■3~4角で最内を立ち回れる馬が活躍
過去10年(うち阪神開催を除く)の天皇賞(春)では、逃げて3着以内に入ったのは16年1着キタサンブラックのみ。一方、追込みでの3着以内もかなりのハイペースとなった14年の2着馬ウインバリアシオンぐらい。京都芝3200mは良馬場で馬場が高速化するほどスローペースで流れて3角の下り坂からのペースアップが主流だ。
前半は後方から進めても良いが、2周目の3角で7番手以内にいないと勝ち負けするのは難しく、先行~好位の直後が6勝(2着は7回)している。また3~4角で最内を立ち回れる馬が活躍しており、同期間では馬番1番の馬が3勝している。
本日2番 京都11R 天皇賞(春) 芝3200m
◎ (9)シルヴァーソニック
○ (10)サヴォーナ
▲ (5)ブローザホーン
注 (14)テーオーロイヤル
△ (7)タスティエーラ
△ (12)ドゥレッツァ
△ (6)ディープボンド
△ (16)チャックネイト
結論 馬連9-10,5,14,7,13,6,16 (10:10:10:8:8:2:2) 複勝9 (50)
■有力馬と評価ポイント
◎ (9)シルヴァーソニック
昨年暮れのステイヤーズSで休養明けながら勝利すると、次走は海外重賞のレッドシーターフハンデキャップを勝利。そして昨年の天皇賞(春)で3着と、年齢を重ねながら持久力が強化され、地力を付けていることを感じさせた。
昨年の天皇賞(春)は16番枠ということもあり、無理なく中団後方の外目11番手を追走。スタンド前では動かず、向正面でボルドグフーシュの後ろ中団やや後方10番手まで上がって同馬をマークし、4角で同馬の外に誘導して直線へ。追われるとじわじわ伸び始め、最後は2着ディープボンドから1馬身差の3着と好走した。
前記の天皇賞(春)は向正面以降はペースが緩んでおり、そこでボルドグフーシュの後ろで満足せず、好位の直後7番手くらいまで押し上げていければ2着はあった内容。今回は鞍上がコスモキュランダで弥生賞を捲り勝ちしたM.デムーロ騎手。序盤は後方でもペースが緩んだ隙を見計らって進出し、3角では好位に上がるような競馬をしてくれる気がする。
前走の阪神大賞典こそ11着と崩れているが、スタミナが不足しがちな休養明け、それも11ヵ月にも及ぶ長期休養明けで通用する馬はそういない。実際にシルヴァーソニックも序盤は中団外目からで、スタンド前ではディープボンドを意識するように好位の外まで上がって、向正面で同馬をマークするように進めていたが、3角てかなり外を回るとそこで息を切らしたようで、ジリジリ後退してしまった。しかし、今回は休養明け2戦目。実戦を一度使われたことで、スタミナの復活が見込める。ここでの前進を期待したい。
○ (10)サヴォーナ
昨夏の福島芝2600m戦を逃げ切り、次走の神戸新聞杯では超スローペースで逃げるファントムシーフを2列目の最内からマークし、最後はサトノグランツからアタマ差2着。芝の長距離で上昇を見せた。続く菊花賞では5着だったが、やや出遅れ、序盤で後方馬群に包まれて位置を下げ、そこから好位の外目まで挽回していくという中身のある内容だった。
前々走の日経新春杯は13番枠からやや出遅れたが、二の脚で思い切って先行した。1角で内に入れて、向正面で2列目最内を追走。3~4角では先頭のディアスティマの後ろから楽な手応えで最短距離を通った。4角では進路がなく仕掛けを待たされたが、直線序盤で前が開いて追い出されると内から先頭のサトノグランツに並びかけ、ラスト1Fでかわしたところで外からブローザホーンに差された。1馬身差の2着だった。
前走はタフな馬場でかなりのハイペースで前へ行った馬には厳しい流れ。上位入線馬の中では前半でもっとも前の位置でレースを進めており、一番強い内容だったと言える。
前走の阪神大賞典は五分のスタートを切ったが、なぜか前には行かずに、中団中目でディープボンドをマークしながら進める形。このため向正面やコーナーで包まれ、直線序盤でもやや窮屈になった。最後までしぶとい粘りを見せてはいたが、結果6着だった。
