■展開の振れ幅が広いコース
毎日王冠の舞台となる東京芝1800mは、2角を斜めに横切るように向正面に入るコース形態だが、3角までの距離が約750mと長いため、展開の振れ幅が広い。
2020年のように逃げ馬が大逃げを打てば、稍重で4F通過46秒2とハイペースになることもあり、2013年のように確たる逃げ馬不在のメンバー構成であれば、良馬場で4F通過48秒2とかなりのスローペースになることもある。
全体的な傾向を見ると、稍重時にハイペースが発生している。今年は土曜日も断続的な雨の中で競馬が行われ、レース当日も稍重が予想される。おそらくそれなりに流れて、差し馬有利になる可能性が高い。
しかし、穴馬は先行馬だろう。今回は少々ペースを引き上げていっても容易にバテない強い先行馬が揃っている。
東京11R 毎日王冠 芝1800m
◎ (9)ローシャムパーク
○ (6)シルトホルン
▲ (10)マテンロウスカイ
△ (7)ダノンエアズロック
△ (11)シックスペンス
△ (14)エルトンバローズ
結論 馬連9-6,10,7,11,14 (各10) 複勝9 (50)
■有力馬と評価ポイント
◎ (9)ローシャムパーク
デビュー4戦目の山藤賞で7馬身差の圧勝。この時点で古馬3勝クラス級の指数を記録した素質馬だ。当時の指数は翌日の皐月賞(勝ち馬ジオグリフ)出走なら3着入線レベルで、この山藤賞の2~4着馬は現OP馬である。本馬も昨年はむらさき賞(3勝クラス)、函館記念、オールカマーを3連勝した。
4走前のオールカマーでは13番枠からやや出遅れたが、軽く促されて中団外目を追走。タイトルホルダーが淡々と逃げて向正面で隊列が縦長になっていく展開を外から強気に押し上げ、3角では好位の外に取り付く。
3~4角では中目を通し、4角出口で外に誘導すると直線序盤では一気に2列目に並びかけ、ラスト1Fでタイトルホルダーを捉えて1馬身1/4差で完勝した。
今年は大阪杯で2着。同レースでは2番枠からまずまずのスタートを切ったが、二の脚が遅く後方に下がってしまう。そこから外に出して向正面半ばで2列目まで上がったが、内のベラジオオペラが抵抗。3~4角でペースが上がっていくなかで2頭分外を回る形となり、4角出口ではやや置かれてしまった。もう一度盛り返し、ラスト1Fでベラジオオペラに食らいついたが、クビ差及ばなかった。
本馬はゲートも速くないが、それよりも二の脚が遅い点がネック。ゆえにしばしばマクる戦法を取っているが、前走の宝塚記念は3角までにマクり切れず、ペースが上がった3角でかなり外を回り、そのまま4角でも大外をぶん回して5着に敗れた。自己最高指数を記録したオールカマーとの大きな違いは、3角までにマクり切ったか否か、である。
しかし、最後の直線が長い東京芝1800mならば、6走前のむらさき賞と同様に無理にマクる必要がない。普通に差す競馬で巻き返せるはずだ。ある程度、時計が掛かる馬場が理想的ではあったが、ペースが遅ければじわっと動いていくことも可能な馬だけに今回の本命候補だ。
○ (6)シルトホルン
デビュー3戦目の未勝利戦では、2番手追走から6馬身差圧勝。その後のひいらぎ賞でも逃げて2着に善戦するなど、前に行ってしぶとさを活かしてこその馬だ。
昨夏のラジオNIKKEI賞でも逃げたグラニットにプレッシャーをかけていく競馬で2着に善戦、重馬場で行われた昨秋のオクトーバーS(L)でも逃げたヤマニンサルバムに2番手から食らいついて2着に善戦している。
3走前のメイS(OP)は3着。同レースでは9番枠から好スタートを決めて先手を主張し、楽にハナを取り切った。道中はスローペースを刻んで3角へ。3~4角でじわっとペースを引き上げ、3/4差で直線に向く。
直線序盤でもその差を維持し、ラスト2Fで追われるとややリードを広げて1馬身差。ラスト1Fでやや甘くなったところで、外からプレサージュリフトに差されてアタマ+クビ差の3着となった
続くエプソムCでも2着。ここも10番枠から好スタートを決めて先頭に立ったが、外からセルバーグが競ってくると、同馬を行かせて2番手を追走。3~4角では馬場の悪化した内を避け、外目からじわっと差を詰めていく。
直線序盤でセルバーグに並びかけ、ラスト2Fでは抜け出して先頭に立ったが、外からレーベンスティールに迫られる。ラスト1Fで甘くなったが、3着争いをアタマ差で死守した。
