■小倉大賞典同様、かなりのハイペースも考えられる一戦
京都競馬場の改修工事による変則日程となった2021、22年以来、2年ぶりに小倉芝1800mで行われる中京記念。小倉芝1800mは発走地点から1角までが約272mと短く、2角までは上りが続くため平均よりも遅いペースで決着することが多い。21年は平均ペースで好位の最内を追走したアンドラステが優勝、22年はかなりのスローペースをベレヌスが逃げ切った。
しかし今年は、逃げが濃厚の(3)セルバーグに対し、逃げなければ持ち味が生かせない(1)テーオーシリウスが抵抗する可能性が高い。その他にも(11)アナゴサンなど、行く気になればハナを主張できる馬も多数。
また、今夏の小倉芝は開幕週から例年よりも時計が掛かっている。セルバーグが主導権を握った今年の小倉大賞典のような、かなりのハイペースが想定されることも併せると、差し馬有利になるのではないか。これを前提にしたうえで予想を組み立てたい。
本日3番 小倉11R 中京記念 芝2000m
◎ (13)ニホンピロキーフ
○ (12)セオ
▲ (6)エピファニー
注 (9)ボーデン
△ (2)アルナシーム
△ (8)タガノパッション
△ (4)ワールドリバイバル
△ (5)カテドラル
結論 馬連13-12,6,9,2,8,4,5 (15:11:10:5:5:2:2) 複勝13 (50)
■有力馬と評価ポイント
◎ (13)ニホンピロキーフ
小倉芝の中距離で3戦3勝の実績がある小倉巧者。3走前の関門橋Sでは4番枠から好スタートを決め、コントロールしながら好位の中目を確保。その後、前にスペースを作って中団の中目で我慢させて3角へ。3~4角では好位列の中目を通って押し上げ、4角で先頭列2頭の外に誘導。そこで少し置かれて2列目の外になったが、しぶとく伸びて先頭に。ラスト1Fでもしぶとく伸びて2馬身半差で完勝した。
このレースは小倉開催16日目かつ稍重発表のタフな馬場だったが、前後半5F61秒8-59秒9とかなりのスローペースで12番人気のマテンロウアレスが逃げて2着に粘る展開。後半勝負となったなか、上手く3~4角で位置を押し上げたのもあるが、2馬身半差をつけた内容はとても優秀だった。
次走のマイラーズCでは、まずまずのスタートから好位馬群の中目につける競馬で道中を進め、直線では序盤で外のソウルラッシュに食らいついた。ラスト1Fで内から捌いてきたセリフォスに差されたが、それでも同馬からは半馬身差の3着と好走した。
勝ち馬ソウルラッシュには2馬身1/4差と離されてしまったが、自己最高指数を記録。予想外の好走だったが、稍重でややペースが上がったことも良かったのだろう。時計の掛かる馬場で緩みなく流れる展開を、3~4角から仕掛けて差す競馬がベストだ。
前走の鳴尾記念は12着に大敗してしまったが、前々走で好走した疲れもあっただろうし、超高速馬場の緩みない流れで、速い時計への対応力が要求されたレースだった。そんななか、13番枠から位置を取りに行くも上手くいかず、1角では3頭分外を回り、その後も前に壁がないほど外を回り続け、大敗しても仕方のない内容だった。ある程度時計の掛かる馬場、(3)セルバーグが刻むペース、外差し有利馬場のアドバンテージなど重なれば上位争いに加われるはず。本命に推したい。
○ (12)セオ
3歳春の中山1勝クラスでは後に重賞で2勝するレーベンスティールを下し、3着以下には7馬身以上の差を付けて勝利。ここではかなりの好指数を記録したが、当時は不良馬場で、かなり適性の偏った馬と見ていた。
ところが休養明けとなった昨秋の2勝クラスでは、高速馬場の芝マイル戦を逃げ切り、幅広い適性を持つ馬であることを証明した。その後は芝マイル戦を中心に使われ、前々走では立雲峡S(3勝クラス)を勝利、前走では芝1800mの都大路も勝利した。
都大路Sは6番枠からまずまずのスタートを決めてハナを主張したが、内からアウスヴァールが絡んでくると、行かせて2番手の外で折り合った。道中はかなりのスローペースだったが、コントロールしながら2番手の外を維持。3~4角では楽な手応えで加速し、4角では持ったままアウスヴァールにプレッシャーをかけてコーナー出口で先頭に。直線序盤で追われるとすっと伸びて2馬身半差、ラスト1Fで迫る(2)アルナシームを振り切って1馬身1/4差で勝利した。
このレースは超高速馬場かつかなりのスローペースだったが、3着馬には3馬身1/4差と後続にしっかり差を付けており、とても強い内容だった。ここでは自己最高指数を記録。今回は余力の面で不安はあるが、時計の掛かる馬場でも実績がある点は加点材料。対抗評価だ。