前走は池添謙一騎手ならではの感性の競馬で不可解な位置取りだったが、休養明け好走の疲れが出ており、無理をさせたくないという騎手心理もあったのかもしれない、いずれにしろ、能力を出し切っての敗戦ではないので、前走の敗戦で人気薄となったここは積極的に狙いたい。
▲ (5)ブローザホーン
タフな馬場で行われた昨夏の札幌日経OPの覇者。同レースでは6番枠から五分のスタートだったが、かなり押すとスピードが乗り、序盤は単独4番手を追走。道中では折り合いを欠きながら単独2番手に上がった。3角手前でアケルナルスターが捲ってきたのでそれに抵抗して動いた。3角ではもう先頭、4角で仕掛けて後続を引き離し、ラスト1F地点では後続と4馬身差。ラスト1Fで突き抜けて6馬身差で圧勝した。かなりのスタミナがある内容だった。
心房細動で競走中止した後の一戦となる前々走の日経新春杯は、前後半5F58秒3-60秒9とかなりのハイペースで、前が崩れ、差し追込み馬有利の展開に。ブローザホーンは中団外から差し切って優勝した。心房細動は一過性のもので大半は復活するが、重賞クラスだと次走では必ずと言っていいほど指数を下げる傾向がある。ブローザホーンも札幌日経OPから指数がダウンした。
前走の阪神大賞典は一転して、前半5F63秒7-中盤5F65秒2-後半5F57秒9の超スローペース。3番手の(14)テーオーロイヤルをマークしながら好位の中目で進めていたが、やや折り合いに苦労したこともあり、3~4角で最短距離を通してラスト1Fで内から捌いて上がってきたワープスピードをクビ差かわせずの3着だった。
ここではテーオーロイヤルには5馬身差をつけられており完敗だったが、そこまで差が開いてしまったのは、ブローザホーンが上がりの速い決着を得意としていないのもあるだろう。時計が掛かる馬場で、速い流れがベストのタイプ。今の京都だとひと雨降って、逃げ馬にペースを引き上げてもらいたいところだが、今回は大逃げ馬が不在。京都芝3200mのような上がりが速くなる決着は得意ではないが、不向きな前走で3着だったことを考えると、ここも軽視はできない。
△ (14)テーオーロイヤル
4連勝で2022年のダイヤモンドSを優勝し、次走の阪神で行われた天皇賞(春)でも3着と好走した。以降は中距離戦を使われて不振になった時期もあったが、昨秋に骨折明けから復帰し長距離路線を使われると、ステイヤーズSで2着、ダイヤモンドS、阪神大賞典と連勝し、着実に指数を上昇させた。
前走の阪神大賞典は6番枠からまずまずのスタートを切り、前2頭を追いかけて3、4番手の内を確保した。スタンド前でも前にスペースを作りながら単独3番手を追走し、スタンド前では2列目の内。2周目の3角では前2頭を最短距離から楽に追いかけ、4角出口でしっかり進路を取った。直線で並ぶ間もなくすっと抜け出して1馬身半差。ラスト1Fで突き抜けて5馬身差で完勝した。
前走は2周目の3角から一気にペースが上がった中で、最短距離を通 ったことも勝因ではあるが、それを考慮してもとても強かった。今回は前走で走り過ぎた疲れが気になる。ただ、過去にディープボンドが21年の阪神大賞典を圧勝して自己最高指数を記録し、次走の天皇賞(春)で指数を下げながらも2着に善戦したように、この勢いは軽視できないものがある。
△ (7)タスティエーラ
昨年の皐月賞2着、日本ダービー1着、菊花賞2着とクラシックで活躍した馬。菊花賞は7番枠から五分のスタート。そこからコントロールして折り合い重視で中団やや前目の内を追走。1周目スタンド前ではやや外目を通したが、向正面でトップナイフらが外から捲ったことで包まれ動けずに位置が下がる。3~4角は中団外目で多少ロスもあったが、直線序盤では1頭だけ鋭く伸びて2列目まで上がる。ラスト1Fで先頭のドゥレッツァとは2馬身半差くらいだったが、そこからやや差を広げられ、3馬身半差の2着だった。
