■大井2000mはペースが二極端になりやすい
大井2000mはラスト2Fが最速になる年と、ラスト5Fが最速になる年がある。ラスト2Fは「最後の直線の前半地点」、ラスト5Fは「向上面」だ。
過去10年では2014年、16年、17年、20年、21年、23年はラスト2Fが最速。2015年、18年、19年はラスト5F最速。2022年のみラスト4F「3角」が最速だった。
向上面で最速が出現するというのは、マクリが発生しているということ。その場合は、サウンドトゥルーやオメガパフュームのような差し、追込馬が有利になり、逃げ、先行馬は簡単には残れない。
昨年はラスト2F最速。(2)ウィルソンテソーロが前半3F63秒0と遅いペースで逃げたが、マクリが発生しなかったことで逃げ切ることができた。
しかし、今年は(3)ラムジェットというマクリ馬がいる。まして前走時、前半5F56秒2でぶっ飛ばした(5)デルマソトガケも出走している。同馬は(7)クラウンプライドがハナを主張すれば逃げない可能性もあるが、何れにしても平均ペースよりは速くなりそうだ。
東京9R 東京大賞典 ダ2000m
◎ (10)ウシュバテソーロ
○ (3)ラムジェット
▲ (4)フォーエバーヤング
注 (2)ウィルソンテソーロ
△ (5)デルマソトガケ
△ (7)グランブリッジ
△ (9)クラウンプライド
結論 馬複3-10,4,2,5,7,9 (16:16:8:6:2:2) 複勝10 (50)
■有力馬と評価ポイント
◎ (10)ウシュバテソーロ
ダート路線に転向して12戦8勝。初ダートの3勝クラス横浜S(ダ2100m)優勝時に、超絶高速ダートではあったが、上がり3Fタイム「34秒0」の芝並みの数字を記録した。すぐに国内のJpnⅠ、GⅠを勝ち上がり、何れ海外のGⅠでも通用するようになると見ていたら、意外とアッサリ突破した。
2022年の東京大賞典、2023年の川崎記念を連勝で挑んだドバイワールドCでも優勝。ドバイワールドCでは8番枠からやや出遅れ、進みが悪く単独最後方からの追走。3~4角のペースダウンで馬群が凝縮すると、そこで後方列の外に取り付く。
3~4角の外から押し上げて勢いに乗せ、中団やや後方で直線へ。ラスト2Fで一気に2列目に上がり、ラスト1Fでアルジールスを差し切って2馬身3/4差で勝利した。
このレースは、パンサラッサの逃げで前半5F59秒25(日本の計測方法だとおおよそ58秒25)という芝並みのオーバーペースになったことで前が崩れ、展開に恵まれたもの。それにしても前記の横浜Sで見せたような強烈な末脚だった。
本馬はここで自己最高指数を記録。その次走の日本テレビ盃では、ドバイで好走した疲れとウィリアムバローズが逃げ切る前有利の流れになったことで本来の能力を出し切れず、1馬身差の2着に敗れた。
前走のBCクラシックでは10着に敗れたが、今年は米国屈指の時計の出るデルマ―で行われ、2分00秒78で決着。日本の計測方法だと2分を切ってくるタイムで、テンが遅くてダート馬になった本馬にはこなせない時計だった。近2走の馬柱の成績は汚れているが、大きく調子を落としているわけではなく、この中間の追い切りを見ても問題がない。今回は展開にも恵まれる可能性が高いだけに本命に推す。
○ (3)ラムジェット
これまで8戦5勝3着1回4着1回、唯一、馬券圏外(9着)に敗れたヤマボウシ賞は、4番枠から出遅れ、馬群の内目に入れて行ったら進みが悪くなり、9着に敗れたもの。またダ1400mではゲートも二の脚も遅く、追走に苦労していたが、1600m→1900m→2000mと距離を延ばして上昇した。
2走前の東京ダービーでは、6馬身差で圧勝。ここでは14番枠からやや出遅れたが、すぐに挽回して好位の外を確保。向上面では前2頭から離されないように軽く促しながら前2頭の外3番手を追走した。3~4角では前2頭にやや離されたが、直線序盤で追われると前2頭に並びかける。ラスト1Fで先頭に立つと、そこから後続を引き離して6馬身差で完勝した。