緩みなく流れて差し馬が台頭する展開になった中、本馬は先行馬で唯一、掲示板入りを果たした。前走の関越Sは前々走からの疲れもあって13着と崩れたが、何度も奮闘しているこのコースで巻き返しを期待したい。
▲ (10)マテンロウスカイ
今年2月の中山記念を優勝した馬。その前々走では8番枠からまずまずのスタートを切り、先行争いに加わっていったが、最終的には前の2頭を行かせて2列目の最内を確保という完璧な入り。道中もかなりのハイペースで展開した中、コントロールしながら前のスペースを維持して3角へ向かう。
3~4角では先頭のドーブネとの差をじわっと詰めて4角で外に誘導、同馬と3/4差で直線へ。序盤で早々に並びかけると、ラスト1Fで抜け出して2馬身差で完勝した。
本馬はマイル戦だと前半の位置取りが難しくなることが多く、楽に先行できる芝1800mがベスト。実際に昨年5月のメイS(OP)では、二の脚で内外の各馬を楽に制して緩みないペースで逃げ、後の東京新聞杯の覇者サクラトゥジュールにクビ差の2着と善戦している。
前走のドバイターフは逃げ馬にそこまで厳しいペースではなかったが、15着に大敗。これはその前の中山記念で自己最高指数を記録と、好走した疲れによるものが大きい。今回はそこから立て直しての一戦。1800mでこのメンバーなら楽に先行できるだけに、期待が高まる。
△ (7)ダノンエアズロック
デビュー2戦目のアイビーSの2着馬。ここでは1番枠から好スタートを決め、外のホウオウプロサンゲを行かせて2番手でコントロール。高速馬場でかなりのスローペースだったが上手く折り合ってレースを進めていた。
3~4角でも仕掛けを待ってホウオウプロサンゲと2馬身半差ほどで直線へ。序盤ではまだ2馬身差ほど差があったが、ラスト1Fでじわじわ伸びて1馬身くらいまで差を詰める。ラスト1Fでホウオウプロサンゲが甘くなったところをしぶとく捉えて3/4差で勝利した。
ここでは後のホープフルSの覇者レガレイラを完封しており、指数は優秀。上がり3Fタイム32秒7も素晴らしかった。本馬はトップスピードに秀でたタイプで、最後の直線距離が長いコースはベスト。
前々走のプリンシパルSでも大外13番枠から好スタートを決め、こからはコントロールしながら好位の外を追走。ペースが遅くなかなか内に入れられず、道中も好位の外目で我慢。3~4角でも好位の外目で仕掛けを待って出口で外に誘導。序盤で追われてじわじわ伸び初めてラスト2Fで2列目まで上がり、先頭のアスクカムオンモアとは1馬身ほど。ラスト1Fで同馬捉えて抜け出し、1馬身1/4差完勝した。
前走の日本ダービーはプリンシパルSで好走した疲れが出た面もあった。しかし、前後半5F62秒2-56秒8と極端に遅いペースの中団の最内を立ち回り、最後の直線で一瞬鋭い伸びを見せながらも、ラスト2F以降で伸びを欠いた辺りに距離の壁を感じさせた。今回で距離が短くなる点は◎。馬場が悪化しなかったのも好ましく、警戒が必要だ。
△ (11)シックスペンス
前々走のスプリングSで3連勝を達成した馬。前々走は4番枠から好スタートを決めて、外の2頭を行かせて2列目の最内を確保した。道中のペースはかなり遅かったが、折り合って前のスペースを維持して3角へ。3~4角では2番手のコスモブッドレアをマークしながら仕掛けを待って、4角出口で外に誘導して直線。序盤ですっと反応して、先頭に立つと、ラスト1Fで鋭く突き抜けて3馬身差で圧勝した。
前々走は逃げた9番人気馬アレグロブリランテが2着だったように、前後半4F50秒2-46秒3と極端にペースが遅く、前有利な流れ。シックスペンスも上手く乗られていた。
しかし、休養明けの前走で好走した反動が出たようで、皐月賞はスキップ。日本ダービーへ直行したが9着に敗退した。日本ダービーはエコロヴァルツのレースメイクで前後半5F62秒2-56秒8でここも極端なスローペース。先行馬有利の展開を好位の中目と上手く乗られていたが、最後の直線で伸びてこれなかった。
日本ダービーでは消耗度の少ないスプリングSで好走した程度で、強い疲れが出てしまう体質の弱さに疑問を感じていたが、夏場を休養させたことでここへの体質強化が見込める。ここでまたC.ルメール騎手に乗り替わったのは、そういうことだろう。
また、本馬はデビューからスローペースを先行する経験しかなく、本質が後半型の馬だったとするならば、ここでペースが上がって差す形で一変する可能性もある。
△ (14)エルトンバローズ