前々走の有馬記念では6着。13番枠からやや出遅れそこからかなり押して行くが、前半が速くてそこまで前に行けずに中団中目からの追走。スタンド前からはスルーセブンシーズをマークし折り合い重視で進めていたが、3角手前で外からヒートオンビートが捲り気味に上がったことでスルーセブンシーズとともに包まれてしまう。4角で外に出してそこから追い出されたが反応ひと息。直線序盤で外からジャスティンパレスに前に入られ、ブレーキをかけ後退。そこから再び追われるとさすがの伸びは見せたが、結果は6着完敗だった。
昨年のクラシック上位馬が古馬GⅠで通用していないことから、現4歳のレベルが疑問視されている。実際にレベルはあまり高くなかったが、タスティエーラは有馬記念もズムーズではなかったが、菊花賞時は2周目の向上面で各馬が位置を上げていく中で、位置が下がってしまう決定的な不利があった。
その不利はもっとも仕掛けどころが難しいとされている淀の3000m、3200mの乗り方を理解していない短期免許の外国人騎手、モレイラ騎手だから起こってしまったこととも言える。個人的にこの距離で勝ち負けを意識した場合、外国人騎手を乗せるのは減点材料と見ている。今回は休養明けで距離不足の大阪杯を叩いての前進が見込めるが、菊花賞時のように折り合いに専念する乗り方だと難しいが、マジックマンの修正力の早さに賭けてみたい。
△ (12)ドゥレッツァ
未勝利勝ちから破竹の5連勝で、前々走の菊花賞を制した上がり馬。前々走は大外17番枠からスタートし、そこから先行して1周目の3角手前でじわっとハナを取り切った。1~2角で1F13秒台までぺースを落とし、3角まででパクスオトマニカらを行かせた。3~4角ではペースアップするなかで最短距離を通り4角で前2頭の間を縫って外に出し、先頭のリビアングラスと3/4差で直線へ。ラスト1F手前で同馬をかわし、外から迫る△(7)タスティエーラも突き放して3馬身半差で完勝した。
京都芝の3000m越えのレースは3角の下り坂から一気にペースが上がることが大半で、ここで好位にいないと勝ち負けに持ち込むのは難しい。ドゥレッツァは大外枠ながら3角までのレース運びが完璧だった。
休養明けの前走の金鯱賞は2着。前走は序盤の進みが悪く、道中も促されてやや忙しい追走だった。向正面でペースが緩み勝ち馬プログノーシスとともに位置を押し上げたが、3角手前でプログノーシスに先制され、3~4角で包まれて仕掛けが遅れた。これが5馬身も差をつけられた理由だ。ドゥレッツァの反応が甘かった面もある。前半で置かれたことも含めて、さすがに芝2000mは忙しいようだ。
今回はベストの淀の長丁場。前進はあると見ているが、前走のレースぶりからここで完調にもっていけるのかという不安がある。またリズム重視かつ馬優先で位置を取っていく戸崎圭太騎手に前々走のようなレースを求めるのもどうか。前走で短い距離を使われているので、リズム重視でも好位かその直後くらいの位置は取れそうだが、2周目の3角では菊花賞時よりも後ろの可能性が高い。過大評価はできないが、軽視も禁物だ。
△ (6)ディープボンド
天皇賞(春)で3年連続2着。阪神大賞典でも2021年、2022年と二連覇しているステイヤー。特に21年の阪神大賞典は重馬場で2着、3着に後方1番手、2番手のユーキャンスマイル、ナムラドノヴァンが台頭する追込有利のレースとなったが、ディープボンドは12番枠から好スタートを切って、そこからじわっと控えて好位の外4番手を追走。2周目の3~4角で前との差を詰めて3番手に上がり、直線序盤で2番手から早め先頭に立ったシロニイをかわし、ラスト1Fでは1馬身差のリード、そこからさらに差を広げて5馬身差で圧勝した。
レースが緩みなく流れで追い込み馬が台頭するレースを好位から押し切れたのは、豊富なスタミナがあればこそのコテコテのステイヤーである。ディープボンドは昨秋の京都大賞典でも休養明けでいきなり3着と、大きな衰えを感じさせない。前走の有馬記念はタイトルボルダーの逃げで前半3Fが36秒2と速かったのもあるが、ブリンカーが裏目となったようで、押しても位置が下がってスタミナを生かすレースが全くできずの15着大敗。
