■スローペース率がとても高い
中山芝2200mはスタートから高低差5.3mの最高地点を目指して坂を上り、中盤で坂を下るコース。中盤は向正面の下り坂にあたり、この下り坂を逃げ馬がゆっくりと下ったならばスローペース。逆にペースアップした場合やマクリ馬が出現した場合にはハイペースとなる。
しかし、セントライト記念は高速馬場で行われることが大半で、過去10年でハイペースになったことはない。唯一、重馬場で行われた2019年も平均ペースだった。それ以外はスローペースで決着しており、勝ち馬は逃げ~中団で7勝を占める。
2021年にアサマノイタズラが追込を決めているが、これは3~4角のペースアップで馬群が凝縮し、直線で詰まる馬が多発したもの。差しが決まっている年は、2016年に捲り勝ちしたディーマジェスティのように、3~4角で早めに動いて行くパターンが目立っている。
今回は(2)タガノデュードが逃げるか、日本ダービーで超絶スローぺースに誘った(6)エコロヴァルツが逃げるかの組み合わせ。さて、先行馬が押し切るか、それでも3~4角の外から動いた馬が勝ち負けするか?
本日1番 中山11R セントライト記念 芝2200m
◎ (1)アーバンジャック
〇 (8)コスモキュランダ
▲ (6)エコロヴァルツ
△ (2)タガノデュード
△ (9)アスクカムオンモア
△ (10)ヤマニンアドホック
△ (12)スティンガーグラス
結論 馬連1-8,6,2,9,10,12 (20:10:5:5:5:5) 複勝1 (50)
■有力馬と評価ポイント
◎ (1)アーバンジャック
デビュー3戦目の京成杯で2着、6番枠からやや出遅れて後方の外を追走し、向正面でじわっと上がって中団の外で1番人気のジュンゴールドをマークして進めた。しかし、4角で同馬の手応えが悪く、同馬の外に誘導しようにも外の馬が蓋になって出せず、仕掛けが遅れてしまっての2着敗退だった。
アーバンシックはエンジンが掛かってからが強いタイプ。京成杯では最後に一気に勝ち馬ダノンデサイル(後のダービー馬)に迫っており、末脚は抜群。3角外から動いたダノンデサイルをマークして乗っていれば、逆転もあったと考えられる。
前記のことから前々走の皐月賞では狙ったが、4着敗退。同レースでは9番枠からはっきりと出遅れ、後方からの追走。メイショウハダルの大逃げで、後方で脚をタメようとする馬が多数で、道中は後方馬群の中目で包まれて動けなかったが、3角手前で前にスペースを作る。3~4角で外からコスモキュランダが仕掛けて、ここで同馬を目標にしながら外から押し上げて直線へ。直線序盤でコスモキュランダの外に誘導し、そこから伸び始める。ラスト1Fでもしぶとく差してきたが4着までだった。
ここでは出遅れて後ろ過ぎる位置になってしまったことや3~4角で外を選択してロスを作るなど、細かいミスはあったが、前崩れの展開になったことで4着に健闘することができた。
しかじ、皐月賞で後方からレースをしたことが致命的で、皐月賞で逃げたメイショウハダ、先行したジャンタルマンタル、アレグロブリランテらが不在となると、かなりのスローペースになると見て、ここでは本馬を無印にした。そして案の定、後方からの追走となり、さらに3~4角で内を選択した馬が上位を占める中で、外を選択したことが11着大敗へと繋がった。
今回はそこから立て直された後の一戦で、ここが目標(ここで3着以内に入らないと、菊花賞への出走が難しい)。今回はC.ルメール騎手への手替わりとなる。C.ルメール騎手と言えば、日本で一番スタートが上手い騎手。また捲るのも得意である。今回は1番枠で下げて後方に誘導する形になるが、陣営の本気と同騎手の手腕に期待したい。
〇 (8)コスモキュランダ
1勝馬ながら弥生賞を捲って優勝し、春のクラシックでも健闘した馬。弥生賞では逃げ、先行型がやや手薄で、本馬がが捲る可能性も視野に入れていたが、想定以上にペースが上がって、楽に捲れるほど遅いペースではなかった。しかし、それでも捲り切った辺りに確かな強さを感じさせた。
前々走の皐月賞では2着。前々走は12番枠からやや出遅れ。そこからコントロールしながら中団と、いつもよりも前の位置を追走した。1角で内に入れ、道中は中団の内目で我慢。3~4角ではシンエンペラーをマークして、かなり押しながら鞭も入れて中目に誘導、4角出口で外に出して直線へ。序盤は4列目。そこからじわじわ伸びて2列目付近まで上がり、ラスト1Fで内から先に動いたジャスティンミラノと一緒に伸びる。早めに抜け出したジャンタルマンタルは捉えたが、勝ち馬にはクビ差届かなかった。
前走はメイショウタバルの大逃げで、前後半5F57秒5-59秒6とかなりのハイペース、3~4角のペースダウンで各馬が前を捉えに動いていく中、本馬はほぼ動かなかったことで展開にも騎乗にも恵まれての2着だった。
よって、スイートピーSで展開と騎乗に恵まれて好走し、オークスで展開に恵まれながらも末脚不発でドボンしたコガネノソラのように、本番の日本ダービーでは強い疲れが出る可能性が高いと見ていた。しかし、ペースが上がらない状況下で、出遅れて後方2番手からの追走になりながらも、3~4角の外々から押し上げて6着と意外とがんばった。この辺りに地力強化が窺える。この馬もそこから立て直されての一戦となるだけに有力だ。
▲ (6)エコロヴァルツ
昨年暮れの朝日杯FSの2着。同レースでは1番枠からやや出遅れ、そこから好位を取りにいったが、内が窮屈で後方に下がってしまった。そこで最後方付近まで下げ切り、徐々に外に誘導。4角で団子状態の中目から外に誘導して最後方で直線へ。直線序盤で大外に出して仕掛けると、ラスト1Fで一気に伸びて先頭のジャンタルマンタルに1馬身1/4差まで迫った。
朝日杯FSはかなりのハイペースで展開上は恵まれている。しかし、前半で位置を取りにいって掛かりながら下げるというチグハグな内容での2着は能力が高ければこそ。
3走前の共同通信杯は9番人気のパワーホールが3着に粘る超絶スローペースの2番手で進めて、かなり折り合いを欠く競馬になり5着に失速。折り合いを欠くことを嫌った前々走皐月賞は、3番枠から五分のスタートを切りながらも、そこからコントロールして後方に下げ切っての競馬。後方に下げ切ったことで展開に恵まれ、7着と悪くない成績を収めているが、正直、最悪だった。
エコロヴァルツはデビュー2戦目のコスモス賞で2番手から逃げ馬にプレッシャーをかけていく形だったが、折り合いに苦労して2角過ぎで先頭。3~4角で外から上がってきたコスモディナーにやられてしまうかと見ていたが、直線ではなんとそこから突き放し、6馬身差で圧勝。このことから、先行してこその馬だと言える。
そういう意味では前走の日本ダービーで、岩田康誠騎手への手替わりとなり、逃げたことは悪くない。大外18番枠ゆえに、1角のロスと引き換えに逃げる選択をしたこと自体は悪くないが、超絶スローペースに持ち込んだことで、サンライズアースやコスモキュランダに早めに上がって来られ、逆に苦しくなってしまった。
このように岩田康誠騎手は本当に、レースメイクが苦手である。上手く逃げてくれるぶんには逃げてもいいが、同騎手お得意の2列目の最内をとって内々の競馬をやられたら、上位争いがより濃厚だろう。