■台風一過で重馬場に
札幌は洋芝100%。洋芝は野芝よりも耐久性が低く、開催が進むにつれて時計が掛かる。このため札幌開催12日目で行われるこのレースはタフな馬場で行われることが多いが、今年は開催日が雨に見舞われることが少なく、先週の時点でも高速馬場だった。
しかし、最終週のここへ来て重馬場。先週の時点ではまだ内を通しても残せていたが、今週は外差し有利の傾向と見て予想したい。ただし、将来の重賞ウイナーと生涯1勝馬が集う2歳戦では、馬場状態に全く左右されないことも多い。
本日1番 札幌11R 札幌2歳S 芝2000m
◎ (8)ファイアンクランツ
○ (2)マジックサンズ
▲ (3)マテンロウサン
注 (11)アスクシュタイン
△ (4)ショウナンマクベス
△ (7)バセリーナ
△ (12)モンドデラモーレ
結論 馬連8-2,3,11,4,7,12 (15:10:10:5:5:5) 複勝8 (50)
■有力馬と評価ポイント
◎ (8)ファイアンクランツ
札幌芝1800mの新馬戦では5番枠からポンと好スタートを決めたが、そこから無理をさせずに3番手を追走。向正面ではやや掛かり気味だったが、我慢は利いていた。3角過ぎから進出して4角ではもう先頭に立つ強気な競馬。直線序盤では同馬をマークしていたロパシックが迫ってきたが、最後までしっかりと伸びて先頭を守り、1馬身差で勝利した。
ここでは3着馬に5馬身差を付けており強かった。上がり3Fタイムは上位2頭ともに34秒8。この日の札幌は雨の影響で芝は前半が重発表で、後半に向けて馬場が回復していく状況だった。重馬場で上がり3Fタイム34秒8は、メインのクイーンSで鬼脚を見せたボンドガールが34秒4だったことを考えるとかなり評価できる。
ラスト2Fは11秒8-11秒1。以前の計測法であったなら、重の札幌芝中距離でこの数字が出れば、将来のダービー馬当確と言えるものだった。現在は大幅割引とはなってしまうが、それでも重賞級と評価して良く、今回の本命馬とした。
○ (2)マジックサンズ
函館芝1800mの新馬戦では6番枠から出遅れたが、無理をせず中団馬群の後方外目を追走。前半3F38秒5、5F通過65秒4で時計の掛かる開催終盤の函館と言ってもさすがのスローペース。レースは団子状態で大きな動きのないまま3角へ。そこから3頭分外を回って進出開始、4角では2列目の外付近。直線では稍重馬場での加速比べとなったが、ラスト1Fで前2頭をかわして2馬身差で完勝した。
マジックサンズは2023年桜花賞2着馬コナコーストの半弟にあたる良血馬で、1番人気に支持されて人気に応えた。上がり3Fタイム35秒3はこの週の函館芝中距離では古馬を含めて最速で、これはかなり評価できる。ラスト2Fも11秒8-11秒6と、時計の掛かる馬場としては評価できるだろう。今回は瞬発力、豊富なスタミナを感じさせる勝利。時計の掛かる芝は合いそうだ。
▲ (3)マテンロウサン
札幌芝1800mの新馬戦では9番枠からはっきり出遅れたが、そこから気合いを入れられると好位に上がって行くスピードを見せた。道中は中団の外で折り合う競馬。このレースは前にいく2頭が飛ばし、本馬は3角では前と大きく離されてしまったが、そこから追撃開始。3~4角の中間で3番手に上がり、そこから前との差を一気に詰め直線ヘ。直線では脚色衰えることなく伸び続け、ラスト1Fで前2頭を捉えて4馬身差で圧勝した。
このレースは前にいった2頭が引っ張ったため、出走馬は能力を引き出されてしまった感があるのは減点材料だ。ただ本馬ははっきりと出遅れており、全能力を出し切ったわけではないだろう。今後の伸びしろが期待できそうだ。
本馬の母ミスパンテールはデビュー2戦目のチューリップ賞で休養明けながらいきなりの2着。その後も重賞4勝と大活躍した。母譲りの能力で今後の活躍を期待したい。
注 (11)アスクシュタイン