前走の阪神大賞典は12番枠からまずまずのスタートを切って、そこから軽く促して楽に先行して3番手の外。しかし、スタンド前でも2番手のディアスティマを見なが3列目の外。向上面でも動かず、3角で一気にペースが上がってそこで必死に追い出す。4角で外に誘導して2列目に並びかけて直線へ。序盤で追い出されたが伸び切れずに一気にテーオーロイヤルに突き抜けれ、ラスト1Fで甘くなって7着に敗れた。
前走は前半5F63秒7-中盤5F65秒2-後半5F57秒9の超スローペース。スピード不足のディープボンドは3角までに先頭の競馬をしていれば、また違う結果になっていたと推測される。ディープボンドは例えるなら芝のテリオスベル版。ただ前の位置を取るのではなく自分の能力を常に出し切るように乗ってくれればまだチャンスはあると見ている。幸英明騎手にそれを求めるならのは難しいかもしれないが、現時点で6番人気なら食指が動く。
△ (16)チャックネイト
一昨年の春にノド鳴り手術をし、そこから復帰するとそこからは右肩上がり。重賞初挑戦となった前々走のアルゼンチン共和国杯では4角番枠からまずまずのスタートを切って好位を狙って行ったが、最初の4角で包まれて中団馬群の中目を追走。しばらく包まれていたが4角で外に誘導する。それでも進路がなく直線序盤で外に誘導するロスがある競馬ながら、じわじわ伸びて3着同着となった。進路を確保してから、伸び始めは地味だったが、ラスト1Fではしっかり伸びていた。
前走の不良馬場で行われたAJCCでは11番枠からまずまずのスタートだったが、思い切った先行策で2列目の外まで進出した。3~4角では先頭列の外、ショウナンバシットの後ろを追走し、4角で外から上がったボッケリーニに併せて直線へ。序盤でボッケリーニに前に出られて3位争いとなったが、ラスト1Fで差し返してハナ差で勝利した。
チャックネイトは重馬場の六社Sで3勝クラスを突破しているように、道悪が得意で最後までしぶとく伸びるほどのスタミナがある。しかし、今回はスタミナが不足しがちな休養明けで大幅距離延長。まして前走は不良馬場での優勝で消耗度の高いレースだった。緒戦から全力全開は考えにくいが、チャックネイトの勢いは侮れなものがある。この中間でさらに成長していればの条件はつくが、現時点で8番人気と人気がないので買い目に加えた。
推定3番人気 (1)サリエラ
昨年の目黒記念は超スローから3~4角でペースが上がって前と内が有利な展開となった。サリエラは3~4角で中団の外目からロスを作りながら進出。しかし、直線序盤で進路を作れず外に誘導するのにやや苦労した。進路を確保したのはラスト2F手前。そこから追い出されると徐々に伸び始め、ラスト1Fでは一番伸びている。このレースぶりから長距離型と見ていたが、やはり長距離戦で花開いた。
前走のダイヤモンドSは8番枠から五分のスタートを切って、そこからはコントロールし好位の外目を追走した。2番手のグランスラムアスクの後ろについてからはペースが上がらず4角まで我慢し、直線序盤でスパートをかけた。そこで外から上がったテーオーロイヤルに並ばれ前に出られた。ラスト2F以降はしぶとく抵抗したが、最終的にはクビ差の2着だった。
サリエラはエンジンが掛かってからが勝負の馬。前走はエリザベス女王杯からの大幅距離延長で、鞍上が意図的に仕掛けを遅らせた面があったが、最後までテーオーロイヤルにしぶとく食らいついていた内容から、3~4角からエンジンをかけていけば逆転の可能性もあったと見ている。ただし、当時のテーオーロイヤルは休養明けであり、本来の能力を出し切れていないのも事実。今回は前走で自己最高指数を記録した後の一戦で、疲れが出てしまう危険性もあり、そのリスクに見合う人気ではないので評価を下げた。