▲ (6)エピファニー
デビュー3戦目の芝1800mの未勝利戦を勝利すると、そこから連勝街道に入り、芝1800mを4連勝で3勝クラスを突破した。ところが昇級戦のAJCCでは、11番枠からやや出遅れて内と外から二度の接触を受けてエキサイト。3~4角では2列目の中目に入れ、4角で窮屈になって下げるロスや不利も重なり11着大敗。その次走、芝1600mの東風Sも距離がやや短く4着と連敗してしまった。
以降は芝中距離を中心に使われるようになって立ち直り、芝2000mのケフェウスSを勝利。そして前々走の小倉大賞典では、今回出走の(14)ロングラン、(3)セルバーグ、(2)アルナシーム、(5)カテドラルらを撃破し、初重賞制覇を達成した。
小倉大賞典は12番枠から五分のスタートを決めたが、二の脚はひと息で中団からの追走。淡々と緩みなく流れるなかで、道中は中団の中目、3~4角では内目を通りながら4角出口で外へ。直線序盤で5番手から徐々に前との差を詰め、ラスト1Fで前がバテたところをしっかり差し切って1馬身差で勝利した。
前後半4F46秒0-47秒9とかなりのハイペースで、展開に恵まれての勝利。前走の大阪杯では前有利の展開を出遅れて後手を踏み、能力を出し切れなかったが、今回は前々走と同じ小倉芝1800mが舞台。同様のハイペースになれば、当然チャンスはある。
注 (9)ボーデン
デビュー2戦目の東京芝1800mの未勝利戦では、中団外目で折り合って進め、3~4角の外から馬なりでじわっと進出して6馬身差で圧勝した馬。ここではキャリア2戦目としては破格の指数を記録し、その次走のスプリングSでは1番人気に支持された。
そのスプリングSでは極悪馬場で3着。レースでは(4)ワールドリバイバルが逃げたが、向上面でアールバロンに競りかけられて一気にペースアップ。逃げ、先行馬には厳しいタフな展開だったが、好位の外目からしぶとく粘ってアタマ+1馬身3/4差の3着を死守した。
しかし、何度も伝えているが、タフな馬場での好走は消耗度が高く、競走馬の不振を生み出すもの、スプリングSの優勝馬ヴィクティファルスや2着のアサマノイタズラなどはそのあと不振となり、ボーデンはフレグモーネを発症。戦列復帰しても人気を裏切ることが多かったが、前走の錦Sでは12番人気で1着という、まさかの番狂わせを起こした。
前走は6番枠からやや出遅れ、そこから最後方に下げ切った。このレースは激流だったが、最後方から内を選択。3~4角で前のカラ馬が動いてくれたので、その内のスペースを拾って中団まで上がって直線へ。序盤で内目のスペースを潰して3列目まで上がり、ラスト1Fでそのまま最内に切り、最後は接戦を制してクビ差で勝利した。
前走は展開も進路取りもかなり嵌っての好走ではあったが、去勢効果も良かったのか(?)、完全復活を見せつけた一戦だった。今回は休養明け好走後の一戦でダメージが出る危険性はある。しかし、ボーデンの能力の天井次第では突破できる条件である。3歳春の活躍ぶりから、そういう馬であっても不思議ないので、ここは警戒した。
△ (2)アルナシーム
デビュー2戦目の東京スポーツ杯2歳Sでは掛かって制御不能となる、衝撃的な大暴走をした馬で、その気性から芝1600mを使われることもあった。ただ、マイルではややスピード不足。これまでの5勝中4勝を芝1800mで挙げており、前々走の都大路S(芝1800m)では自己最高指数を記録している。
都大路Sは4番枠からやや出遅れたが、押して最内から中団まで挽回し、道中は1番人気のダノンティンパニーを見ながら進めた。3~4角でもそのまま我慢し、4角で同馬が外へ行くのを待って最内を狙った。ただ、前のダノンティンパニーの手応えが悪く(この後に競走中止)仕掛けが遅れ、その間に早々と先頭に立ったセオに差を広げられた。直線序盤では2馬身差の2番手。ラスト1Fで差を詰めたが1馬身1/4差までだった。
このレースは前後半4F47秒6-45秒0とかなりのスローペース。後半勝負となったが、ラスト1Fではしっかり差を詰めている。前有利の展開で出遅れたことが致命的ではあったが、折り合いがつくようになってからは後半型の競馬にも対応できている。
15番枠だった前走のエプソムCでは(3)セルバーグの逃げでレースが流れたなか、中団の外から3番手まで押し上げたため、最後の直線では伸び切れずに5着に敗れた。それでも3着からはアタマ+アタマ差で悪い内容ではなかった。ただし、今回は2番枠。フラットな馬場状態ならば枠の優位性が活かせるが、外差し馬場ということもあり評価を下げた。
△ (8)タガノパッション