前走のジャパンダートダービーでは4着。ここでは4番枠から五分のスタートを切ったが、二の脚がやや遅く、押して中団からの追走。そこから外に誘導し、向上面でも押し進めて好位の外まで上がり、2列目の外で3角へ。3~4角で3頭分外を回ったこともあり5番手に下がってしまったが、最後の直線ではしぶとく伸び続け、ラスト1Fで苦しくなったカシマエスパーダ等をかわし、上位3頭から離れた4着を死守した。
2走前は稍重で前後半5F64秒0-62秒1のスローペースに対して、前走は前後半5F61秒6-後半62秒5の激流。前半から脚を使って、道中も押しながらの追走になったことで終いが甘くなった。本馬はJpnⅠ馬としてはスピード不足なので、ペースが速いと追走に苦労する面がある。しかし、2走前のようにスローペースになれば面白い。
▲ (4)フォーエバーヤング
2走前のジャパンダートクラシックの覇者。ここでは1番枠から好スタート後に躓いたが、すぐに立て直してじわっと先行。2列目内で外のサンライズジパングに蓋をされていたが1~2角で逃げ馬カシマエスパーダの外に出し切って2番手外を確保。そこからは無理なく、2番手の外を追走した。
3~4角でも外から絡んでくるサンライズジパングと一緒に仕掛けを待っていたが、そこでカシマエスパーダに1馬身半ほど離され、4角でしっかり仕掛けてここで追撃開始。同馬に並びかけて先頭に立つと、序盤ですっと伸びて2馬身差。ラスト1Fっで外から食らいつくミッキーファイトを問題とせず、1馬身1/4差で勝利した。
本馬が2走前に記録した指数はここではNO.2。この時の能力で走られたらここも勝ち負けになるだろう。しかし、今回は前走のBCクラシックを大目標にした後の一戦となる。
今春のケンタッキーダービーはテーオーパスワードが5着に健闘したように、前半5F59秒0(暫定で日本の計測方ならあと1秒速い)とハイペースではあるが、例年のケンタッキーダービーと比較をすると明確に遅く、日本馬向きの流れ。差してハナ+ハナ+ハナ差3着と好走しても、疲れが残るようなことはなかった。
しかし、前走のBCクラシックは前半5F56秒2(暫定で日本の計測方ならあと1秒速い)のゴリゴリのアメリカン競馬。1番枠から好スタートを決めてかなり押して2列目の内を追走し、3角で前の馬が失速してワンテンポ仕掛けを待ち、4角で激しく追い出す消耗度の高いレースになっている。差し、追い込み馬向きの流れを、先行策から強い内容ではあったが、さすがに疲れが出るだろう。
前走はかなり濃い内容の3着だったが、5着馬セニョールバスカドールは次走がGⅡでも5着に敗れているように、本馬も前走ほど走れないと見て評価を下げた。
注 (2)ウィルソンテソーロ
今秋のJBCクラシックで悲願のJpnⅠ制覇を達成した馬。JBCクラシックでは10番枠からまずまずのスタートを切ったが、二歩目で躓いて、無理はせずに中団外目を追走。スタンド前でもペースが遅かったが、そこで好位から2列目の中目を取って、逃げるウィリアムバローズの後ろから向正面に入る。ここで一気に仕掛けて2列目の内に誘導して3角へ。
3角で最内から一気に抜け出し、4角ではそのまま突き抜けて3馬身のリードを奪うと、直線でも4馬身、5馬身と差を広げる。ラストでメイショウハリオに1馬身ほど差を詰められたが、それでも余裕を持って4馬身差で圧勝した。
前走は前には行けなかったが、向上面でペースが落ちると一気に仕掛けて前の位置を取り、自己最高指数を記録。今回の出走馬の国内の近5走ではもっとも高い指数を記録した。
前走のチャンピオンズCでは2着。前走でも8番枠からやや出遅れてのめる場面。立て直して促したが中団までしか上がっていけず、中団外目で我慢させる。向上面では中団中目で包まれて動けず、外からのマクリもあり、相対的に位置を下げて後方中目で3角へ。
3~4角でも中団中目で進路を取れずに苦労していたが、直線序盤で外のセラフィックコールに体当たりして進路をこじ開ける。ラスト2F目で3列目に上がり、ラスト1Fで急追してレモンポップにハナ差まで迫った。
