■小倉開催時ほどペースが上がらない可能性が高い
今年は小倉芝1200mから中京芝1200mに舞台を変更して実施される。小倉芝1200mはコース最高部の2角ポケットからスタートして、すぐに下り坂となるため、ダッシュが付きやすく、非常にテンが速くなりやすい。また3~4角もスパイラルカーブで下りとなっているため、スピードが落ちにくく、ハイペースになりやすいのが特徴だ。
一方、中京芝1200mは向正面の半ばからスタートし、序盤は緩やかな上り坂。その後は下り坂が続くが、3、4角のコーナーワークでそこまでペースが上がらない。結果、最後の直線での勝負の比率が高くなり、逃げ、先行馬が活躍しているという状況だ。
今回も芝1200mの新馬戦、未勝利戦を逃げ切り勝ちした馬が多数出走しており、それなりにペースは上がるとは見ているが、小倉開催時ほどペースが上がらないだろう。小倉開催時の過去10年の逃げ馬の3着以内はゼロだが、中京ならば逃げ馬の食い込みがあっても不思議ない。
本日3番 中京11R 小倉2歳S 芝1200m
◎ (3)アブキールベイ
○ (13)エンドレスサマー
▲ (8)エイシンワンド
△ (4)レイピア
△ (5)ポートデラメール
△ (9)タマモティーカップ
△ (10)アーリントンロウ
△ (12)エイヨーアメジスト
結論 馬連3-13,8,4,5,9,10,12 (13:12:5:5:5:5:5) 複勝3 (50)
■有力馬と評価ポイント
◎ (3)アブキールベイ
前走の福島芝1200mの新馬戦では、大外11番枠(12番枠は除外)から五分のスタートを切ったが、外へ逃げようとして大きく膨らんだ。そこから徐々に内に寄せていき、3列目の外を追走した。3~4角半ばで勢いよく進出して前との差を詰め、2列目の外付近で直線へ。直線では外から回転の速いフットワークでぐんぐん伸びて4番手に上がり、ラスト1Fで前をしっかり捉えて半馬身差で勝利した。
走破タイムは1分11秒0と平凡、これは後に疲れを残さない意味で悪くない。上がり3Fタイム35秒0もまあまあ良い。驚かされたのはラスト2F12秒1-11秒3というラップで、ラスト1Fで0.8秒も急加速していることだ。ラップタイムの計測法が以前と変わってしまっており、昨秋以降は以前の数字とのすり合わせに悩んできた。以前の新馬戦ならラスト2F同ラップでフィニッシュできていればほぼOP、重賞級と評価できた。
昨秋以降は以前と比較してラスト1Fを0.3秒~0.4秒ほどマイナス評価で良いかと考えたが、それでは甘く、どうやらマイナス0.5秒評価くらいが妥当のようだと考えがまとまりつつある。そこにきて今回ラスト2F12秒1-11秒3が出現。今回は芝1200mなので芝1800m、2000mと比較すれば同じ数字でも割引評価をすべきではあるが、それでも速い。さてアブキールベイが今後どのような成績を残していくか、興味深いところだ。
○ (13)エンドレスサマー
前走の函館2歳Sの3着馬。前走は1番枠から五分のスタートを切って、そこから先行し、2列目の内目まで進出していく。3~4角でも2列目の最内で進めて、逃げるニシノラヴァンダの後ろから直線へ。序盤の伸びはひと息だが、ラスト1Fでニシノラヴァンダの外に誘導して差を詰めたが、外からサトノカルナバルに差されて1馬身1/4差、ニシノラヴァンダとはアタマ差の3着だった。
エンドレスサマーは函館芝1200mの新馬戦で、好スタート、好ダッシュでハナを主張し、息を入れながら逃げて5馬身差で圧勝。記録した指数はクラス上でも通用する今夏の函館新馬戦ではNO.1のもの。しかし、新馬戦で強い勝ち方をした馬がそのあとの疲労から上昇力を欠く場合も多く、前走の函館2歳Sでは▲評価だった。しかし、前走ではわずかではあるが、指数を上昇させて3着に善戦した。
この時期の2歳戦はキャリア1戦馬よりも2戦馬とキャリアが豊富な馬のほうが有利。また前走で折り合う競馬にも対応したことは好ましく、大外13番枠の今回は内の(4)レイピアや(11)ジャスパーディビの出方を窺いながら進出していけるはず。前走時が中1周の強行ローテーションだったことは不安な材料だが、総合的に見た場合の弱点が少なく対抗評価とした。
▲ (8)エイシンワンド
前走の中京芝1200mの新馬戦では、12番枠からやや出遅れたが、二の脚が速く2列目の外まで挽回。3角手前で2番手に上がり、3~4角ではクラスペディアのマイペースにつき合って脚をやや溜めた。残り300mで同馬が後続を引き離しにかかると、エイシンワンドはそれを目標に仕掛けた。ラスト1Fで後続を引き離していき、最後にクラスペディアを差し切り1馬身1/4差。3、4着には7馬身1/4差引き離しての実質完勝だった。
このレースは芝1200m新馬戦のわりには道中のペースが遅く、走破タイム自体が遅い決着となった。やや出遅れながらも、しっかりと絶好ポジションを取りにいったあたりが、さすが中京芝1200マイスターの幸英明騎手といった感じだ。
上手く乗っていたが、前走時のペースが遅く、走破タイム自体が遅い決着だったことは、今後に向けて疲れが少なくすむので良いこと。またただ平凡なだけではなく、なかなか高評価できる上がり3Fタイム33秒5を記録しており、それなりの素質があることは証明されている。1番人気が相応しいかはともかく、今回での大きな上昇力が見込める馬ではある。
△ (4)レイピア