メンバー中で唯一の2勝馬。前走のコスモス賞では1番枠からトップスタートを決めてすんなりハナへ。1角で外に逃げようとして外に張ったが、2番手以下を離して逃げた。3~4角で後続が懸命に手を動かしながら迫ってきたが、本馬は4角でもまだ持ったまま。直線序盤で追われると、後続に3馬身半ほど差を広げ、ラスト1Fではもう独走。結果は7馬身差の圧勝だった。
2歳OPクラスでこの着差の勝利は相当な指数を記録したと思ったが、計算すると指数は特に優秀なわけではなく、他馬が全く走らなかったことによる独走劇だったようだ。
前々走の函館芝1800mの新馬戦は美しいフットワークを見せて好指数の逃げ切り勝ち。しかし、多少瞬発力不足かもしれないと見ていただけに、前々走以上に飛ばして逃げたことは好判断だった。
ただ旋回もまだ余裕を感じさせる走り。瞬発力が問われないほうがいいので時計の掛かる馬場は歓迎で、今回も11番枠からハナを主張する可能性が高い。内には同型馬の(4)ショウナンマクベスがいるが、同馬の鞍上は岩田康誠騎手なので、最終的には2列目に控える可能性は高い。しかし、同型馬が出走していることは良い材料ではなく、外差し有利の馬場でもあるここは割り引きたい。
△ (4)ショウナンマクベス
東京芝1600mの新馬戦では4番枠から好スタートを決め、気合をつけてハナへ。やや行きたがっていたが、鞍上の岩田康誠騎手がしっかりと折り合いをつけた。外からミンストレルソングにピッタリとマークされ楽な展開ではなかったが、半馬身差のリードを維持して最後の直線へ。直線序盤で馬場の良い中目に誘導したが、そこで内からも迫られた。失速してしまうかと思われたが、ラスト1Fで再び伸びて、ミンストレルソングを引き離した。最後は外差し勢が襲いかかってきたが、振り切って半馬身差で勝利した。
芝1600mの走破タイムは1分35秒6、上がり3Fタイムは34秒2、ラスト2F11秒3-11秒5。どれも強調できるほどの数字ではない。よって指数は高いものとはならなかった。
しかし、徹底マークを受けて、最後は二枚腰を見せたレース内容から着差以上の強さを感じさせた。またこの馬の本質が差しだった場合、逃げたことで能力を出し切れなかった可能性もある。前走指数は平凡だったが、折り合う競馬で真価を問いたい。
△ (7)バセリーナ
現2歳世代の芝部門最高指数で決着した前走のクローバー賞の3着馬。前走では2番枠から五分のスタート後に内の馬と接触したが、すぐに立て直して2列目の最内を追走。3~4角でも最短距離を通して、逃げ馬の後ろから直線へ。2列目の外から先に動いたミリオンローズとの差は広がり、外からニタモノドウシにもかわされたが、ラスト1Fで逃げ馬をかわし、上位2頭に迫った。
前走では勝ち馬ニタモノドウシとは4馬身半差、ミリオンローズとは2馬身半だったが、ミリオンローズは新馬戦で次走の未勝利戦で圧勝のエンブロイダリーやクライスレリアーナを撃破した馬。そこを考えると悪くない内容だった。ここへ来て地力強化が窺えるだけに警戒しておきたい。
△ (12)モンドデラモーレ
東京芝1600mの新馬戦では6番枠から五分のスタートだったが、行きっぷり良くハナ争いに加わっていった。そこからすっと控えて逃げ馬の後ろ3番手と理想的な位置で進めた。3~4角で最短距離を通り、直線序盤で逃げ馬の外に誘導。ラスト2Fで外から先に抜け出したワンモアスマイルを目標に仕掛けて先頭に立つと、ラスト1Fで差を広げて1馬身半差で完勝した。
上がり3Fタイムは33秒5、ラスト2Fは11秒2-11秒2と悪くないが、強烈なインパクトのある数字ではなかった。しかし、好位で上手く折り合って理想的な立ち回りができるレース巧者で、このタイプはスタミナのロスが少なく距離が延びて良さが出る馬が多い。現状ではやや指数不足だが、その後、休養させたことで成長している可能性がある。また時計の掛かる馬場も好ましく、警戒しておきたい。