前走は川田騎手らしく、覚悟を持ったラフプレーで進路をこじ開けてきたが、それをやらなけれな2着はない内容だった。またレモンポップが逃げたことでそれなりにペースが上がったことも良かった。
しかし、近走でポジションを取りに行けなくなっているのは明確に減点。2番枠から無理に出していけば先週のゴールドCのスマイルウィのように終いが甘くなる危険性がある。逆に無理をさせなければ、角馬がひとつ外の▲(4)フォーエバーヤングをマークしていく中で、再び包まれたり、狭くなったりする危険性も伴う。
またこの2戦の激戦で疲れが出たのか、調教をセーブしている辺りも気掛かり。これで2番人気なら、評価を下げてこそ配当妙味が作れる。
△ (5)デルマソトガケ
昨年のBCクラシック2着馬。同レースでは4番枠からまずまずのスタートを切って、好位の中目。5通過が45秒73と相当な激流だったが、3~4角でも先頭列に大きく離されないようについていった。直線序盤で外に誘導し、早め先頭に立ったホワイトアバリオを追いかけてジリジリ2番手に上がると、ラスト1Fでもしぶとく伸び続けてホワイトアバリオに1馬身差まで迫った。
このレースでは◎(10)ウシュバテソーロが末脚不発したのもあるが、激流を前目の位置から踏ん張り通したことは評価できる。本馬はその後、調子を落としていたが、前走のBCクラシックは信じられないほどの前半のスピードで5F通過56秒台前半。日本の計測法なら55秒台前半で通過したことになる。前走は覚悟を持って行き切った感があり、今回でハナを主張する可能性はある。今回の台風の目は▲(3)ラムジェットと本馬だ。
△ (7)グランブリッジ
今年は川崎記念、帝王賞と牝馬ながら王道路線を歩んできた馬。本馬は強豪オーサムリザルトが相手の4走前、エンプレス杯でも2着。同レースでは4番枠から五分のスタートを切り、好位馬群の中目5番手を追走。2周目の3角手前から進出しながら4角で外に誘導し、大外から直線へ。そこからしぶとく伸び続け、早めに抜け出したオーサムリザルトに迫ったが、クビ差で惜敗した。
本馬は4走前の川崎記念でもアタマ差の2着があるように、長距離がベストの馬。それでも前と内が有利の2走前のレディースプレリュードで、出遅れを挽回して中団から差し切って優勝するなど、1800mでも上位クラスの実力がある。
前走のJBCクラシックでは2着に敗れたが、アンモシエラの単騎で前後半3F38秒6-37秒7のスローペースで上手く逃げ切られたもの。それでも4馬身差は負け過ぎであるが、2走前に好走した疲れもあったのだろう。ここはさらに相手が強くなるが、この距離なら掲示板は狙えそうだ。
△ (9)クラウンプライド
一昨年のチャンピオンズCの2着馬。同レースでは10番枠から五分のスタート。そこからコントロールして外のレッドソルダードを行かせて、その外2番手を追走。道中もペースが上がらない中で、コントロールしながら2番手を維持。
3~4角で楽にレッドソルダードに並びかけると、4角出口で先頭に立った。直線序盤ですっと伸びてリードは1馬身ほど。ラスト1Fで迫るテーオーケインズを振り切ったが、最後に外から捌いて上がったジュンライトボルトに突っ込まれ、クビ差で惜敗した。
本馬はその後、韓国のGⅢ・コリアCを昨年、今年ともに勝利。昨年はかなりペースが遅く、我慢できずに2番手から向上面で早々と先頭に立って、2着グロリアムンディに大差勝ち。今年は注(2)ウィルソンテソーロに5馬身差をつけて勝利した。今年は大外11番枠から楽に先頭に立って、平均ペースに持ち込み、注(2)ウィルソンテソーロに5馬身差をつけての完勝だった。
韓国は砂厚が公表では8㎝の(現地で乗っている者はそれよりも浅いという)快速ダートではあるが、それでも圧勝するのは能力があればこそ。もともと日本でも実績があり、本調子ならばここでも通用するが、前走のチャンピオンズCでは1番枠で逃げられず、揉まれて11着大敗。
追い切りを見る限り、まだ良化途上を感じさせるが、揉まれ弱い本馬が1,2番手に行って揉まれない競馬をした場合の巻き返しの可能性は残されている。