ひと昔前の菊花賞(京都外回り・芝3000m)は、杉本アナウンサーの実況でおなじみのように、2周目の京都の坂は「ゆっくり上って、ゆっくり下れ、直線向いて勝負がセオリー」と言われていました。かつての京都は馬場がタフで、向こう正面の上り坂はもちろん、3コーナーの下り坂で加速をすると、直線失速がお決まりのパターンだったからです。
しかし、高速馬場の近年においては、その乗り方は逃げ、先行馬の場合ならばオーケーでも、差し、追い込み馬ならばタブーです。極悪馬場で消耗戦となった一昨年こそ昭和の菊花賞でしたが、近年の菊花賞は、全体のラップ構成で見ると前半平均~スローペース。よって、逃げ、先行馬は後半でも十分余力があり、後方勢は2周目の坂を早めに上らなければ前との差は詰まりません。場合によっては、差を広げてしまうことにもなりかねないでしょう。
例えば、名馬オルフェーヴル。3冠目の2011年の菊花賞は、2周目の1コーナーまでは10番手。2コーナー過ぎの坂の上りでじわじわと加速して、3コーナーでは6番手。そして下り坂でスピードに乗せて4コーナーでは前2頭に並びかける勢いで3番手。そこから突き抜けて圧勝しました。
しかし、翌年の春の天皇賞(京都外回り・芝3200m)は、2周目の1コーナーまでは10番手、2周目の向こう正面でビートブラックとゴールデンハインドが後続を大きく引き離して逃げていたため、競り合いながらのハイペースと判断したのか、2周目の2コーナー過ぎの上り坂で動かなかったばっかりに、前との差を詰めきれずに11着に凡退しました。2周目の3コーナーまでたっぶり脚をタメたぶん、ありあまるほど体力があり、下り坂では加速がつきすぎて4コーナーでは大外に張られ、いったん前との差を広げてしまったほどです。
このことから、後方勢は2コーナー過ぎの上り坂である程度動かなければチャンスがないことをご理解いただけるでしょう。つまり、豊富なスタミナを生かして前に行って押し切るか、後方からロングスパートするかの2択であり、高速馬場だったとしても菊花賞はスタミナが問われているのです。本日は重馬場。馬場が悪化すると、馬場に脚元を取られて実走ペースよりも前が苦しくなるので、その前提で予想を組み立てたいです。
また、昨日は雨が降り続いたことで、内から3~4頭ぐらいが伸びていましたが、本日は雨が上がってフラット方向になる可能性が高いでしょう。一応、気をつけて見てみることをオススメします。