小倉芝1200mの未勝利戦では、6番枠から五分のスタートを切って、ダッシュ良くハナを主張。そのまま緩みないペースを刻んだが、無理にスピードを出している感じではなく、スイスイと逃げていた。その脚色は最後の直線でも衰えず、序盤で1馬身ほどの差をつけ、ラスト1Fで2馬身半差まで広げ、3着馬には7馬身半差をつけて押し切った。
前々走の京都芝1400mの新馬戦ではやや出遅れて、そこから押してポジションを取りに行った後に折り合いを欠き、ブレーキをかける場面があった。そんなロスがあったなか、馬場がやや悪化した好位の内目から3~4角で最短距離を通って勝ちにいく競馬。直線では外から差してきた馬を差し返し2着した内容がとても濃かった。
前走は一転してスタートを決め、優秀な走破タイムでの逃げ切り勝ち。1クラス上で通用する指数を記録した。やはり前走でかなりのロスがありながらも2着を死守したのは、能力の高さを示すものだった。
新馬戦で好指数勝ちした馬はどうしても疲れが残りやすく、そのあと順当な上昇が計算しにくいところもある。しかし、デビュー2戦目での好指数記録は、新馬戦ほどダメージが残らないだけにある程度の上昇を計算しやすい。この指数(※)なら何戦か使ううちにOP、重賞で活躍するだろう。
※○(13)エンドレスサマーの新馬戦と同等。
△ (5)ポートデラメール
京都芝1200mの新馬戦は大外7番枠からやや出遅れ、そこから促されてもあまり加速せず、コントロールしながら徐々に前との差を詰めていった。3、4角ともにやや外に張り気味で外々を回る形。苦しいかと思われる瞬間もあったが、直線序盤でオンザブルースカイの後ろから追い出されるとフットワークが大きくなり、グングンと伸びた。ラスト1Fで前3頭をかわし、最後にオンザブルースカイをきっちりアタマ差捉えたところでゴールした。
ラスト2F11秒3-11秒3は悪くなく、上がり3Fタイム33秒8はこの日の京都芝で古馬を含めて2位タイの数字。これは高く評価できる。
ただし、この馬は半兄に芝中距離で活躍中のアルナシームがいる血統。兄同様に本馬もエンジンが掛かってからが強く、芝中距離以上で良さが出そうな走りだった。芝1200mがベストのようには思えないが、素質の高さで突破する可能性も十分ある。
△ (9)タマモティーカップ
小倉芝1200mの新馬戦では、4番枠から五分のスタートだったが、軽く促されて前の2頭の外3番手を追走。3~4角の外から徐々に前2頭との差を詰めて直線へ。序盤でセルヴァンスが抜け出し、それを追いかけた。この時点で同馬とは1馬身半差。その差がなかなか詰まらなかったが、ゴール寸前で差し切りクビ差で勝利した。
このレースは芝1200mの新馬戦のわりに6頭立てと少頭数。こういった少頭数の新馬戦は疲労度が小さいことも少なくなく、意外な大物が出ることもある。タマモティーカップの走破タイムは悪くない。3着馬に2馬身半としっかりした差をつけての勝利も評価できる。よって指数はマズマズ良いものとなった。
この馬が今後、面白いなと思わせる点は5月の遅生まれであること。2歳のこの時期に2、3月生まれと5月生まれでは大きな差がある。そのハンデがありながら新馬戦を悪くない内容で勝利した点は面白い。
母チャームポットは平凡なタイムで新馬戦勝ちしたあと、3歳時の紅梅S2着、最終的にはOPまで行った馬。本馬は母と比較して新馬戦を好時計勝ちしたことが疲労度の点でやや気になるが、遅生まれで成長力が期待できる。
△ (10)アーリントンロウ
新潟芝1400mの未勝利戦では8番枠からトップスタートを決めて、そのまま逃げた。道中、先行各馬が抑えていたが、3F通過33秒9、5F通過57秒4と数字を見るとかなりのペース。3~4角で外からダノンブランニューが並びかけてきたが、それでも仕掛けを我慢して直線へ。直線序盤で追われると後続に1馬身半差。ラスト1Fでもその差を守り切って1馬身3/4差で勝利した。
前々走の京都芝1200mの新馬戦では1番枠からやや出遅れ、促されてもなかなか加速せず、中団最内からの追走となった。4角で外に出されると直線で長く良い脚を使って2着に食い込むという、見どころのある競馬。しかし、デビュー2戦目の今回は前走から一転。トップスタートからの逃げ切りだった。
今回の走破タイム1分20秒6は2歳レコードタイムだが、超高速馬場によるところが大きく、指数は飛び抜けて優秀だったわけではない。むしろ新馬戦時の差し脚の方が印象に残る。差す競馬でもう一段階上の伸びに期待したい。
△ (12)エイヨーアメジスト
九州産馬限定の新馬戦の勝ち馬。その小倉芝1200mの新馬戦では、8番枠からロケットスタートを決めてハナを主張、主導権を握った。4角までは後続もついてきていたが、直線に入ると独走開始。直線序盤で5馬身差、ラスト1Fで9馬身まで差を広げて圧勝した。
この馬が新馬戦で記録した指数は一般の新馬戦でも十分に勝負になるもの。その新馬戦の走りが評価されて前走のひまわり賞では1番人気に支持されたが、2着に敗れた。
3回小倉1~3周目に行われる九州産馬限定の新馬戦からひまわり賞に出走するには、連闘~中2週の強行軍え挑む必要がある。2歳の若駒にこのローテーションは楽ではなく、エイヨーアメジストは新馬戦の疲れが出てしまったようだ。また前走は内のコウユーモジョカー、外のカシノアップビートと競り合う形で、苦しい展開でもあった。巻き返しに一考したい。