休養明けで挑んだ昨年の毎日王冠では、ゴール前の大接戦を制して4連勝。古馬との初対戦でソングラインやシュネルマイスターといった強豪を撃破した。
そのレースでは6番枠から五分のスタートを切り、好位の最内を追走。道中は前のエエヤンが外に行ったのを見て、スペースを作って3列目を確保する。
3~4角で最内から徐々に2列目まで上がり、4角では先頭ウインカーネリアンの直後へ。直線序盤は進路がなかったが、ラスト2Fで同馬の外から窮屈な間を割って伸びて先頭列。ラスト1Fで抜け出したところを外から3頭に強襲されたが、ハナ差で勝利を収めた。
このレースは最後の直線でワンテンポ仕掛けを待たされる場面があったが、最短距離を通すことができ、完璧に近い騎乗だった。とはいえ、倒した相手を考えればその価値は高い。
続くマイルCSでは休養明け好走の反動が懸念されたが、先行争いが激化して差し追込馬に向いた展開の中、上位のナミュールやソウルラッシュよりも前で進めて0.2秒差の4着と善戦している。
4歳になってからは不振に苦しみ、中山記念7着、香港のチャンピオンズマイルは8着、前々走の安田記念でも8着に敗れたが、前走の中京記念では3着と復調の気配を見せた。
その前走はテーオーシリウスとセルバーグの逃げ争いが激化したため極端なハイペースとなったが、それを見ながら離れた中団を追走。3~4角で前とのスペースを詰めて4角で仕掛け、直線早め先頭に立ったことで甘くなっての3着だった。
前走は本馬をマークしたアルナシームが優勝したことからもわかるように悪い内容ではない。また、今年の中京記念は小倉芝1800mの開催で、本馬は1600mよりも1800mでこそ、ということを改めて感じさせた。昨年優勝したこの舞台でさらなる前進を期待したい。
推定3番人気 (2)ホウオウビスケッツ
今夏の巴賞と函館記念を連勝。前走の函館記念では12番枠から五分のスタートだったが、二の脚が速く、楽に逃げ馬アウスヴァールの外2番手へ取り付いた。
1~2角では手綱を抑えてコントロールし、道中はアウスヴァールと2馬身半ほど離れた2番手を追走。3角では同馬と3馬身差だったが、3~4角で徐々に差を詰めながら外に誘導、4角で一気に先頭に並びかける。直線序盤で抜け出すと、ラスト1Fで突き抜けて3馬身半差で圧勝した。
前走は逃げて勝利した巴賞から1Fの距離延長。前半のペースも速くなったが、ここでは逃げずに離れた2番手に控えたことも功を奏し、自己最高の指数を記録した。
大きな差をつけた3着アウスヴァールと4着サヴォーナが後にオールカマーで2着、4着と善戦したように、レベルの高い一戦だったのは確かだ。
今回は時計の掛かる馬場から東京開幕週の高速馬場に変わることで決め手不足が懸念されるため、そこまで人気にはならないようだ。先行してしぶとさを生かせば高速馬場そのものはこなせるだろうが、それよりも前走の疲れが心配で、ここは評価を下げたい。
推定4番人気 (12)ヨーホーレイク
2021年の皐月賞5着、日本ダービー7着馬。そこから7カ月の休養明けとなった4走前の日経新春杯では、同世代の皐月賞3着、ダービー3着馬ステラヴェローチェを破り、嬉しい重賞初制覇を達成した。
4走前は10番枠から出遅れて後方、そこから中団馬群の中目まで挽回していった。道中は我慢して動かず、3~4角では前のステラヴェローチェを追いかけて徐々に進出していく。
直線序盤で外に誘導して追い出されると一気にステラヴェローチェに並びかけ、ラスト1Fではマッチレースに。最後までしぶとく伸び続けて3/4差で勝利した。
4走前は平均ペースで3着馬に3馬身3/4差をつけ、今回のメンバーではNo.2の指数を記録。その後、屈腱炎を発症して2年2カ月の長期休養を余儀なくされたが、前走の鳴尾記念で見事な復活を果たした。
しかし、本馬は芝2200m以上がベスト条件で、本来はここよりも同日に京都芝2400mで行われる京都大賞典のほうが向く馬だ。実際、2000mの前走では2200mの4走前ほどの指数で走ることができていない。その背景には、長期休養明け後に前進気勢が強まり、先行していることが影響しているとみる。
今回は1800m戦になるため中団からのレースになると見ているが、この距離だと本馬よりもキレる脚を使える馬が多く、よほど前がペースを引き上げてくれない限り善戦止まりで終わる可能性が高い。逆にこの距離でポジションを取りに行けば、崩れる可能性もある。