた。
この前走はいわゆる「捲り失敗」。ペースが上がっていく展開では、捲り失敗のリスクは大きく、レース最速の11秒3を記録した地点(1000~1200m)で、大外をぶん回して脚を使ったことで崩れてしまった。かなり無謀なレースだったが、それでも勝ち馬(4)コンクシェルとの着差が0.4秒と大きく離されなかった辺りにフィアスプライドの充実度を感じさせる。
本馬はゲートも、二の脚もそこまで速くないので、よほど流れが遅くない限り先行するのは難しいが、前走で能力を出し切れていないのでここでの前進も可能。無理なく追走ができれば巻き返しが期待できる。
△ (7)ハーパー
昨年のオークス2着、秋華賞3着とクラシックではリバティアイランドの脇役だったが、古馬相手のエリザベス女王杯で3着と健闘した馬。そのエリザベス女王杯では3番枠からまずまずのスタートを切って、そこから外のアートハウスらを行かせて離れた3番手を追走。道中も前2頭が単騎という展開だったが、3角手前で先頭のアートハウスが謎のペースダウン。ここで楽に前に取り付いて3角。3~4角で最内を通し切って4角出口で仕掛けて馬場の良い外目に誘導。直線序盤は3番手だったが、伸びが地味で内の2頭にかわされ、5番手に下がる。しかし、そこからもじわじわ伸び続けて3/4+クビ差の3着となった。
このエリザベス女王杯は前有利の展開だったが、3番手追走かつ最短距離を立ち回って、最後の直線で馬場の良い外へ誘導する形。かなり上手く乗られていた。しかし、今回も先行勢が手薄の状況下で前に行けることは強み。前走の大阪杯はスタミナが不足しがちな休養明け。好位の外を追走していたが、向上面でローシャムパークが捲り、それに抵抗して動いて行くタフな流れで13着に大敗したが、ほと叩きされたことで息持ちが良くなり、変われる可能性がある。
△ (4)コンクシェル
昨夏の不知火特別(2勝クラス)で逃げて5馬身差で圧勝し、重賞でも通用する指数を記録した馬。その後は不振だったが、近走は3勝クラスの初音S、中山牝馬Sを連勝して再び軌道に乗ってきた。
前々走の初音Sは5番枠から好スタートを切り、押してハナを主張。外から競ってくるセンタースリールに抵抗して行ったが、最終的には同馬を行かせて2番手で折り合う。3角では同馬と3馬身差、4角では2馬身半ほどで直線へ。序盤でセンタースリールの外に誘導しながらもまだ仕掛けずに1馬身差。ラスト2Fで仕掛けてすっと抜け出すと2馬身半差のリードを奪い、ラスト1Fでそのまま突き抜けて3馬身差で完勝した。
前半3Fは35秒5とそこまで遅くはなかったが、楽に2番手を取って最後の直線でもうひと伸びしたことに強さを感じた。ここでも重賞レベルの指数を記録しており、この時点で、前走中山牝馬Sでも展開次第では通用するレベルの能力はあった。
その前走は前後半4F49秒6-47秒5のかなりスローペースで逃げる競馬。向正面で(2)フィアスプライドが捲ってきたことで、コンクシェルも3角から抵抗して仕掛けて行く形となった。そこまで楽な展開でもなかったが、ラスト1Fで甘くなり、2着ククナや3着シンリョクカに半馬身差まで詰め寄られての勝利だった。
前走である程度の能力を出し切っているだけに、ここへの大きな上昇は見込めないが、今回は実績馬の大半が末脚型という状況下で、前に行ける強みがある。同型馬の(14)フィールシンパシーが外枠を引いたのに対して、コンクシェルは4番枠と枠も良く、展開次第では2番手で折り合える点は強調材料だ。
△ (14)フィールシンパシー
前走の福島牝馬S2着馬。前走は14番枠からまずまずのスタートを切って、内の馬の出方をうかがいながら2列目の外を追走。しかし、向正面でペースが上がらず、外からタガノパッションに捲られそうになり、ここで2列目の内にいたラリュエルとともに先頭のウインピクシスの外まで位置を押し上げた。そのため3~4角で2頭分外を回る形になったが、4角で促して2番手で直線へ。ラスト1Fでウインピクシスを競り落として先頭に立ったが、最後にコスタボニータに差されてクビ差で惜敗した。
3角手前から仕掛けて、3~4角で外を回る競馬だったが、それでも2着に粘る、なかなか強い競馬だった。本馬はコンクシェルよりもゲートも二の脚も速い点が魅力。2列目でも問題ないが、今回のメンバーを相手に外々を回るロスのある競馬になると苦しいものがある。そういう意味で今回の14番枠は減点材料だが、実績上位馬の大半が末脚型という状況下で前に行ける強みがあるので警戒したい。
推定1番人気 (10)ナミュール
昨春のヴィクトリアMでは7着、安田記念では16着。ヴィクトリアMではスタート後に挟まれて好位の中目から中団まで押し下げられる不利、安田記念では中団中目で包まれてラスト2F目まで進路を作れずに仕掛けが遅れる不利があって着順を下げた面もあった。しかし、昨秋に復帰すると富士SとマイルCSを連勝。その後は世界の強豪相手に香港マイル3着、ドバイターフ2着と好走し、地力をつけたことを明確に証明した。
前走のドバイターフでは14番枠からやや出遅れ、コントロールして後方に下げて追走。道中でも後方2列目の外でじっと我慢して進めた。3~4角で後方中目から外に誘導し、位置を押し上げて4角出口で外へ。直線序盤で追われるとしぶとく伸びて2列目まで上がり、ラスト1Fで抜け出した勝ち馬のファクトゥールシュヴァルに食らいつき、短アタマ差まで迫った。
最後の直線で中団の外から早めに動いた10番人気のファクトゥールシュヴァルとナミュールのワンツー決着だったように、3~4角のペースダウンでダノンベルーガ、ドウデュースら内の馬が包まれて直線序盤で前が壁になり、仕掛けが遅れる不利があった。しかし、ラスト3Fおおよそ11秒8-11秒2-11秒3と加速する流れを後方外からしぶとく伸び続けて、勝ち馬に短アタマ差まで迫った内容は高評価できる。
前走の走りがここでも再現できれば好走できるが、今回は前走で能力を出し切った後の一戦となるだけに、その疲れが心配である。あのアーモンドアイでさえもドバイターフ優勝後の安田記念では外枠から出遅れて挟まれ、3着に敗れていることを考えると、今回のナミュールは妙味的にも評価を下げるべきだろう。能力が高いので消すまでは至らずとも、近4走と比べると分が悪い。
推定2番人気 (5)ウンブライル
前哨戦となる阪神牝馬Sの2着馬。前走の阪神牝馬Sでは9番枠からやや出遅れ。そこからじわっと中団中目まで挽回し、コントロールしながら追走。道中は中団のやや後方で進め、3~4角では外に誘導し4角出口へ。序盤で2列目まで上がり、ラスト1Fでもしぶとく伸びると、勝ち馬(6)マスクトディーヴァに半馬身差まで迫った。
ウンブライルは前走で自己最高指数を記録。ただし、休養明けの前々走となる東京新聞杯を馬体重22kg増と太め残りで出走し、その後一気に馬体を絞り込んでのもの。前走が勝負だった感がとても強い。本馬は今回と同舞台となる昨春のNHKマイルCで2着の実績があるが、時計の掛かる馬場で前後半4F46秒3-47秒5のややハイペースを利して追い込んだもの。相手強化のここでは狙いにくい。