4走前の小倉芝2000m戦、愛知杯では2着馬。4走前は3番枠からやや出遅れ、そこから押して行ったがペースが速くてあまり進まず、下がって後方からの追走。1~2角で最内を通しロスなく進めて脚を温存して、向正面でペースが落ちると、徐々に中団まで取り付いていった。3~4角で苦しくなり下がってくる馬をかわして、4角で中目に誘導し、コスタボニータの後ろから直線へ。序盤の伸びはやや地味だが、食らいついて4番手に上がる。ラスト1Fでしぶとく伸びて早めに抜け出したミッキーゴージャスに半馬身差まで迫った。
前記の愛知杯は逃げ馬がぶっ飛ばして、前後半5F57秒4-60秒5とかなりのハイペース。タガノパッションは開幕日の内枠で位置を取りに行かずに、1~4角の全てで内目を立ち回れていた。また前半で脚を温存したことで展開に恵まれ、また3角までにコスタボニータの後ろまで持っていったことでその後の進路取りもスムーズだった。
3走前の中山牝馬Sはコンクシェルが逃げ切る前有利の展開を1番枠から中団内目を追走していたが、向正面で内の馬が下がってきた影響で後方に下がり、4角でも仕掛けを待たされて能力を出し切れず6着敗退。
前々走の福島牝馬Sは11番枠から出遅れて、ここも後方からの追走となったが、向正面でペースが落ち着いたところで、外から動いて行ったが、捲り失敗で3、4角と大外を回らされる形になった。
前走のマーメイドSは超高速馬場の緩みない流れをやや出遅れて、道中で中団外から押し上げていく競馬で苦しくなって15着に失速した。好位が取れるスピードがない馬だけに、スローペースや超高速馬場では苦戦の傾向だが、今回は時計の掛かる馬場。愛知杯同様に逃げ馬が飛ばしてくれればチャンスがある。
推定3番人気 (7)エルトンバローズ
昨夏のラジオNIKKEI賞を勝利、休養明けで挑んだ毎日王冠では大接戦を制して4連勝した馬。毎日王冠は6番枠から五分のスタートを決めて、好位の最内を追走。道中は前のエエヤンが外に行ったので、スペースを作って3列目。3~4角で最内から徐々に2列目まで上がり、直線序盤では先頭のウインカーネリアンの直後まで上がるも進路がなくなってしまった。しかし、その外から窮屈な間を割って伸びると、ラスト2Fで先頭列に。ラスト1Fで外から強襲されたがハナ差で制した。
このレースは開幕週の馬場を最短距離で立ち回っての優勝だったが、当時倒した相手は2022、23年安田記念で上位のソングライン、シュネルマイスターで、その価値は高い。続くマイルCSでは毎日王冠で激走した疲れが懸念されたが、先行争い激化で差し追込馬が有利だった流れのなか、上位のナミュールやソウルラッシュよりも前で進めて0.2秒差の4着に善戦した。ここで大崩れしなかったことは、地力強化がうかがえた。
しかし、4歳になってからは不振で、3走前の中山記念で7着、前走の安田記念でも8着と、いずれも出遅れて敗れている。トップスピードがそれほど速くなく、未勝利勝ち以降はメンバー最速の上がり3Fを記録したことがない。先行してこそのタイプだけに出遅れは致命的だ。前走から1F長くなるのは好ましいが、この中間の追い切りを見ても良かったころの迫力がないように感じる。ここは評価を下げたい。
小倉大賞典の2着馬 (14)ロングラン
3走前のディセンバーS勝ちや前々走の小倉大賞典2着など、芝1800mでは【3-1-0-3】の実績を持つ。一方、芝2000mでは【0-0-0-5】と極端。芝2000mでは、前走の福島民報杯のようにペースが上がらないことが多かったが、同様のペースだったディセンバーSは出遅れて後方2番手追走になりながらも、4角大外から直線一気で勝利したことからベストは芝1800m。この距離なら様々な展開に対応できそうだ。
さらにいえば、小倉大賞典のような緩みない流れの芝1800m戦が理想だろう。同レースは11番枠からやや出遅れたが、無理をさせずに中団やや後方で進めながら内目に入れ、道中は後方内目を追走。3~4角では中団中目のスペースを拾って4角で外に誘導しながら仕掛けて直線へ。直線序盤で中団列まで上がると、ラスト1Fでグンと伸びて最後は2着争いを半馬身差で制した。
展開に恵まれていながら(6)エピファニーには完敗だったが、その前走で自己最高指数を記録したことによる疲れもあったのだろう。今回も小倉大賞典同様、(3)セルバーグのレースメイクが予想され、再び恵まれる可能性が高い。しかし、休養明けの馬はスタミナに不安があるので、スタミナ比べのレースになると最後に甘さを見せる場合が多い。その点で小倉大賞典の上位の差し馬たちと比較した場合に見劣る。